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    dekopon_ko

    @dekopon_ko

    だいたい牧台/WV。

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    dekopon_ko

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    らんまが再アニメ化のニュースを見て
    そういえばらんまネタのWV書いてたなって

    #WV
    #牧台
    pastoralTerrace

    ヴァッシュ1/2 喧騒とトラブルは突然にやってくる。得てして世の中はそういう風にまわっているものだ。
     しかし達観していても、時には予想外のこともおこるわけで――。

    「うわああああ!」
     その日、バスルームからの悲鳴と、どっしーん! という大きな音が部屋じゅうに響いた。
     煙草を吸って一息ついていたニコラス・D・ウルフウッドは、物音の大きさに驚き思わずバスルームに向かって声を掛ける。
    「おおいトンガリ、大丈夫か?」
     しかし、一向に返事がない。あの男に限ってそんなことはないとは思うのだが、打ち所でも悪かったのだろうかと牧師は腰を上げた。
    「おい、頭でもぶつけたか? あけるで」
    「わ、わ、ウルフウッド ちょっと待ってくれよ!」
    「今更何恥ずかしがっとんのや。生娘でもあるまいに」
     はは、と声を上げて、ウルフウッドが扉を開けると――。そこには、確かに床に尻をついたヴァッシュがいた。ずぶ濡れで、一糸纏わぬ姿で。それはいい、見慣れているから。
     しかしいつもと違ったのは、何故かヴァッシュの胸部には……たわわな膨らみがあった。ふたつほど。
    「………………?」
     おやあ? とウルフウッドは首を捻る。目を擦ってもう一度。よくよく見れば、胸だけではない。身体はいつもよりもひとまわり細く、腰は括れたラインを描き、どこからどう見ても女性のソレだ。
    「だ、だからちょっと待てって言ったのに……」
     さてこういうときはどういうリアクションが正解なのだろう。胸や股を隠すのもなんだか違うし……でも堂々とするのもなあ。と、ヴァッシュはばつが悪そうに顔を逸らす。うっすらと頬を染めて。
     そんな台風に向かって、牧師は言った。
    「オドレ、ほんまに生娘やったんか……」
     ヴァッシュが6倍の速さで投げた風呂桶が、スコーンと牧師の顎に綺麗にヒットしたが、一体誰が責められよう。

    「はぁ、で。シャワーを捻ったらガスが壊れとって、頭から冷水かぶったら女になってもうた。びっくりして転んだ、と」
    「はい、その通りです。間違いありません」
     とりあえず、自前のルームウェアを着たヴァッシュが、テーブルの対面で真顔でこくこくと頷く。
    「ってそんなアホな言い分信じられるかーッ!」
     バァン! とテーブルを叩く音が響く。しかしヴァッシュも負けてはいない。
    「事実なんだからしょうがないだろ 大体僕が男だって、お前が一番よく知ってるじゃないか」
    「うっ……」と、牧師は口ごもる。そりゃあまあ、しょっちゅう身体の隅々まで触ったり舐めたり観察したり弄ったりしてましたけれども。誰よりもヴァッシュは男だと、知ってはいますけれども――。
    「まあなってもうたモンはしゃあないな。心当たりはあれへんのか」
     うーん、とヴァッシュは記憶を随分遡って、あっと顔を上げた。
    「あっ、そういえば思い当たることがひとつあるよ。昔チャイニーズがたくさんいる集落に行ったとき、そこで若い娘さんが溺れた泉があって。なんでもそこに落ちたら呪……」
     興奮気味に話すヴァッシュの目の前に手を立てて、牧師はストップをかけた。
    「その先は権利的なアレコレに引っかかりそうやからええです」
    「そ、そう……? でもさあ、それだいぶ前なんだよねえ。なんで今頃になって泉の呪いが発動したのかな」
     ふう、と息を吐いて、台風はテーブルにぺたんと倒れこむ。気怠げに濡れ髪を掻き上げると、左耳のピアスと白いうなじがちらりと覗き、そのラインがいつもと違って華奢になっていることに牧師はハッと驚いた。
     あれ……、なんかいつもよりえらい色っぽいことないですか。
     それだけではない。落ち着いてその姿を見てみると、ぶかぶかのスウェットから覗く鎖骨や肩、それに服の間にできた隙間はやたらセクシーで、思わずごくりと喉が鳴った。
     そういえばコイツ、めちゃくちゃスタイル良ぉないか? スウェットの上からでもわかるほど巨乳やし……ええ尻しとるし。
    「ウルフウッド? どうしたんだよ、ぼーっとして」
     熱でもある? と、ヴァッシュがテーブルの上に身を乗り出し、ウルフウッドの額に手を添えた。それがまた、思いのほかほっそりしなやかな手首や指だったものですから――。
    「な、なな、何でもあれへん。とにかく今度その村に行ってみ……」
    「うわっ!」
     ウルフウッドが手を払いのけようとした際、ヴァッシュがバランスを崩した。思わずヴァッシュは目の前の頭に縋りつく。
     柔らかな乳房がぎゅむうと顔に押し付けられ、牧師は固まった。
     なんやろう、これ。メロンかいな。いや、マシュマロ……?
    「ごめんごめん、急に胸ができたもんだから、重くてバランスが狂っちゃって……あれ、ウルフウッド? 鼻血でてるけど大丈夫?」
    「大丈夫や……」
     つとめて冷静にウルフウッドは静かに席を立ち、ベッドの傍においてあったボックスティッシュで鼻血を拭いた。
     あかん。あかんでウルフウッド、性欲くらい我慢できんでどないする。ここはワイが紳士であることを見せ付けたらんと!
     鬼の形相でそう自分に言い聞かせるのだが、ところがどうしたことだろう……。
    「わーっ! パンツとズボンのゴムが切れたァー!」
    「タオル! タオルで隠せ! ブレイクや」
    「わああ転んだァーッ! ご、ごめんウルフウッド、大丈夫?」
    「が、顔面騎乗……て、どないな転び方や……ガクッ」
     泉で溺れたという娘にはドジっ娘属性でもあったのだろうか。ヴァッシュが何か行動を起こすたびに、何故か惜しげもなく肌が晒され、牧師の顔や腕に豊かな胸部や尻が密着し、その度にうるんだアイスグリーンが涙目で申し訳なさそうに見上げてくるのだ。
     その度に牧師は理性と衝動の狭間で闘ったのだが、結局一日ももたずに音を上げた。
    「あかん……このままやとどうにかなってまう! トンガリ、その村行って呪いを解く方が先決や。行き先変更して明日出発するで」
    「えっ、そんなに早く? もう少しゆっくりしてからでも」
    「明日や! 朝イチで出るで」
     そう、一刻も早く呪いを解く必要があった。でないと、こっちの身が持たないのだ。主に下半身のほうの。このままでは、すぐになし崩しに襲ってしまいそうで――。
     もともとそういう関係だし、別にヴァッシュなら平然と受け入れるだろうが、トラブルに便乗しているようで、それは彼のプライドが許さなかった。よくわからない繊細なオトコゴコロである。

