五条悟の機嫌がすこぶる良い時に彼へ近寄ってはならない。これは呪術界(というよりも彼近辺の呪術師間)でまことしやかに語られている話だ。高専時代から先輩後輩の関係で長く付き合いのある七海建人ももちろんそれを知っているし、それを広めている節さえある。この間は任務の合間に押し付けられ……もとい、任された一年生達にも強く強く言い聞かせた。虎杖悠仁と釘崎野薔薇は神妙な顔つきで頷き、伏黒恵はげんなりした顔で遠くを見つめていた。きっと過去既に何かあったのだろう、ご愁傷様としか言いようがない。
さて、ここまで「機嫌のいい五条」の恐ろしさを軽く説明したが、実際のところ七海は未だそれに巻き込まれるどころか、直接目の当たりにしたことすらない。ただただ周囲の被害を見て「アレにだけは絶対に関わらない」と足掻き続けた成果である。不思議なことに、率先して絡んできそうな五条もそんな時には七海に近寄らないのだ。
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