【曦澄】魚心あれば下心「あ、ああ~……」
ばっしゃーん!
景気のいい音と共に水飛沫が上がり、蓮花塢の蓮湖の中を一匹の犬が気持ちよさそうに泳いでいく。ばっちゃばっちゃと犬かきをして、実に楽しそうだ。
「全くいい身分だ、あいつめ」
「暑いですからね。あんなにふさふさの毛並みではたまらなかったのでしょう」
「そうは言うがな。ちょっと目を離すとすぐに湖に飛び込むんだ。乾いているときのほうが短くなってきたぞ」
「ふふ、まだ一歳になったばかりでしょう? 遊びたい盛りのようですね」
欄干をびしょ濡れにするから、足元に気をつけてくれ。滑るぞ。
手を取って誘導してくれる江澄に、大丈夫ですよと微笑む。
蓮の花の見頃に合わせて今年も蓮花塢にやってきた私に、江澄は甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。それが嬉しい。
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