     そして翌朝早くに二人はバイクで旅立ち、ヴァッシュの記憶を頼りに、一路チャイニーズの集落を目指した。
    「場所は覚えとるか?」
    「地図には載ってないけどなんとなく。えーと確か名前は呪泉……」
    「あっ、その先はええです」
     途中、岩山で巨大な龍に襲われたり、バイクごと谷底に落ちたり、うっかり惚れ薬を飲んでしまったヴァッシュがウルフウッドに迫って貞操の危機だったり(?)と、さまざまな出来事があったが、どうにか数日で村まで辿り着くことができた。
     二人はすぐさま村の観光協会へ飛び込み、ガイドを雇って、泉へと案内してもらう。
     すると、山合いの中に隠れるように存在している場所には、水が希少なこの星で驚くほど沢山の大小の泉が所狭しと広がっていた。
    「ふわあ、これぜーんぶ水か」
    「水脈が集まるところみたいだね。あっ、確かここだ。ガイドさーん、僕ここに落ちたみたいなんだけど」
    「ああ、お客サン、これはね……」
     声を掛けると、人民服を着たガイドがすぐさま解説してくれた。
     聞けばヴァッシュが落ちた泉は、想い人と結婚の約束をしたのに、結ばれる前に足を滑らせ溺死した悲しい娘の伝承が残るものだった。
    「やっぱりドジっ娘属性があったんやな……」
     ウルフウッドはうんうんと納得している。しかしその横で、ヴァッシュはうーんと首を捻って考え事だ。
    「哀しい話だけど……。でもどうして今頃呪いが発動したんだろう」
     すると、ガイドがこう言った。
    「それはたぶん、アナタに好きな人ができたからだろうネ」
    「ええっ……」
     好きな人とな ヴァッシュの頬が、かああと赤く染まった。
    「なん、オドレその顔……。あっ、赤なっとるで」
     それを見たウルフウッドも、なんだかそわそわしている。
     だって、好きな人ができたっていったら……ねぇ。
    「こっ、これは別に……こっち見るなよ。えっと、じゃあその呪いを解くにはどうしたらいいのかな」
    「それには、二人の恋が成就されないといけないネ。アナタが好きな人と、結婚すればいいヨ。それで呪いはキレイさっぱり解ける筈!」
    「え。え、えええ――っ!」
     するとすぐさま驚くヴァッシュの腰を抱き、ウルフウッドが手を握り締めた。
    「解ったトンガリ。呪いを解くためや、今すぐ結婚しよか」
    「いやちょっと待ってよ! 先にナイブズのとこ行かなきゃ。てえか物事には順序ってもんがあるだろ」
     結婚を前提にするなら、まずは告白して交換日記から。ヴァッシュはそのつもりで言ったのだが、牧師は飛躍して捉えたようで。
    「お兄はんに挨拶やな。よっしゃ」
    「違えよ! 正気に戻ってくれ!」
     ぐぐぐと迫る牧師を押しのけていると。
    「それまでは、とりあえずお湯をかければ男に戻るヨ」
    「「えっ」」
     そんなことで? ぎゅうぎゅうに押し合いへし合いしていた二人が、同時にガイドの顔を見た。

