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    youkari

    思うままに適当に見て欲しいものを上げる。
    そんで気が済んだら下げる。
    あんま人の目は気にせずやる。

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    youkari

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    ジンとシェリ
    10歳て言うてるけど、シェリーの歳はもう少し下。

    #ジンシェリ
    ginChili

    クソガキ男はコードネームなど持たなかった。
    ただの下っ端よりは腕が立つ、と多少高い地位にはいた。だが、そんなところで満足する気もなかった。
    ベルモットという金髪の女幹部が、今日からあなたにこの子を任せるわ、といって紹介してきたのは年端もいかない少女だった。
    赤茶の髪に強気な瞳。子供に似つかわしくない白衣を着ている。
    世話係と監視をしろという話だった。
    監視などと大袈裟な。
    たかだか10歳ほどのガキに何ができるというのか。
    組織の研究所の中の、とある部屋に二人で残され、男は徐にタバコに火をつけた。

    「私のそばで吸わないで。嫌いなのよ」

    少女は強い瞳ではっきりと言った。
    10歳の物言いとしては生意気だったことに苛立ち、男はタバコを一息吸って、それから少女の顔に煙をふうっと吹きかけた。
    少女は顔を顰めたものの、泣くでもなく逃げるでもなく、男を睨みつける。

    「クソ野郎」
    「クソガキに言われてもな」

    男の言葉には答えず、少女は部屋にあった大きなデスクに座った。
    いや、大きくはない。
    少女が小さいのだ。
    彼女は手を伸ばし、備え付けのパソコンを立ち上げていじり始める。

    「おい、勝手に触るな」
    「私のものよ」

    白く細い手は澱みなくキーボードを打つ。
    画面には男には理解できないデータの羅列が表示された。
    男はタバコを灰皿に押し付け、火が消えるのも確かめずにデスクに近寄る。
    行動を見るだけで、この少女が特別な人間だということだけは理解できた。
    それを、あの金髪の女幹部は自分に任せようとしているのか。
    薄く、口元に笑みが浮かぶ。
    この少女を丸め込んでしまえば、出世への近道になるかもしれない。
    だが、子供のお守りなどごめんだという気持ちも事実だった。
    そんなことをするために血反吐を吐いて組織に入ったわけではないのだ。
    まずはこのガキの素性を知らねばなるまい。

    「ガキ」
    「……私のこと?」
    「他にいねーだろ」
    「名前、聞いてないの?」
    「なにも知らされてねえよ。説明しろ」

    忙しなくキーボードの上を踊っていた指の動きが止まり、少女は冷たげな光を湛えた瞳で男を見上げてきた。

    「シェリー」
    「そりゃ、コードネーム持ちの科学者の名前だ」
    「それが私よ」

    少女は白衣のポケットからラボで使われている身分証を出した。
    そこには、確かに彼女の顔写真と『Sherry』の文字。

    「下手打って組織を追われたくなければ、私の言うことを素直に聞いて、あとは大人しくしておくことね」

    男は目を見開く。
    組織にとって重要な人物であると思ったが、まさかコードネーム持ちとは。
    少女は名乗ったことでこちらが下手に出ると思っているのか、得意げな笑みを浮かべている。
    それに腹立ち、男は無意識にその額を中指で弾いた。

    「いっ……!!」

    シェリーは額を押さえ、驚いた顔でぱくぱくと口を開けている。

    「うるせぇ。俺の仕事はおまえが逃げ出さねぇようにすることだ。機嫌取ってもらいたきゃ、他のヤツに頼むんだな」
    「……ムカつく男ね」
    「おまえほどじゃねえよ。なんだか知らねえが、仕事すんだろ。ちゃっちゃとやっちまえ」

    フン、とシェリーは鼻を鳴らして顔を背ける。

    「カフェオレ」
    「あ?」
    「ラボから東に2ブロック行ったところに、青い看板のカフェがあるわ。そこのカフェオレ飲まないとやる気出ない」

    こちらを見てはいないが、どの程度男が自分に従うかを見極めようとしている気配が感じられた。
    男は目を細めると、徐に少女の身体を肩の上に担ぎ上げる。

    「ちょ、っと!! なにすんの! ベルモットに言いつけるわよ!」
    「おまえが飲みたいって言ったんだろう。俺はおまえから目を離すわけにはいかねえ。店まで連れてく」
    「はあ!?」

    少女の身体は軽い。抵抗する力も弱い。
    研究室を出ると、廊下を行き交う研究員たちの視線が刺さったが、男にとってはなんということはない。
    言われた通りに世話をしているだけなのだ。
    そのうち、シェリーは大人しくなり、ラボの玄関を出る頃には、下ろして、と小さく言った。
    少女の身体を地面に下ろし、逃げないようにその左手首を握る。

    「あんたみたいなの初めてよ」
    「任務を遂行してるだけだ」

    風が吹き、彼女の赤茶の髪の毛を揺らした。

    「……外の空気を吸うの、久々かも」
    「いつもパシらせてんのか」
    「言えば勝手に買って来るのよ」

    シェリーは眩しそうに空を見上げる。
    そして、行きましょ、と促され歩き出した。

    「そういや、外出はしてもよかったのか」
    「今さら? お守り役が一緒なら問題ないわ。それより、あなた目つき悪いんだから、これだと誘拐と間違われるわよ。ほら」

    手首を握っていた手が引き剥がされ、彼女は男の手を握ってきた。
    頼りない接触に男は少しばかり戸惑ったが、少女が逃げそうにないことを感じ取れば、その手を軽く握る。

    「あの店のカフェオレ、スティックシュガーを三本入れるのが美味しいのよ。奢ってあげる」
    「気持ち悪いモン飲んでんな」

    うえ、と舌を出せば、脛を蹴られた。
    とんだクソガキを任されたものだ。
    男はため息を吐く。
    まさかこんな関係がこの先何年も続くと思わずに。
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