101-150志「あー! 日付変わっちゃった!」
赤「どうしたんだ?」
志「昨日中に送らなきゃいけない講義のレポートが…」
降「君なら送信時間くらい改竄できるだろ」
志「できるけど、ズルはしたくない…明日叱られに行くわ」
赤井と降谷に交互に頭を撫でられた。
ノートパソコンを開いている降谷。
志「まだ仕事?」
降「少しだけね」
赤「降谷くんは国が恋人なんじゃなくて、仕事が恋人なんじゃないか?」
降「どっちもヤだよ。人間がいい」
志「それ、工藤くんに言わないでよ。国が恋人っていうの、ちょっと感動してたんだから」
志保が冷凍庫を見ている。
赤「どうした?」
志「アイスが食べたいんだけど、時間的に食べるかどうか迷ってるの」
降「寝たら忘れるんじゃないか?」
志「逆に気になって寝られない気がするのよ」
赤「みんなで食べるか」
志保の顔が明るくなる。
ひとつのアイスを分け合って食べた。
志保が欠伸をする。
時計を見ると日付が変わっていた。
降「そろそろ寝たほうがいいよ」
志「あなたたちは?」
赤「俺は区切りのいいところまで本を読んでからな」
降「僕はいくつかメール書いたら」
志「じゃあ、私ももうちょっと起きてる」
赤「ただいま」
志「おかえりなさい。遅かったわね」
降「こんな時間まで仕事なんて珍しいな」
赤「…夕方にボウヤと出会ってな。なんやかやと、まあ、いつも通りだ」
どうやら事件に巻き込まれたようだ。
二人は「お疲れ様」と声を揃えた。
降「赤井は?」
志「もう寝たわ。明日早いんですって」
降「アラームかけてるかな。アイツ、すぐかけ忘れるから」
志「六時起きって言ってたわよ」
降「念のために僕も起きるか」
志「過保護ね…」
飲み会の二次会に参加していたら、帰るのが遅くなってしまった志保。
連絡は入れてあるし、心配はかけていないはずだ。
友人と別れて一人になったところで、物陰から出てくるふたつの背の高い影。
志「もう子供じゃないんだけど?」
赤「心配できるうちはさせてくれ」
降「さ、帰ろ」
降「0時か…少し早いけど寝るかな」
志「え、もう寝るの?」
赤「珍しいな」
降「…言っておくけど、日本人の平均就寝時間は23時だぞ。うちは夜更かししすぎだ」
赤「俺はアメリカ人だから関係ない」
志「赤井さん、こういうときだけアメリカ人になるわよね…」
志「安室さんのハムサンド食べたい」
降「ハムサンドセット、1000円になります」
志「暴利! ぼったくり!」
赤「俺が作ってやろうか?」
志「美味しいの?」
赤「パンにハムを挟めばいいだけの料理だろう?」
降「おい、ハムサンドなめてんのか」
すごい形相で作ってくれた。
風呂上がりにソファで寝ている志保。
赤「髪も乾かさずに寝てるぞ」
降「このままじゃ髪が痛むな」
ドライヤーを持ってきて乾かしてやる降谷。
起きない志保。抱き上げて部屋へ連れていく赤井。
降「年頃の娘がこれでいいのか…」
赤「明日言い含めておこう」
日付の変わる頃。
降「ただいま…」
志「遅かったわね。夕飯は?」
降「食べた」
赤「風呂沸いてるぞ」
降「ありがとう。…疲れた」
風呂に向かう降谷。
風呂上がりのアイスとドライヤーを準備して待ち構える二人。
今日もお疲れ様だ。
志「ただいまぁ」
赤「遅い。飲み会だったのは分かるが、遅すぎる」
降「心配だから、遅くなるときは連絡するように言ったはずだけど?」
赤「そこに座れ。今後の行動について話し合うぞ」
志「眠いんだけど…」
赤、降「座りなさい」
志(長くなりそうね…)
志「もう寝るわね。おやすみ」
赤「今日は早いな」
志「昼間にハロとフリスビーで遊んでたら疲れちゃった」
降「ハロはキャッチ上手いし、咥えて戻ってくるからそんなに疲れないと思うけど」
志「フリスビーをまっすぐ飛ばせる人はそうでしょうね」
ああ、と赤井と降谷は納得した。
赤「志保はまだ帰ってこないのか」
降「ゼミの飲み会だって。大学生なんてこんなもんだろ」
赤「遅すぎだ。迎えに行くべきじゃないか」
降「過保護だな。大丈夫だよ、もう最寄駅だ。すぐ帰ってくる」
そう言う降谷の耳には無線のイヤホンが。
どっちが過保護なんだ。
夜遅くなって、降谷が帰ってきた。
志、赤「おかえり」
降「まだ起きてたのか。ただいま」
志「降谷さん、ちょっと聞いてくれる? ハロったら…」
赤「降谷くん、今日の夕方のことなんだが…」
二人が寄ってくる。
色々聞いて欲しいのはわかったから、まずは着替えくらいさせてくれ。
赤井が布団を干そうとベランダに出た。
急な強風で布団が舞い上がり、赤井の手から離れる。
