お安い御用 買い出しに出掛けた帰り道、可愛らしい小間物屋の前で足を止めていたから、てっきり欲しいものでもあるのかと思ったのだ。
だが加州清光がそれらを眺める眼差しは、どこか憂いを帯びていた。
何か買ってやろうかと一文字則宗が声を掛けるより早く加州は再び歩き出し、則宗はそれを黙って見送った。
こまごました装飾品を好んで身に付ける彼と店先での様子がうまく結びつかず、帰城後に審神者に訊いてみた。審神者曰く、加州はあまり店というものに良い思い出は無いらしい、と。嫌いではなさそうとのことだが。
それとなく濁されたが、どうやらただの刀であった頃の記憶が関係しているらしかった。
(昔のことは、僕にはどうにもできないが……)
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