『君の名前を呼ぶ』朝6時の起床時刻に起き、顔を洗い鏡を見ると頭上に数字が浮かんでいた。
「なんだこれは?」
飛蚊症かとも思ったが、それにしてはやけにしっかりとした数字に首を傾げながらもそのうち消えるだろうと、着替えて筋トレ施設に向かう。
「おっ!イサミ!今日も早いねぇ」
ヒビキも同じ起床時間で起きたのか同じタイミングでばったりと廊下に出てくる
「ヒビキも同じ時間だろう」
「それもそうだったね」
ヒビキの頭上にも俺と同じ数字が浮かんでいた。
少し違う所はその回数が俺より多いくらいだろう。
「イサミ?……イサミ?……どうしたの?そんなに私のこの辺り見つめて
……まさか、なんか付いてる?」
ヒビキが髪を撫で、糸屑を払うような仕草をする。
……回数が増えた。
まさか、この数字は俺の名前を呼んだ回数なのか?
「またな」
「あれ?イサミが筋トレしに行かないなんて……明日はもしかして雪が降る?」
「明日は晴れだ」
「冗談だよ」
知っていると頷き、一番分かりやすいのは最近現れたあいつだろうと筋トレ施設とは反対に位置する格納庫へと向かう。
『イサミ!今日は早いな
こんなに朝早く私に会いに来てくれるなんて、嬉しいぞイサミ!
必殺技の話だろうか?
それとも最近作ったスタチューの話を聞きたいのだろうか?
もちろん今日の夕飯のリクエストでも全力でイサミの要望に応えよう!!』
ブレイバーンの頭上に表示された3桁の数字が俺の名前を呼ぶごとに面白いくらいに上がっていく。
最近出逢ったのに既にいる人間より俺の名前を呼んでいるなんてお前、どれだけ俺のこと好きなんだよと顔が熱くなる。
『イサミ?大丈夫だろうか?
体調が悪いなら軍医に見てもらうと良い
熱や風邪は私でもどうすることができないんだイサミ』
「……あー、まぁ、たぶん大丈夫だろ」
ぬっと、ブレイバーンの顔が俺に近づくのを手で止める。
この摩訶不思議な現象の原因はこいつじゃないと察し、実害も無いなら問題無いかと放置することにした。
後日、ブレイバーンの頭上に表示された数字が限界を迎えたのか震え爆発したことで妙な数字は見えなくなった。