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    みつき

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    アズ監♀ ネームレス ※未完成
    悩みがある監督生と相談に乗ってくれる(?)妖精の話
    長くて言い難い名前のキャラを出したかった&シリアスな話に挑戦したけど、🐙の誕生日お祝い文でそれどころじゃないので途中で放置したもの
    一応シリーズの子とは別人設定

    今週全ての授業を終えた監督生が廊下を歩いていた。何とかテストで平均点を取れたことにより、補習を回避出来たのでその足取りは軽い。親分ことグリムはそうはいかなく、現在その真っ最中なのだが。ふたりでひとりの生徒として認められているものの、こういう場合は連帯責任ではなくて正直助かる。勉強嫌いなあの親分を宥めて机に向かわせるのは一苦労なのだ。ふなふな泣いて帰ってくるであろう彼に、今日は労ってツナ缶を増やしてあげよう。もふもふボディに甘い監督生はひとつ頷いて家路を進む。そんな彼女に一際強い突風が巻き起こった。

    「わっ」

     あまりの風量に顔を庇う。流石に吹き飛ばされはしないが、バランスを崩しそうな勢いだ。少しよろけた監督生の耳にクスクスと笑う声が聞こえた。

    「ごめんなさい、はしゃぎすぎてしまったわ」

     その声が女性のもので監督生は驚いた。何せここは男子校。生徒も教師も皆男性だ。一応話す絵画に女性はいるが、生きている人では例外である自分以外にはいないはず。風が収まったので、声が聞こえた方に視線をやると。

    「うふふ。こんにちは、可愛らしいお嬢さん」
    「……妖、精?」

     落ち着いた大人の女性の声とは反対の、監督生よりも幼さを感じさせる顔付きの妖精が宙からこちらを窺っていた。体の大きさはグリムよりも一回り小さく、その背には蝶のような美しい虹色の羽が付いている。羽ばたく度に鱗粉が舞い、陽光に照らされて光輝く様は正に幻想的だ。

    「あら、この羽に見惚れているの?ワタシの自慢だから嬉しいわ」

     声もなくぼんやり見つめる監督生に満更でもないのか、楽しそうにクルリと一回転した。腰まで伸びているプラチナブロンドの髪がそれに合わせて靡いている。

    「お察しの通り、ワタシは妖精よ。ただの妖精じゃなくて、シルトゥレイユという立派な名前もあるのよ」
    「しるてゅれいう?」

     何とも言い難い名前の持ち主である。監督生が繰り返した名前は舌足らずで上手く言えていない。それに気を悪くもせず、妖精ことシルトゥレイユは苦笑した。

    「あー、やっぱりそうなるわよねぇ……ワタシを呼ぶ子たちは皆、一度は失敗するのよ」
    「す、すみません……」
    「気にしてないわ。そうね、それならシルティとでも呼んでちょうだいな」
    「シルティさん」
    「ここでは珍しい、素直で良い子ね。うん、気に入ったわ」

     シルトゥレイユが微笑む。あどけない顔付きだが、その微笑みはどこか色っぽい。大人なのか子供なのか監督生には判断がつかなかった。それ故の敬称付けである。

    「それで、シルティさんはどうしてここに?」

     監督生の脳裏にフェアリーガラの光景が過る。まさか、またなのか。

    「ああ、そうそう。ここには用事があって来たのよ」
    「用事ですか?」
    「用事と言うより、仕事に近いわね」
    「仕事……」
    「ワタシの仕事はね、恋に悩む女の子のお手伝いをすることよ」
    「!」
    「うふふ。どうしてあなたの前に現れたのか、わかったようね?」

     ――そうよ、アナタに会いに来たの。
     妖精はアメシストの瞳を細めて笑った。



    「それで、アナタの思い人はどんな方?」
    「え、と……」

     恥ずかしそうに指を弄る監督生にシルトゥレイユは明るく話しかける。

    「大丈夫よ。お仕事だから誰かに話したりしないし、茶化したりもしないわ。人払いの魔法もかけたし、安心して話してちょうだい」

     シルトゥレイユの優しい語り口に、妖精ではあるが同じ性別の人と話すのはここに来てから久しくもあって、監督生の警戒心がゆっくり溶けていく。
     マブとは言え、男子であるエースとデュースに恋愛相談など気恥ずかしさから出来る筈もなく。要するに監督生は女性に飢えていた。勿論、変な意味はない。シルトゥレイユは恋愛の手伝いをする妖精だと言っていたし、監督生にとっては正に救いの女神である。監督生は意を決して口を開いた。

