霊力と記憶を無くしても、おつごちからは逃げられない話「見つけたよ、おつう」
慣れない仕事に追われて、やっと帰路に就いていた時だった。
下には少しだけ車通りがあるとはいえ、誰もいない歩道橋。それなのに男の人の声が聞こえた気がして、少し怖くなって背後を窺ってみる。
誰もいない。途端、背中にゾクリと寒気が走る。私は逃げ出すように、駆け足で階段を駆け降りた。
昔から、霊感の強い方ではあった。
小さい頃は"それら"と人間の区別がついていなくて、よく側から見て、何も居ない空間に話しかけているような子どもだった。小学生の頃にようやく判別がつくようになって、周りから気味悪がられることは少なくなった。
中、高と少しずつ"それら"の影は薄くなっていって、最後に"それら"を見たのは四年半前。——私の、記憶が途切れる前だった。
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