    「言われてみれば、女になってからお湯を浴びてなかったなあ……。そんな簡単なことで男に戻れただなんて」
     だって、冷水のシャワーを浴びた翌朝出立して、ずっと身体を水拭きするだけだったので。お湯なんて、考えもしなかった。
    「けど、それで完全に戻るわけやないんやろ?」
    「闘うには充分さ。女の身体でもいいんだけど、今までと随分バランスが違うから使い勝手が悪くて。とりあえず飯でも食いに行こっか。安心したら腹減っちゃったよ」
     ヴァッシュはうーんと伸びをすると、村の方へと歩き出した。
     ほっとしたような、少し残念なような。牧師が続いて歩き出そうとしたその時だ。慣れないぬかるみに、不覚にも足を取られた。
    「おわああ!」
    「ウ、ウルフウッド」
     水音と水柱を上げて、牧師が小さな泉に頭までどぷんと浸かった。ヴァッシュとガイドが慌てて駆け寄り引き上げたのだが――。
    「げほっ、ごほ。死ぬかと思た……」
    「ウルフウッド……その姿……」
     ずぶ濡れになったウルフウッドは、服の中でちんまり小さくなっていた。具体的に言うと、毛色の濃い、鋭い目つきのハムスターだ。
    「かっ、かあわいいぃ~!」
     胸をきゅううううんと鳴らすヴァッシュが目を輝かせながら、ハムスターを手に乗せ、ぎゅうぎゅう頬を摺り寄せる。
    「こ、これは過去、大切に飼われていたハムスターが、飼い主の女の子が手を滑らせて籠ごと溺れたという伝説の……」
    「もうええわ! やめぇ離せ死ぬ死ぬ潰れる死ぬ! てえかハムスターでも人間の言葉しゃべれるておかしない」
     ガイドの解説もそこそこに、ウルフウッドが全力で逃げ出したのも無理はなかった。
     用意してもらったやかんのお湯をハムスターにかけると、みるみるとその姿は大きくなり、ウルフウッドの姿へと戻った。
    「うわ、本当にお湯で戻るんだね……」
    「色んな要素交じりすぎとちゃうか! てえかここはエロの定番として、ワイがちっこくなるか、女になるかが筋やろ! なぁ」
    「ウルフウッド、誰に話しかけてるんだい? 全裸のままなのに」
     はやく服を着なよ、とヴァッシュがタオルと泉から引き上げて絞った服を渡し、牧師はべしょべしょの濡れスーツに腕を通した。
    「で、結局、オドレの呪いを解くことができたとしてもや、ワイの方はどないしたらええんや。ハムスターの未練なんざ解れへんぞ」
    「うーん、どうしたものかな。まあしょうがないから、ナイブズのとこ行ってから考えよっか」
    「このまま旅を続けるんかああああああい!」
     鋭いツッコミが呪○郷に響き渡ったという。

     そうしてそれからどうしたかと言いますと――。
     砂漠の中を、ヴァッシュはトマに乗って移動していた。荷物にはパニッシャーが括りつけられているが、一人だ。牧師の姿はない。
    「なんだかんだで、慣れるもんだねえ。お互いに」
     ヴァッシュは胸の谷間に向かって、そっと話しかける。すると、胸につくられたコートのスリットから、ハムスターが顔を出した。
    「移動の時はラクでエエな。バイクもトマも運賃も一人分で済むし」
     そう、一刻も早く呪いを解きたいと思っていたのだが、気付けば二人ともいつの間にか上手くこの身体に順応していた。
     確かに女性であったり動物であったりすると、便利なことも多々ある。それに加えて――。
     振動のたびに、ゆさっとヴァッシュの胸が揺れた。ウルフウッドはこの感触がとても気に入っていて、暫くの間はこのままでもまあいいか、なんて僅かに思ったりもしていた。
     ……秘密だけど。
    「ところでなぁ、トンガリ」
     胸の谷間から、ネズミが話しかけた。
    「なにー? ひまわりの種かペレットでもいる?」
    「いや、せやのうて。考えたんやけどな。もし……、もしもやで? 女の姿でエッチしよる最中にお湯かけたら、どうなるんやろうな」
     こないだからずーっと考えとるけど、答えが出えへん。ニコラス・D・ハムスターウッドは真剣な顔でそんな疑問を投げかける。
     ヴァッシュは手綱を引いてトマを止めると、じっとウルフウッドを覗き込んで言った。
    「なあウルフウッド、知ってるかい? ネズミは肛門を縫合すると、ものすごいストレスから共食いし始めるんだって」
     優しい天使の微笑みだった。
    「……ラブ&ピースはどこ行ってん。ちうか何情報やそれ、こっわ!」
     ハムスターウッドが震え上がったのは言うまでもない。

     なんだかおかしなことになってしまったけれど、それはそれで少しだけ楽しい日々。美女とハムスターの旅はもう少し続きそうです。
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