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    sakuta_skt_

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    オー晶♂
    昔なにかの番組で、匂いに対して不快感を抱かないことを第1条件としてパートナーを見つけるみたいなことをしてたのを思い出して書き始めたけど、案の定途中で詰まったので供養です

    オー晶♂供養 雨が降って、虹が溶けて、濡れた木の葉から滑り落ちる水滴に動物たちがはしゃぐ頃、魔法舎に帰ってきたシノからも似たような匂いがしていたことがあった。けれど今、眠気の抜けない身体を無造作に動かして手繰り寄せた外套からは、その瑞々しさに舌先が痺れるような、目の奥から視界がじんと揺らいでしまいそうな甘い香りがした。
    「……くそ、ここどこ」
     気怠い、苛立ちの滲む声がする。
    「あっ」
    「は、何、賢者様……?」
     寝起きで乱れた髪からぎょろりと赤い目玉がこちらを睨んで、低い、低い声が重く頭の中を這う。何故オーエンが俺の部屋のベッドで、俺の横で寝ていたのか。彼がどういう理由で、どうやってここへ来たのか。事情を説明しようと口を開いても、既にオーエンはベッドから降りて魔法で髪や衣服を整えていた。彼が小さく呪文を口にすると淡い光がひとつふたつと室内を飛びまわり、やがてそれは雀ほどの大きさの小鳥に形を変えると、俺が持ったままだった外套を預かって彼の肩にそっとかけた。口を挟めそうにない、尖った空気が肌を刺す。
    「馬鹿な僕を連れ込んで、何をしたの」
     最後にネクタイの結び目を手で調整したオーエンは、褒めてと強請るように鳴く小鳥たちに別れを告げると、ベッドの端に腰掛けて様子を見ていた俺を真っ直ぐに見下ろした。帽子のつばを指先で持ち上げて目を合わせる姿は、言葉も無しに嘘も言い訳も許さないと物語っていた。
     オーエンは珍しく俺の言葉を待っているようだった。いつもなら、あれやこれやと責めたり、笑ったりして、焦ったり戸惑ったりする俺の様子を見て笑うのに。
    「……あの」
    「なに」
     口数の少ない彼は無理やりそうしているのかもしれないと思った。交わった視線はずっとそのままだし、顔色も変わらないように見えるけれど、ほんの少しだけ声が普段よりも不安定だ。いつもの彼なら流れるように抑揚をつけて、舞台の上で踊るみたいに美しく相手の心を絡めとっていく。それが今は、辿々しく、これは正しいのだとひとつずつ確かめながら言葉を歩かせている。
     俺は迷った。きっと俺が何かあったのかと聞いても教えてくれないだろう。でも、知らないふりをしていられるほど、俺は彼に関心が無いわけじゃない。どうするのが正解だろうと考えて、俺は彼の様子を確認しながら、そっと彼の手に触れた。僅かな反応も逃さないようにできるだけ優しく、いつかの夜のように積極的に。嘘をついてないと気づいて欲しくて。
    「厄災の傷の……優しい人格のあなたが、俺の部屋に来たんです。それで、二人で寝ることになって」
    「違う。おまえ、僕の服を触ってただろ。どうして?」
     乱暴に手を振り払われる。ダン、と音を立てて俺の両足の間にオーエンの片足が踏み入ったのと同時、驚いて声を上げる前に彼の腕が俺の胸を突き飛ばした。背中に当たったのが布団でなければ、俺の背中や後頭部は痛みにかぁっと熱くなっていただろう。
    「……っ、は」
    「誰に頼まれたの? ミスラ、ブラッドリー、もしくは他所の魔法使い? 悪いけど、寝てる間だって媒介になるようなものを残しはしないよ」
    「違います! 誰に頼まれたって、あなたに危険が及ぶようなことは……」
    「勘違いするな。おまえに守ってもらわなくたって僕は死なないし、呪いなんて簡単に返せる」
     オーエンの機嫌は悪くなる一方だった。勢いよく掴みあげた俺のネクタイがあっという間に凍りついて、既にオーエンの手袋、俺のシャツや首まで広がっている。
    「本当に、違うんです。あなたの力を見くびっている訳でもなくて……! 知らないうちに俺の部屋で眠っていて、驚いて、どうして僕がって思うのも分かります」
    「……」
    「勝手にあなたの服を触ってごめんなさい。良くないことをしたと思っています。でも誰かに頼まれたわけじゃないんです。媒介なんて、考えもしませんでした」
    「じゃあ、どうして?」

