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    はんちょー

    らくがきだったりいろいろ

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    はんちょー

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    初スモロ、コンビ色強めのこういうヤツが書きたいなという冒頭

    ##スモロ

    「おせェ」

     それが、顔を合わせての一言目であった。
     闖入者はばっさりと吐き捨てると、ソファに我が物顔で座ったまま、部屋の主の来訪をじろりと出迎えた。

     スモーカーは、見慣れた仕事部屋で見るはずのない男の顔に、危うく咥えた葉巻を落っことすところだった。

    「お前……! なぜここにいやがる!」
    「なぜ?」

     驚愕と怒りをあらわに入室した彼に対し、目深に被った帽子の影から覗く瞳は、それを越して遥かに不満げな色を映していた。

    「おれに収集をかけたのはお前らの方だろうが。海軍に呼ばれた人間が海軍本部に出向いてきて、何が悪い?」

     彼の言い分はもっともであったが、そこはスモーカーが憤っている部分では断じてなかった。

    「迎えの船を寄こしてあったはずだ! こんなに速く着くはずが……」
    「あァ、あいつらな。命令口調があんまり鼻につくもんで……船ごとバラしちまった。今ごろ近くの島で右往左往してるところだろうぜ」
    「なッ……」
    「なんで、ここへは自分の船で来た。ついでに親切にもお前の部屋で待っててやった。手間が省けてよかったろ?」
    「てめえ……好き勝手やりやがって……!!」

     敵はもちろん味方すらも震えあがるだろう鬼気迫る怒気もまるで堪えないのか、ふてぶてしい腕組みはまるで崩れる気配がない。
     どころか、形のいい唇はニヤリと弧を描いて、なおも減らぬ口を回してみせる。

    「つくづく下っ端の教育がなってねェな、海軍ってのは。まあ誰に命令されようと、おれはお前らの船になんざ乗る気はねェんだが。とんだ無駄足だったな」

     見事に青筋だらけになった〝白猟〟の額に幾分か気が晴れたらしく、フンと鼻息を鳴らし、ゆったりと組んでいた足を解す。傍に立てかけた大太刀を手に立ち上がると、少し低いながらもようやく目線が並んだ。

     海軍将校として鍛え抜かれたスモーカーの身体に比べると、男は随分と細身に思えた。襟付きシャツとスキニーパンツに覆われた手足は長く、捲った袖から覗く特徴的なタトゥーが、シンプルな格好ではことさら目を引いている。

     どこに居ても注目を集めるような奇抜さは薄いだけに、この海にあまた存在する彼の〝同業者〟よりはマシな風貌に見える。
     ——そう見えてしまうのが、とんでもない罠だ。

     しかしてスモーカーは、警戒を弱めない。この男は殊更に、警戒心を以て当たるべき、得体の知れない部類の人間だと直感が告げているからだ。

     今だってそうだ。挑発まがいの言動を繰り返して、こちらの怒りを誘っている。
     腹立たしい。その手に乗ってたまるものか。


    「……お前が何をしに呼ばれたか、わかってるな?」

     どうにか噴き上がる怒りを押さえ込み、スモーカーは問うた。

     不和を起こさんとする努力を多少は認めたのか、はたまた彼の堪える様子によほど胸がすいたのか。トン、と大太刀で肩を叩いて、男は不敵に答える。


    「〝七武海〟新入りとしての、初仕事って話だが?」


    「あァそうだ。来たからにゃあきっちり働いてもらうぞ、いいな。


     ——トラファルガー・ロー」



     出身は北の海、〝ハートの海賊団〟船長。
     所謂〝最悪の世代〟のひとりとして悪名高きルーキー。
     そして……新たに〝王下七武海〟に名を連ねたばかりの男。


     〝死の外科医〟トラファルガー・ローは、再び深く眉間に皺を寄せると、心底嫌そうに言い放った。


    「おれに命令するんじゃねェよ、〝白猟屋〟」

     舌打ちまじりのしかめっ面は、意外にも年相応の若者らしいものであった。




    (つづくかも)
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