    「その、ひとつ上の先輩なんですけど。誰よりも努力家で、勉強もなんですけどラウンジも経営してて。隙なんてないくらい完璧なのかと思ったら、可愛いところもある人なんです」
    「あら、ギャップがある人なのね。そういうの、女の子は見たらキュンってするわよねぇ」
    「えへへ、そうなんです。前に飛行術で上手く飛べた時にすごく無邪気に喜んでて。慌てて誤魔化すところも可愛いなって」

     やった!と声を上げるアズールを思い出して監督生の口元が弛む。あの時のアズールをまた見れたら良いなと、監督生は二年との合同授業をひっそり楽しみにしている。授業の手伝いか走り込みしか出来ないために、そこまで飛行術が好きではなかったのだが。随分と現金な人間だと内心苦笑した。

    「その彼はアナタと同じニンゲンなの?」
    「あっ、違います。先輩は人魚です」
    「まあ!種族を超えた恋なのね、素敵だわ!」

     シルトゥレイユは手を叩いてはしゃいでいる。興奮を隠さずに彼女が問いかけた。

    「お嬢さんは彼が人魚だと知っていて好きになったの?それとも後から知ったのかしら?」
    「え、えっと、知ってました」
    「うふふ、尚更素敵!」

     シルトゥレイユの勢いに押される形で監督生が答える。そもそもアズールとの出逢いから恋になるまでは中々の出来事があったわけだが、長くなるし彼の沽券のためにも黙っておこうと決意した。何より興奮した彼女の質問責めが怖いので。

    「それで、今はどんな関係なの?片思い中なのかしら?」
    「そ、それは……」

     桃色に染まっていた頬が赤くなる。途端に歯切れを悪くした監督生に、シルトゥレイユは辛抱強く待った。

    「その、最近」
    「ええ」
    「告白しまして……無事にお付き合い、してます」

     キャア!今日一番の歓声である。シルトゥレイユは大層喜んでいて、祝福のつもりなのか周囲に花びらが舞っている。

    「すごい!すごいわ!アナタって、大人しそうに見えて情熱的なのね!」
    「あはは……」
    「頑張ったわね、告白は誰でも緊張するもの。偉いわ」

     シルトゥレイユの小さな手が監督生の頭を撫でた。優しく労る手のひらに、姉がいたならこんな感じなのだろうかと夢想する。

    「あら?そうしたら、ふたりは両想いってことよね?なら、悩みは別にあるってことかしら」
    「……はい」
    「そんな不安そうな顔をしないで。大丈夫よ、ワタシがアナタの力になるわ」

     監督生の目の前にシルトゥレイユがフワリと寄って来て力強く励ます。

    「……あの人の気持ちがわからないんです。先輩、付き合ってから態度が変わらなくて。もしかして、本当は私のこと、好きじゃないのかなって」

     胸の中で燻り続けている不安を話していく内に、涙が滲んできて目を押さえる。告白を受け入れてくれただけで飛び上がるほど嬉しかったはずなのに、今では彼と会うのが怖くて仕方がない。いつ別れを告げられるのかと見えない不安に押し潰されそうだった。

