息子さんを俺にください。長身に合わせて作られたオーダーメイドのスーツに身を包み、長い前髪を後ろ手に流し端正な顔立ちを余す事無く晒した様はどこぞの貴公子だと、日向は何も言わずにただ眺めていた。
「日向さん。ネクタイ締めてよ」
最後にネクタイを締める所でネクタイを首に掛けたままの状態で日向の前に立つ若島津。
「お前自分で締めれるじゃねえか」
「日向さんに締めて貰いたいんだ」
若島津のお願いに、しょーがねぇなと言いながらも若島津のネクタイに手をかける。
「願掛け、みたいな」
「願掛ける必要がある事でもやるのか?」
「そりゃあ、一世一代のけじめをつけに行くんですから」
「今更な気がするんだがな」
そう言って気を張る若島津に対して呆れた様に笑う日向。
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