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    sardine57817

    初めましてorこんにちわ。
    いはし(伊橋)と申します。
    こちらでは、かきかけとかかけねえとか、をぽいぽいしています。
    続き書いてとかっていう奇特な人がいらっしゃいましたらこっそり↓まで。
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    sardine57817

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    猪七のバレンタイン。
    七に年上のえ○ちなおねえさんをしてもらおうと思ったのにこのザマです。

    #猪七
    pig7

    『お前、彼女できたらしいからやるよ』
     数時間前、久々に会った幼馴染みから渡された一本のボトルをぼんやり眺めてオレは溜息を吐いた。三つ買うと送料無料だったからとか、これでバレンタイン楽しめよとか、そんなバカ丸出しのことを言っていた気がする。夜通しの任務が終わったのが朝の九時で高専に戻り報告書を提出したのが昼過ぎだった。ようやく帰れると校門に向かって歩いていたところで五条サンに見つかったのが運の尽き。学生に稽古をつけろなんて言うから結局夕方までみっちり付き合ってしまった。その足で飲みに行き、よく考えもせず受け取ってしまって今に至る。こちらの事情を何一つ知らないのに、盛り上がること間違いないなんて言い切る自信は一体どこから来るんだろう。
    「そんなんじゃねーつーのに」
     あれこれ考えるのは明日にしよう、そう思って炬燵に突っ伏した。

     翌朝起きてもやはりそれはあった。そりゃあそうだ、いきなり消えてなくなるものではやい。
     手のひらに収まるサイズの乳白色の容器にチョコのイラストが描かれている。ラベルには赤い文字で“melty lotion”と書いてある。紛うことなきアダルトグッズ。
    「下世話な奴め」
     吐き捨ててみたものの……興味がないわけではない。性欲も好奇心も成人男性並みにあるし、そういうビデオも観たことがないわけではない。何より世間のムードはバレンタイン一色だ、少しくらい羽目を外してもいいのではないか?オレの耳元で悪魔が囁く。嫌がることは恋人には絶対にしたくないし、愛想を尽かされたくない。憧れの人に三行半を突きつけられる未来に生きていたくない。

     バレンタイン当日。この日が別れの日になるのだけは勘弁してほしいと思いつつもやはり好奇心には勝てなかった。鞄の中にボトルの存在を感じながら、七海サンの家に向かう。勿論、ちゃんとしたチョコも用意してある。新田ちゃんに聞いて、今年のトレンドはリサーチ済。「猪野っちがバレンタインっすかー」と冷やかされたが構うものか。

     七海サンが用意してくれた料理は最高だった。バケットにトマトがどっさり載ったブルスケッタに、生ハムとチーズの盛り合わせ、ほうれんそうとクルミのサラダ、血が滴るような焼き具合のローストビーフ、締めの旬の牡蠣を使ったオイルソースパスタ……食べてしまうのが勿体ないくらい全て美味しい。気がつくとボトルが一本空け、持参したウイスキーを俺はソーダで割ってハイボール、七海さんがロックで飲んでいた。
    「ぷはぁ、美味かったっす。ご馳走さまでした」
    「お粗末さまでした」
     猪野君は食べっぷりが良いので作り甲斐がありましたよ、とグラスを傾けながらゆるく微笑む。こんなガキには到底出せない色気を纏う七海サンはやっぱり今日も大人だ。
    「あ、デザートっていうかチョコ買ってきました」
     バレンタインなんで、と付け加えたように重ねる俺はまだまだ尻の青さが残るガキだ。
    「良いですね、いただきましょう」
    「……の、前にちょっとトイレお借りしていいっすか? ちょっと飲み過ぎてしまったみたいなんで」
     俺のリュックに入ってますから!と言い残して席を立つ。冷静に振り返ってみると酔った自分の馬鹿さ加減に呆れる。誰かあの瞬間の俺を殴ってくれ。

     トイレから帰ってくると、テーブルの上を見て仰天した。生チョコ専門店の名前が入った箱の隣りに例のボトルが置いてある。一気に血の気が引く。七海さんはふーっと長い息を吐きながら、
    「食べ物を玩具にするのは感心しませんね」
     と一言だけ。
    「あ、いや、そのっ……」
     酔いはすっかり覚めて、しどろもどろになる。これから話す一切の言葉は言い訳になってしまうだろう。
    「君はいつもこんなものを持ち歩いているのですか」
     七海サンの右手の人差し指が咎めるように、あきれるようにボトルの先端を小突く。
    「違いまっ」
    「それとも、使いたいんですか? これ」
     口早に重ねられた言葉は俺の心を見透かすかのように鋭く刺さった。
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    sardine57817

    CAN’T MAKE五七ドロライ「囲う」用。
    開始20分でなんか違うなって思ってしまったので供養。
     二〇一八年九月。等級不明呪霊による一連の事件で受けた傷の予後観察のため高専に訪れた七海を医務室で待っていたのは家入ではなく五条だった。目隠しを少し上にずらして、手元のコピー用紙を睨んでいる。
    「家入さんは?」
    「その前に確認したいことがあってね」
     人払いをしてまで話したいことはなんだろうと七海が訝しんでいると、これを見ろと言わんばかりにそれを寄越される。虎杖による事件の報告書だ。特級術師でありながら教鞭にも立つ男はこういった添削の作業も仕事の一環である。
    「これ、何?」
    「例の呪霊の無数の手の領域展開のことですか?」
     任務に関するデータは克明に記録しなければならない。実戦で得た経験は文書として提出し、共有される。呪いとの戦いが始まってからずっと変わらない慣習である。
    「そこじゃない、その後だよ。『七海一級術師は戦闘態勢を解いていた』って何?」

    「窮地に立たされたときの人間の行動としては相応しくなかったのかもしれないですね」
    他人事のように言い放つ彼に憤りを感じた。

    「いっそ僕が何もできないように囲ってやろうか」 469

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