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    shido_6652_SD

    @shido_6652_SD

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    shido_6652_SD

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    ワカさんとバジさんの初邂逅、捏造100%です
    バジさんはおショタのイメージです

    初邂逅「シンイチローくん、いるー?」

    証明の落ちた店の奥に向かって声を張るが、反応はない。いねぇのかな、なんて思っていたら、ぺち、ぺち、とビーチサンダルを履いた足音が聞こえた。

    「なに、オマエ客?」

    振り返ると、そこにはダルそうな顔をした男が立っていた。
    見覚えのないその男に一瞬気圧されるが、コイツもしかしてドロボーか、と思い直す。

    「てめっ、ど、ドロボーか!? この店に取るモンなんてねーぞ!」
    「はァ?」

    威勢よく上げた威嚇に男は後頭部を掻き、呆れたようなため息を吐きながら俺の目の前に膝をついた。

    「ボーズ、よく聞け。俺は真に店番頼まれてンだよ」
    「えっ? シンイチローくんに?」
    「そぉ。つーかオマエこそ、客じゃねえならドロボーか?」

    ブンブンと首を横に振る。じゃあなんの用だと聞かれて、俺は両手で持った包みを男に見せた。

    「これ、持ってきた。エマに頼まれて」
    「なにこれ」
    「お弁当。シンイチローくんが忘れてったから」
    「ふーん……あいつ、今昼飯買いに行ってンぞ」
    「えっ、そうなの? じゃあ、これ余る?」
    「そうだな」

    余ると宣告されたお弁当を見て、どうしたものか考える。持って帰るという選択肢はないし、俺が食べるには量が多い。
    捨てるのはあまりにも勿体無いし、さてどうしようか。

    「ボーズ、その弁当さ」
    「うん?」
    「俺食っていい? 今日まだなんも食ってねーんだワ」

    ダメかい、ととぼけた表情で聞かれ、言葉に詰まる。ダメではないだろうが、初対面で名前も知らない男にシンイチローくんのお弁当を食わせてもいいものか。店番を任される程度には親しいらしいが、俺はまだこの男のことはなにも知らない。
    言い淀む俺を見てか、男はふぅと息を吐いた。

    「無理にとは言わねえケド」
    「いや、無理っつーか……そもそもアンタ誰なんだよ。知らない奴にやれねーよ」
    「さっき言ったろ、真に店番頼まれた……」
    「違う、アンタの名前」
    「名前ェ? 今牛若狭」
    「いま、わか?」
    「……うん。で、オマエは? 俺だけに名乗らせんのはマナー違反だよなァ」

    なーまーえ、と迫られ、軽く後退る。
    小さく名前を呟くと、男はふぅんと唸った。

    「ケースケ……じゃあ、オマエ今からケー坊な」
    「坊って、俺もうそんな年じゃねーんだけど」
    「俺から見りゃまだまだガキなんだよ。んで、ケー坊。それくれんの?」

    お互いにもう名前知ってんだから、初めましてではなくなっただろ。
    そういう男は、遠慮なくずいずい顔を近づけてくる。 

    「あ、アンタこれ、全部食えんの? けっこー量多いけど」
    「アンタじゃなくて、ワカさんな」
    「ワカさん。食えんの?」
    「ま、イケんだろ。ダメならケー坊、半分こな」

    半分こ。
    その響きに、なんとなく惹かれるものがあった。俺は一人っ子だから、半分こなんてしたことがない。

    「半分こ? 俺と?」
    「オマエ以外に誰がいんの。それともなに、ケッペキショーってやつ?」
    「けっぺきしょ? なんだそれ」
    「わかんねーならいいや。ケー坊、半分こすっか?」

    する、と頷くと、ワカさんは少しだけ口角を上げて、俺の頭をくしゃくしゃに撫でた。

    「いい返事だな。じゃ、奥で食うか」

    そう言うなり、ワカさんは立ち上がって店の奥へと入っていく。置いていかれた俺は慌てて、歩幅の大きさを埋めるように、早足でついて行った。

    「こっち、入っていいの?」
    「店番中だからな、どこ入ったっていいんだよ」
    「ふぅん……」

    ドアを二つくらい通りすぎた先の部屋に、簡易的な事務机が置いてあった。お弁当はその机に置き、それぞれパイプ椅子を引き摺って座る。

    「あ、箸一人分しかねーや」

    包みを開けたワカさんが声を上げる。が、直後にまァいいかと言ってお弁当の蓋も開けた。

    「ケー坊、あーんしてやろうか」
    「ヤダ」
    「うわ傷付くわ」

    お弁当特有の腹の空く匂いが漂って、きゅる、と腹の虫が鳴いた。卵焼きを一口で頬張ったワカさんからお弁当を受け取り、隅っこの唐揚げに手をつける。

    「オマエさぁ、真とエマちゃん知ってンだろ。つーことは万次郎も知ってる?」
    「むぐ、ぅん」
    「食ってからでいーよ」

    口の中の唐揚げを飲み込んで、お弁当をワカさんに渡す。ワカさんはなにを食べようか迷ってから、ごま塩ご飯を選んだ。一口が大きい。

    「俺、マイキーと幼馴染みだよ」
    「マイキー? アイツそう呼ばれてんの」
    「うん。なんで?」
    「いや、ケー坊と万次郎が同い年くらいに見えたからな。てことは俺の10コ下かァ」
    「10コ下って……ワカさん俺の10コ上なの!?」

    大人じゃん!と叫ぶと、ワカさんはむすっと口を尖らせる。

    「とっくに大人だワ。年上を敬えよ、ガキンチョ」
    「でもワカさん、シンイチローくんみたいな大人じゃないな」
    「そりゃまあ……俺ァ真じゃねーしな」
    「ワカさんもボーソーゾクだったん?」
    「おう。もう引退したけど」
    「おぉ~カッケー! ワカさん、ボーソーゾクだったときの話してくれよ!」

    このとーりと拝んで見せると、ワカさんは苦笑いを浮かべて、いろいろな話をしてくれた。
    片っ端から喧嘩をしていた時代や、警察に追いかけ回された話、目の前の全てが楽しかったこと。そして、初代BDの話。

    「ケー坊、単車乗りてェ?」
    「乗りてえ!」
    「そーか。じゃ、いつかイイモンやるよ」

    約束な、とワカさんに迫る。
    これが俺の、初代BD特攻隊長である今牛若狭との、初邂逅だった。
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