    ‪-------------

     首元まで凍りついていて今この瞬間にもその氷が全身に至ってもおかしくないというのに、賢者は頬を赤くして俯いた。振り払われるままに降ろした手でぎゅっと布団に皺を作って、唇を噛む。表情の見えない賢者に、オーエンは更に腹を立てた。さっさと言えばいい、どんな答えだって踏み潰してやると、加虐心を燻らせる。
     意を決して顔を上げた賢者を静かに見下ろしたまま、オーエンは心の中でひどく煽った。その言葉を切りつけるための言葉の刃を研ぎ澄ませて、いつでも鞘から抜き放てるように柄に手をかけるような気持ちだった。
     けれど、オーエンの期待は無駄になった。賢者の言うことがあまりにも、あまりにも……馬鹿らしかったのに、どうしてか、くだらないと吐き捨てて笑うこともその場を去ることもできなかった。
    「匂いが……したんです。覚えのある森の匂いと、あなたが俺のそばを通り過ぎる時にする、甘くて、どんな毒よりも胸を焼くような匂いが」
    「……何それ」
    「ご、ごめんなさい。気持ち悪いですよね、もう二度、と」
    「賢者様の世界の誘惑は、けだものみたいなんだね」
    「え?」
     ぱちりと瞬いた賢者に、オーエンはくすくすと笑いながら覆いかぶさった。カーテンのように賢者を隠した外套から、シロップと花と致死毒を混ぜた酔いそうなほどに甘ったるく、感覚の痺れる匂いが広がる。
    「何も知らない賢者様に教えてあげる。魔法使いの魔力って、普通は何の匂いもしないんだよ。魔法使いにはそれが分かるけど、人間には分からないんだ。でも、たまに分かる奴がいる」
    「勘が鋭かったり、鼻がいいと分かるんですか?」
    「ううん。双子はこう言ってた。番うと、自分の匂いと相手の匂いが混ざって、透明だったものに色がつくみたいに、分かるようになるって」
     番う。賢者がその言葉を理解するのに、少しだけ時間がかかった。あまり使わない言葉だったからでもあるし、それが所謂そういう関係であるということをオーエンがはっきり言うと思っていなかったのだ。
     先程よりもずっと顔を赤くして口をはくはくとさせている賢者の凍った首元を、手袋を外した手で撫でるオーエンの表情は穏やかだった。自分が優位に立っていることに安心して、ここからどうしてやろうと唇を舐める。広げた手のひらにころりと転がって蹲る賢者を見下ろすのは心地がいい。
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    sakuta_skt_

    CAN’T MAKEオー晶♂
    昔なにかの番組で、匂いに対して不快感を抱かないことを第1条件としてパートナーを見つけるみたいなことをしてたのを思い出して書き始めたけど、案の定途中で詰まったので供養です
    オー晶♂供養 雨が降って、虹が溶けて、濡れた木の葉から滑り落ちる水滴に動物たちがはしゃぐ頃、魔法舎に帰ってきたシノからも似たような匂いがしていたことがあった。けれど今、眠気の抜けない身体を無造作に動かして手繰り寄せた外套からは、その瑞々しさに舌先が痺れるような、目の奥から視界がじんと揺らいでしまいそうな甘い香りがした。
    「……くそ、ここどこ」
     気怠い、苛立ちの滲む声がする。
    「あっ」
    「は、何、賢者様……?」
     寝起きで乱れた髪からぎょろりと赤い目玉がこちらを睨んで、低い、低い声が重く頭の中を這う。何故オーエンが俺の部屋のベッドで、俺の横で寝ていたのか。彼がどういう理由で、どうやってここへ来たのか。事情を説明しようと口を開いても、既にオーエンはベッドから降りて魔法で髪や衣服を整えていた。彼が小さく呪文を口にすると淡い光がひとつふたつと室内を飛びまわり、やがてそれは雀ほどの大きさの小鳥に形を変えると、俺が持ったままだった外套を預かって彼の肩にそっとかけた。口を挟めそうにない、尖った空気が肌を刺す。
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