    「アナタは、彼の気持ちが知りたいのね」
    「は、い」
    「わかったわ。アナタのその悩み、このシルトゥレイユが解決しましょう」

    「だけど、それにはアナタの覚悟も必要よ」
    「覚悟?」
    「ええ。……ちょうど、王子様も来たようだし」

     王子様。その言葉に誰なのかを察した監督生がパッと顔を上げる。


    【省略】


    「……また厄介事を持ってきたな、子犬」

     担任であるクルーウェルが深くため息をつく。それにますます体を縮こませて監督生は項垂れた。

    「こういう事案は面倒でな。他人が手を出すと余計にややこしくなる」
    「…………すみません」
    「いいか、よく聞け子犬」

     ピシャリ。鞭を手のひらに軽く叩いて注意を促した。

    「出される試練は基本、無理難題かと思わせるが決して不可能ではないのが多い」
    「……魔法が使えない私でもですか?」
    「そうだ。この類いの妖精は、その者の力量に合わせた試練を出す。お前でもやろうと思えば達成出来るだろう」
    「それなら、」
    「だが、そう優しくもないのも確かだ。受けるのであれば、相応の覚悟をしてから行け」
    「……受けないと言う選択肢もあるんですね」
    「ああ」
    「それだとどうなるんですか?」
    「両者共に、その元である感情を奪われることになる。ある意味、どちらを選んでも悩みは消えると言えるな」
    「…………」
    「特別講義は以上だ。どうするかはお前が決めろ」
    「……はい。ありがとうございました、クルーウェル先生」
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    みつき

    MOURNINGアズ監♀ ネームレス ※未完成
    悩みがある監督生と相談に乗ってくれる(?)妖精の話
    長くて言い難い名前のキャラを出したかった&シリアスな話に挑戦したけど、🐙の誕生日お祝い文でそれどころじゃないので途中で放置したもの
    一応シリーズの子とは別人設定
    今週全ての授業を終えた監督生が廊下を歩いていた。何とかテストで平均点を取れたことにより、補習を回避出来たのでその足取りは軽い。親分ことグリムはそうはいかなく、現在その真っ最中なのだが。ふたりでひとりの生徒として認められているものの、こういう場合は連帯責任ではなくて正直助かる。勉強嫌いなあの親分を宥めて机に向かわせるのは一苦労なのだ。ふなふな泣いて帰ってくるであろう彼に、今日は労ってツナ缶を増やしてあげよう。もふもふボディに甘い監督生はひとつ頷いて家路を進む。そんな彼女に一際強い突風が巻き起こった。

    「わっ」

     あまりの風量に顔を庇う。流石に吹き飛ばされはしないが、バランスを崩しそうな勢いだ。少しよろけた監督生の耳にクスクスと笑う声が聞こえた。

    「ごめんなさい、はしゃぎすぎてしまったわ」

     その声が女性のもので監督生は驚いた。何せここは男子校。生徒も教師も皆男性だ。一応話す絵画に女性はいるが、生きている人では例外である自分以外にはいないはず。風が収まったので、声が聞こえた方に視線をやると。

    「うふふ。こんにちは、可愛らしいお嬢さん」
    「……妖、精?」

     落ち着いた大人の女性の 3461

    みつき

    MOURNING幼児化アズ監♀ ネームレス
    ボツ程ではないけど、なんだか納得出来なかったので供養
    「わああああ!!!ジェイドぉぉ!フロイドぉぉ!!!」

     閉店後の静かなラウンジに子供の悲痛な泣き声が響いて、呼ばれた双子は顔を見合わせた。監督生がアズールではなく、自分たちを呼ぶなど珍しい。あの子供はアズールに大層懐いているので、何かあればアズール、アズールとひっきりなしに彼を呼ぶ。……彼の身に何かあった、ということか。同じことを考えた双子はすぐさま踵を返し、彼女の声の元へその長い脚で駆けていく。おそらく発生源は客席だ。その予感は当たり、そこに監督生がしゃがみこんでいた。

    「どうしました!?」
    「どうしたの!?」

     大きな音を立てて入ってきた双子を認識した監督生が振り向いた。絶望を顔に浮かべ、大粒の涙を溢しながら大水槽へ指を指す。彼女の普段とはかけ離れたその様子を見た彼らは、その事態が大事だと察し内心冷や汗をかきながら指された大水槽を見やる。

    「…………ッ」

     そこには人魚の姿をしたアズールが漂っているだけで。彼は何かに襲われているわけでもないし、怪我も見られない。……ただ、酷く傷付いた表情を浮かべてはいたが。その理由に、すぐ双子は気が付いた。
     アズールは自身の人魚としての 1515

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