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    sumibiyakinoimo

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    sumibiyakinoimo

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    〇〇しないと出られない部屋 No.4

    嫌いにならないと出られない部屋『ジャミルはさ、オーバーブロットした時にオレが嫌いだって散々言ってただろ?だから先に出てくれ』
    『は?』
    『ジャミル一人ならすぐ出られるはずだ。オレは……しばらく考える』
    『しかし……』
    『水もあるし大丈夫だ!な?すぐ出るから』
    背中を押される形で、半ば強引に部屋を出た。

    【相手を嫌いにならないと出られない部屋】

    とんでもない部屋に入ったもんだと思ったら、先程のカリムのセリフ。確かに嫌いだ大嫌いだと散々言って罵った。しかし、これとそれとは話が違うだろ。俺はオーバーブロットした原因で、カリムの場合はそうならないと出られない部屋ってだけで、多少ウソをついても出られるはずだが、変なところで真面目で意地っ張りなカリムは、本当に嫌いにならないといけない、と思っているんだろうな。
    水とキャンディにチョコレート、少しの食料があるとはいえ、やはり心配になる。
    さて、誰に相談しようか。


    【デイヴィス・クルーウェルの場合】

    「で、部屋から出してやりたいと?」
    「水と多少の食料がある事は知っています。しかしカリムの場合、真剣に悩み出すと飲まず食わずになるので……」
    「仔犬、お前がオーバーブロットした原因はなんだ?」
    「カリムですね」
    「分かっているなら心配はない。出てくるのは早いはずだ」
    つまり、同じような事を言うのか?


    【モーゼス・トレインの場合】

    「君の事だから、あの部屋は誰が作り何のために閉じ込められたか予想はついているのだろう?」
    「大体は」
    「ならそう心配はしなくともいい。全く、生徒を困らせてどうする」
    まだ確定ではないのに?


    【アシュトン・バルガスの場合】

    「何でもないことなら、力づくで取り戻せと言えるんだがなぁ」
    「力づくで……」
    「力づくでは無理かと」
    すみません、筋肉では解決しませんね。


    【サムの場合】

    「なるほど?でもオーバーブロットだけが原因じゃないとあの小鬼ちゃんが知らないと思うかい?」
    「え?」
    「嫌いだ、大嫌いだ。それだけなら誰だって口先で軽く言えるんだよ」
    「それはそうですけど……」
    「金ピカの小鬼ちゃんはウソがつけない。だから今頃真面目に考えてる」
    「しかも悩み出すと飲まず食わずになるので」
    「で、早く出す方法はないかと」
    「はい」
    「それを彼が望んでいないと知っているんだろう?」
    サムさんには全てお見通しだった。本当にこの人は何者なんだろう。


    【ディア・クロウリーはカリムといた】

    ジャミルがオーバーブロットしたあの日から、ずっと考えていた事だった。
    オレのせいで実力を発揮してはいけなかったこと。学校から帰れば、オレがすぐ遊ぼうだの話をしようと付きまとっていたのが嫌だったこと。
    あれもこれも、全部イヤだったんだ、とか。
    最終的にはオレという存在がイヤなのでは、と行きついた。が、ジャミルは従者を辞めるつもりはないと言ったもんだから、さらに分からなくなった。よく考えれば分かることなんだ、従者は辞めないが、友達になるつもりはない、と。
    オレはあくまでジャミルの主人である。
    だからと言って、オレはジャミルを嫌いになることはこの先死ぬまでないだろう。
    「ジャミルがオレの世界を広げてくれたんだ……」
    「世界?」
    家庭教師に着いて、いわゆる帝王学を学んでいたオレにとって、街の学校に通うジャミルの話は凄く面白かった。一つの部屋に40人くらいいて、担任の先生がいて。教科によって先生が代わって、休み時間は他のクラスの友達とも遊んだり。給食があったりたまにお弁当になって、遠足もあって。学校の帰りにお菓子を買って食べたり。
    「時々、お土産だってオヤツをくれたんだ。自分が食べて美味しかった物」
    「優しいですねぇ」
    たまに学校で使っている教科書を見せてくれて、今はこれを習っているんだ、面白い先生だとか、あの先生の授業は眠いとか。
    「オレが家庭教師に教えてもらっていたのは国の歴史とか取引先の重要性だったから、普通の勉強の話を聞くのが好きだった」
    もしかしたら、ジャミルは渋々オレに話していたのかもしれないけれど。それでも外を知るきっかけにはなった。
    「でも彼はアジーム君を嫌いだと言ったんですよ?」
    「だからと言って、それはジャミルを嫌いになる理由にはならないんだ」
    あの日以降、ジャミルを少しでも自由にしてやりたくて勉強はリドルやアズールに見てもらったり、時に部活が勉強会になっている。
    「それでもひとつくらいあるでしょう?バイパー君の嫌いな所。それを言えばいいんですよ」
    「うーん……」
    あの日以降も、ご飯を作ってくれて世話もしてくれる。
    「従者だから、ではないんですか?」
    「確かにそうかもしれない。でもジャミルが嫌だと言えばやらなくていいし、それを咎めたりはしない」
    オレに全て尽くす必要などない。自由にしてくれて構わない。それでも朝早くから寝る直前まで身の回りの事をしてくれる。
    「もしそれも仕事なら、それは仕事じゃないからって言ったんだ。でも逆に奪うなって言われた」
    物心つく頃から一緒にいた、唯一の同い年。腹を割って話せるただ一人の人だった。
    そのジャミルの気持ちも知らないで、不満が溜まっているのを気づきもしないで過ごしていたら、そりゃ嫌いになるよな。オレさえいなければって。
    「本当にないんです?バイパー君の嫌いな所」
    「あるとすれば、オレ中心な所かな。もう少し自由にいてくれて構わない」
    「ほら、あるじゃないですか」
    気づいたら自室だった。


    「あれ?」
    「目が覚めたか」
    「学園長と話していたはずなんだけど」
    「何を話していたんだ」
    「それは、秘密だ!」
    学園長の事だから、意地でも言わせたのだろうか。それとも、ない!と言って出てきたんだろうか。まぁどちらにしろ、無事に出られたなら良しとしよう。
    明日はカリムの好物を作ってやるか。
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