がたん、とひときわ大きな揺れを残し、馬車が止まる。
ふと目をやると、窓の外にはそれなりに栄えた街並みが広がっている。
目的地までの道のりはまだまだ遠いはずだ。おそらくは馬車の休憩地点に着いたのだろう。噴水公園と思しき広場には、他にも大小さまざまな馬車が列を成している。
ちょうどこちらも座りっぱなしで、尻と足が限界に近くなってきたところだ。少し外に出してもらおう。
立ち上がり、敷物代わりにしていたストールをはたいて巻き直していると。
頼むまでもなく扉が開き、御者が無遠慮に顔を覗かせた。
「バーソロミュー様、お降りください。我々がお送りできるのはここまででございます」
「なに?」
「辺境伯領への道行を知るのは、かの領地に通ずる者だけ。間もなくあちらの馬車がお迎えにあがるそうで、しばしお待ちいただかなければなりません。さあ、外へ」
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