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    ak_99904

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    ak_99904

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    以前べったーに投稿した、幼なじみ☁️×未亡人☔️【https://privatter.net/p/7168264】よりも昔の話。あの方(旦那)×☔️の出会い~婚姻までの話です。一度ポイピクを使ってみたかったのと、気分転換に途中ですが上げてあります。
    ゆくゆくは、あのさみの初夜へと続きます。(そのはず……そのはず…………)

    自分はしがない文字書きであった。
    若い頃は兼業で細々と執筆をしてきたが、賞を貰ったことをきっかけに気づけば「先生」と呼ばれるようになり、世に出した著作の数も増えていた。有り難いことに著作は受け入れられ、ペンだけで食べていけるだけの収入を得られている。
    そして周りから「ベテラン」と呼ばれるようになった今、気づけばペンを握る手には皺が増え、両親をはじめ親しかった知人友人も何人か見送る齢となった。
    不思議なことに、年をとるとどこかに根を下ろしたくなるもので、数年前今までほったらかしにしていた生家に戻り、今も仕事場兼住居として使っている。
    都会から新幹線と電車を乗り継ぎ、窓の外の建築物が少なくなるまで揺られること数時間。最寄りの無人駅に立った担当の編集者は、顔を引きつらせていた。苦労をかけることを申し訳なく思いながらも、相手方の「ネット環境があればなんとでもなりますから!」という言葉に甘え、私の田舎暮らしは着々と現実味を帯びてきた。
    今後は片田舎の古い家で文字を書き、そして一人で死んでいくのかと思っていた人生にある転機が訪れた。
    文字を書くこと以外取り柄のない自分の元に、嫁いできてくれた人がいたのだ。
    親ほど歳の離れた自分の元に嫁いで来てくれた青年、五月雨は私には不釣り合いなほど若く、そして美しい人だった。



    彼はまだ私が都心にいたころに通っていた、古本屋のアルバイトだった。私の著作を読んでくれていたようで、顔見知りになってきた頃に彼から遠慮がちに声をかけてきてくれたのがきっかけだ。
    当時まだ大学生だったのだが、私がイメージする若者とはどこかかけはなれていて、年が随分離れているのにも関わらず不思議と話が合った。聞けば、俳句に魅せられていたらしく学業やアルバイトの傍ら、詠んだ歌を雑誌に投稿しているようだ。彼に対する親近感は、自分の若い頃を思い出したからかもしれない。分野は違えど、同じ言葉を愛する者同士。時には取材と称して喫茶店で雑談に応じてもらったり、逆に彼のレポートの資料になる本を貸したりした。仕事仲間でもなければ、友人のような気さくさとも違う。その不思議な距離感が心地よく、時間が許す限り私の足は彼の勤める古本屋に向いていた。
    思えば、あの頃の私は年甲斐もなく浮かれていたのだろう。出先で彼の好みそうな菓子を見つければ購入し、大学のレポートや研究に役立ちそうな書籍があれば紹介した。その度に恐縮させてしまうのが申し訳なかったが、彼は嬉しそうに受け取ってくれるのだ。浮かれるな、という方が難しい。その果てに担当者から「なんだか最近、先生楽しそうですね」とにやにやと言われてしまうほどだったのだから、相当のものだったのだろうと今では少し反省している。

    しかしこの頃、私は田舎へ移る計画を本格的に進めており、彼との関係もここまでかと内心とても残念に思っていたところだった。
    移り住む家の修理と諸々の手続きを済ませ、最後の挨拶にと古本屋へ向かった。田舎へ戻ること、今までの感謝、そしてダメ元で文通を申し込んだところ、なんと交際を申し込まれたのだ。
    『先生のことを、恋愛的な意味でお慕いしております。どうか、私と、お付き合いをして下さいませんか』
    思いもよらなかった返事に、随分と間抜けな顔を晒したものだ。彼の人生を思えば、こんな老いぼれにうつつを抜かすなと突き放すのが良かったのだろう。しかし想いを伝えてくれた彼の顔を見れば、そんな言葉など意味がないと分かってしまった。
    私が頷いた時の、あの表情は一生忘れないだろう。
    言葉を生業にする私だが、彼の表情を上手く言葉にすることはできなかった。
    そこから彼が大学を卒業するまでの2年間、私たちの穏やかな交際が始まった。文通を交わし、時には旅行にも行った。丁度その頃から彼の名前を若手の俳人として聞くようにもなっており、私もその活躍を喜ばしく思っていた。そして本格的にデビューが決まった大学4年の春、私もある決断を出した。
    彼に、五月雨に婚約を申し込んだのだ。
    悩みに悩み切り出した婚約だったが、なんと私の最悪の予想を裏切り、彼は涙ながらに受け入れてくれた。緊張感からの解放と、嬉しさに思わず私まで涙してしまったのは、彼と私の二人だけの秘密だ。

    それから1年があっという間に過ぎ、彼は晴れて大学を卒業し俳人としての一歩を歩み出し、私と籍を入れてくれた。
    こうして家族になった私たちは、それを機に一緒に住むことになったのだ。

    そして今日が彼が家へ越してくる日だった。

    着いて早々、役所での手続きに近所への挨拶、私が世話になっている担当者にも紹介したため、今日は1日知らない顔に囲まれていたのだ。知らない人と話すのは疲れるだろうに、そんな表情など全く見せず全員に丁寧に接していた。
    やっと家に帰って落ち着いたのは夕方近くなってからだ。引越祝いにと出前を取った寿司を食べ、順番に風呂を済ませてしまえば外はすっかり夜の色。
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