あの子は無防備「お邪魔しますッス…て、留守みたいッスね」
書類を手に恵比寿の部屋にやってきたゲル
「どうしよう、ん?」
ソファーに何かあり近づいてみるとジャケットが置かれていた
「これ、いつも恵比寿様が着てるやつッスね」
それを手に取りゲルはチラリとドアを盗み見た
「………ちょっとだけならいいッスよね?」
「あんのシャキャアめぇっ…」
眉間に皺を寄せドスドスと足音を立て歩いているのは七福神の一神・恵比寿
「今日こそは天誅出来ると思うたのに…くそっ忌々しい奴やっ…!」
どうやら釈迦に逃げられたらしくかなり機嫌が悪いようだ
「はぁ…ちぃっと汗流して休むか…」
愚痴りながら部屋の前に着きため息を吐きながらドアを開けると
「すぅ…すぅ…」
自分のジャケットを着たゲルがソファーで眠っていた
パタンっ
………思わず扉を閉めてしまった
(いやいやいやいや待て待て待て待てっ落ち着くんや自分っ…いやなんで嬢ちゃんがわいの服着て寝てるん??!)
数十分前
「わぁやっぱり大きいッスっ…!」
ゲルは恵比寿のジャケットを着ており言わば"彼シャツ"というのをしていた
「1回やってみたかったッスよっ、帰ってくる前に戻せば大丈夫ッス!」
鏡の前でポーズをしたりクルクル回ったりとても楽しそうである
「ふぅ、少し休憩っと」
ソファーで休もうと横になる
「えへへ…恵比寿様の匂い…」
恵比寿の残り香を感じながら目を閉じ…
そしてそのまま寝てしまい今に至る
ともかく状況を整理するため部屋を見渡すとテーブルに書類が置いてあった
「なるほど、あれを届けに来たっちゅう訳か。……にしても少し無防備すぎんか?」
静かにゲルに近づき顔を覗き込む
「幸せそうに寝とるなあ。信用してるんは嬉しいが…….わいも男やで?」
ギシッ…二人分の重みにソファーが軋む
「あんまり無防備にしとると…」
食っちまうぞ?
「…んぅ」
起きるか?と身構えるが
「ぅん…えびすさまぁ…」
どうやらまだ夢の中のようだ
「…ブハッ…!本当嬢ちゃんってやつは」
ゲルを起こさないようにソファーに腰掛ける
「早う起きておいちゃんとお話しようや、寂しくてかなわんわ」
まず起きたらこの子はどんな反応を見せてくれるか、今から楽しみだ。