赤「布団が吹っ飛んだ…」
その呟きがツボに入った志保は腹を抱えて笑い出す。
笑ってる場合か!、と降谷は玄関から飛び出して行った。
赤井はマンションのアプローチに落ちた布団の写真を妹に送った。
寝起きの悪い志保。
起こしに来た赤井の声に耳を貸さない。
降谷も同様だ。「
天岩戸作戦だ」と言って、志保の部屋の前で降谷はギター、赤井はアコーディオンを弾き始める。
しばらくして志保の部屋の扉が開いた。
「……うるさい」と志保に冷たい声で言われ、扉は再び閉められた。
天岩戸作戦失敗。
降「明日弁当いる?」
志「作ってくれるの?」
降「今日の夕飯、結構余ったから。いらなかったら風見にやる」
赤「玉子焼きも入れてくれ」
志「おにぎりは小さめで」
降「了解」
ドン、と部屋の外で破裂音がした。
降谷は慌てて部屋から出る。
志保も同じように部屋から出てきたところだった。
キッチンでは赤井が呆然として立っている。
赤「玉子をレンジに入れたら爆発したんだが」
志「いまどき子供でもやらないわ…」
降「レンジの掃除は自分でしろよ」
帰り道で肉まんを買った志保。
食べようとしたところで、降谷が合流した。
志「ひと口食べる?」
遠慮なく大口で肉まんを齧る降谷。
「いいものを食べてるな」とやってきたのは赤井だ。
志保が肉まんを差し出すと、半分以上なくなった。
しょんぼりする志保を見て、男二人は新しい肉まんを買いに走った。
志保が風邪をひいた。
看病は降谷がするというので、赤井は手持ち無沙汰だ。
降谷が志保の部屋から手招きをする。
志保の手を握らされた。
降「病気の時は心細いからな。おかゆ作る間、頼んだぞ」
赤井はしっかりと頷いた。
今日は降谷の作る唐揚げだ。
家中に美味しそうな香りが充満する。
味見、と称して志保がひとつ頬張る。
次いでやってきた赤井もぱくり。
志「一個じゃわからないわね」
赤「どれ、もうひとつ」
伸びてきた手を、降谷がパシパシと払っていく。
志保が護身術を赤井に習い始めた。
赤「背後から抱きつかれたら、こうだな」
志「なるほど」
赤「腕を掴まれたら、こう」
志「降谷さん、ちょっと襲ってきて」
身構える志保を軽く捕まえて、小内刈りで床に転がす降谷。
降「防犯ブザー鳴らして走って逃げなさい」
額に怪我をして帰ってきた志保。
痛々しく大きな絆創膏が貼られている。
赤「転んだのか?」
志「考え事してたら、電信柱にぶつかったのよ」
降「そんな漫画みたいなことをする人間が令和にいるなんて…」
赤「怪我した場所に銅像でも立てるか」
落ち葉の中のどんぐりを拾った志保。
志「どうしてどんぐりって拾いたくなるのかしら」
降「僕も子供の頃、拾った中で一番大きいのを宝物にしてた」
赤「栗のほうが良くないか? 食べられるし」
正論だが、そういうことではないのだ。
志保が車の免許を取った。
車を運転させてくれ、と二人に頼んでくる。
赤「俺のは左ハンドルだし、車体もでかいから初心者にはどうかな」
降「僕のは結構ピーキーで、運転しにくいかも」
降谷はスマホを取り出して電話を掛けた。
降「風見? ちょっと来てくれ。車で」
赤井がアメリカに一時帰国することになった。
それに合わせて、志保も阿笠と共にフサエに会うために渡米の予定。
一瞬、パスポートの期限を確認しようとしてしまった降谷。
いやいや、僕は行かないぞ。
赤井が酔っ払って帰ってきた。
赤「飲み過ぎた…」
志「そんなにフラフラになるの珍しいわね。はい、経口補水液」
降「どれだけ飲んだんだよ。水分取ったら胃薬もな」
呆れ顔の二人がペットボトルと薬瓶を置いてくれた。
ハロウィンが近い。赤井がハロにカボチャの帽子を買ってきた。
降谷はコウモリの翼つきのハーネスだ。
志保は何十枚も写真を撮っている。
ハロは迷惑そうな顔だ。
長風呂の降谷と志保。
風呂に入っていると、長湯しない赤井が時折様子を見に来る。
意外と心配性だ。
たまにカレーをスパイスから作る降谷。
毎回呪文のようなスパイスの名前を赤井と志保に説明してくるが、二人はまったく覚える様子はない。
美味しければいいのだ。
近所のスーパーに行く三人。
赤井は試食で食べたチキンナゲットを買ってくれとうるさい。
志保は気になった菓子をこっそりカゴに入れていく。
降谷は慣れたもので、赤井は無視。
志保の菓子は手際よく棚に戻していく。
子供がいたらこんな感じかな、と思いながら。
家にメアリーがやってきた。
志保と降谷に赤井の小さい頃のエピソードを話すので、赤井は早く帰って欲しそうだ。
志保と降谷はメアリーを夕飯に誘っている。
