カイドウさんの部屋を訪れると珍しく酒を飲まずに何が食べている。
四角い棒のようなクッキーでおそらくプレーンだろう。
齧ってモソモソ咀嚼しているカイドウさんの表情は浮かない。あまり美味しくなさそうな顔をしているのに、カイドウさんの指は次のクッキーに伸びていた。
「カイドウさん。どうしたんです?それ」
「ん?…クイーンのところにあったから少し拝借してきた。…ガキの頃食ってたやつに似てて、何だか懐かしくてな。」
クッキーを見つめるカイドウさんの瞳はどこか遠くを見つめていて、胸が騒つく。
しかもそれがあの能無しがもたらしたものなら尚更。
「…カイドウさん。俺にも一つください」
「ほらよ」
「……」
カゴに入っていた残りのクッキーを全てよこされる。
これは優しさではなく、盗ってきたは良いが飽き始めていたのだろう。
つまんでモソモソ咀嚼する。
まずい。
生地はただの小麦粉の塊で殆ど味がしないし、食感もパサついている。喉を痙攣させながら何とか飲み込む。
そんな俺を愉快そうに見ながら、カイドウさんも残りのクッキーを放り込んだ。