初邂逅「シンイチローくん、いるー?」
証明の落ちた店の奥に向かって声を張るが、反応はない。いねぇのかな、なんて思っていたら、ぺち、ぺち、とビーチサンダルを履いた足音が聞こえた。
「なに、オマエ客?」
振り返ると、そこにはダルそうな顔をした男が立っていた。
見覚えのないその男に一瞬気圧されるが、コイツもしかしてドロボーか、と思い直す。
「てめっ、ど、ドロボーか!? この店に取るモンなんてねーぞ!」
「はァ?」
威勢よく上げた威嚇に男は後頭部を掻き、呆れたようなため息を吐きながら俺の目の前に膝をついた。
「ボーズ、よく聞け。俺は真に店番頼まれてンだよ」
「えっ? シンイチローくんに?」
「そぉ。つーかオマエこそ、客じゃねえならドロボーか?」
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