早く止めないとあんなことやこんなことまで話されてしまう。
筋トレすると言い出した志保。
リビングで1kgのダンベルを持って頑張っている。
降谷が無言で10kgのダンベルを持って現れた。
赤井もやってきたが、その重さは15kgだ。
降谷はウェイトを足して20kgにした。
志保を差し置いた勝負の気配がする。
志「今日、赤井さん遅くなるんですって」
降「夕飯どうする?」
志「ピザ! デリバリー!」
普段は渋る降谷だが、二人ならいいか、と了承。
そんな日に限って早めに帰ってくる赤井。
口元からチーズを伸ばしながら固まる二人。
勢いで冬の海にやってきた三人。
寒い寒いと言いながら海岸を歩く。
ここまで来たら、と降谷が靴と靴下を脱いで海に入る。
調子に乗った赤井も参戦。
砂に足を取られ、二人がもつれ合って転んだ。
志保は腹を抱えて笑っている。
風邪気味の降谷。
熱があるのに仕事に行こうとするのを二人が止めるが、聞く耳を持たない。
志保が麻酔針を発射。
赤井が倒れる降谷を華麗に受け止める。
志保が風見へ欠勤連絡を入れたが、逆に感謝された。
出張に行っていた降谷が帰ってきた。
地酒と地元銘菓を期待していた赤井と志保だが、降谷は手ぶらだ。
赤、志「お土産は?」
降「ごめん、忙しくて買う暇なかった」
赤井がその場で地酒と地元銘菓を通販する。
それでいいのか?、と降谷は疑問顔だ。
赤井が高級食パンを買ってきた。
早速切って、焼いて、バターを塗って食べてみる。
三人とも、美味しいけどそれほどでもない、という顔。
志「ねえ、そのまま食べるのが美味しいって書いてあるわよ」
もう一度買って来て欲しいオーラを発する二人。
赤井に届け。
遊びに来ていた新一が志保とリビングで酔い潰れている。
降「まったく、若い子は飲み方を知らないから」
赤「こうやって限度を知っていくのも勉強だ」
降「いや、おまえもこないだ酔い潰れてたぞ?」
赤「まだ若いからな」
降「…無理がある」
猛暑日。
いつもの黒い服で外に出ようとする赤井を二人が止める。
降「今日はそれはやめとけ。死ぬぞ」
志「黒しか持ってないわけ?」
白っぽい服に着替えてみると、赤井っぽくない、と言われた。
どうしろと言うんだ。
降谷が洗面所で自分の髪を切っている。
器用なものだ、と見守る二人。
志「降谷さん、私のも切ってくれない?」
赤「俺のも頼む」
降「僕と同じ髪型でいいならやるけど?」
二人は顔を見合わせ、丁重に断った。
降谷が圧力鍋を買ってきた。
シチューもカレーも肉じゃがも短時間で思いのままだ、と得意げだ。
赤「食材をゆっくり煮込んでいる時間が好きだったんだが…」
赤井はどこかしょんぼりしている。
降谷は圧力鍋を、豚の角煮専用にすると決めた。
温泉宿にやってきた三人。
浴衣に着替えて宿の中を散策中、卓球台を見つけてしまった。
赤井と降谷が早速プレイ。
浴衣に慣れない赤井が僅差で降谷に負けてしまう。
降谷が上機嫌で二人にアイスクリームを買ってくれた。
おいしい。
猛暑日の続く夏。
志保が新しい水着を買ったらしい。
志「可愛くて衝動買いしちゃったわ。泳ぎに行く予定もないのに」
赤「プールつきのホテルにでも行くか」
降「了解。今週末で予約した」
志「フットワーク軽すぎない?」
二人もせっかくの夏を満喫したいようだ。
三人で映画『緋色の捜査官』を観た。
志保が顔を赤らめて、ため息を吐く。
志「このFBI捜査官、格好良いわね…」
降「志保さん、志保さん。横見て。横に本物いる」
志保は聞こえないフリをしている。
認めたくないようだ。
降谷がコロッケを揚げている。
今日はカレーの予定では?、と赤井が聞くと、台風が来るから、と答えられた。
大学から帰ってきた志保がキッチンをのぞき、台風だものね、と言った。
赤井は不思議そうだ。
志保の後頭部に寝癖がついている。
彼女はそれに気付かないまま、準備をして出かけてしまった。
男二人はそれを見送ってから語り合う。
降「ああいう隙があるの可愛いよな」
赤「違いない」
降谷の育てるプランターの横に置かれた鉢には志保が育てているイチゴがある。
大切に育てたものの、実ったのはひとつ。
そのひとつが収穫どきになった。
二人が見守る中、恭しくそれを摘み取る志保。
切り分けて食べたが、甘くなかった。
来年こそは。
雨に降られたから迎えにきてくれと、志保からグループメッセージアプリに連絡。
誰宛とも書いていなかったため、RX-7とマスタングが同時に到着してしまった。
ちょうど一緒にいた新一と分乗して帰ることにする。
めでたしめでたし。