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    hiromu_mix

    ちょっと使ってみようと思います。
    短めの文章はこっちに投げます。

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    hiromu_mix

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    ワーパレ。
    ファ切で20「愚かで愛おしいあなた」虚勢を張って/痛くても/信じて

    エロくならなかったので自分でびっくりしてる。

    はじめてをぜんぶ何故かそのときは、いましかねえって、思ったんだ。

    明日は事務所の空調整備で事務所を一日閉鎖するからみんな揃って休みだって、ちょっと浮かれた気分でみんなで飲みに行った帰り道。いつもなら同じ方向の天喰先輩が、休みだから実家に帰るんだと駅のほうに行ってしまって、俺は、ファットと二人きり。せっかくやし二人で二次会する?って言われたので頷けば、近くの店はどこも満席だって言われて、じゃあ俺んちで飲もうって、ファットんち。

    こんなにも条件がそろうことなんてあるのかなって、俺は。ぶるぶる震える唇を、悟られないようにグラスに押し付け、その中の冷たくて甘い液体を喉に落とす。ファットが作ってくれたコークハイは多分、店のそれより少し薄かったけど、それでもこれから自分がしようとしてることを考えるだけでくらくらと、酔いが回るような気がした。ソファがあるけどファット仕様でデカすぎるから、俺は床の、毛足の長いラグの上に直接座ってソファを背もたれに、ぼうっと視線だけテレビに向けていた。深夜のお笑い番組は、俺の知らない芸人が映ってて、ソファに座ったファットがそれ見て少しだけ笑っている。普段はぽよぽよと柔らかそうな脚なのに、今日の日中に事件解決したせいで低脂肪になったファットの、筋肉質な太い脚が俺のすぐ横に投げ出されてて、俺の心臓はずっと、どくどくと走りっぱなしだ。この膝に頭を傾けたら。ファットは、どんな反応するんだろ。
    「切島くん?」
    「は、はい?」
    ハッと顔を上げれば、ファットの大きな手が俺の手からグラスをひょいと持ち上げた。
    「空やけど、まだ飲む?」
    「あ、は、ハイ」
    自分でやります、って勢い良く立ち上がったら、くらりと眩暈。何かに手を付こうと伸ばした手が、そのままぐいと引かれてファットの膝の上に俺は倒れ込んだ。
    「おん、ごめん、倒れそうやったから」
    「あ、いえ、っ」
    がばと顔を上げれば、俺の覗き込む蜂蜜色の綺麗な瞳とぶつかった。こんな触れ合いをしても、これっぽっちも揺るがないいつもの明るい色に、ほんの少しだけ心がつきんと痛んだ。俺は、一人でこんなにもドキドキして、動揺して、緊張して。分かってんだ。この人は、俺をそんな目で見ちゃいないってことくらい。だけど。
    だけど。
    俺は、倒れ込んだ膝の上から、そのまま少しだけ、ファットに顔を寄せる。今日が低脂肪で良かった、普段のこの人じゃ俺が膝に乗ったところで、くちびるまでまともにたどり着かない。
    「……っ!?」
    驚きに、ファットの目が丸くなる。それを視界の端に感じながら、俺は、角度を変えて何度か、ついばむように口付けた。初めてのキス。けれどそんなことを感じさせないようにって、慣れてるふりで虚勢を張って、俺は舌先を伸ばすと、必死に柔らかな粘膜にそれを擦り付ける。ファットは、拒まなかったけれど、けれどその手が俺の身体に回されることはなく。どこか切なくなってくちびるを離したら、ひどく困った顔のファットが居たので、俺は俯き、目を伏せ、己の恋の終わりを覚悟する。心がどんなに痛くても、大丈夫。このキスが拒まれなかっただけで俺は。このまま酔ったふりをして、寝たふりでもして、無かったことにしてしまえばいいと。
    「切島くん」
    落ち着いた声。は、と額にかかった吐息が少し湿ってて、温かった。
    「君は、酔ったら誰とでもこんなことするん?」
    ハッと俺は顔を上げる。ファットとしっかり目が合って、酔った振りできねえじゃんかと気付くがもう遅い。咄嗟に膝から降りようとしたらさっきはこれっぽっちも触れなかったはずの太い腕が、逃がさないって言うみたいに俺の身体に絡んだ。
    「こういうこと、慣れてんの?……君のこと、俺、高1のころから知っとるけど、付き合ってる人ォいたなんて聞いてへんよ」
    「え、っと」
    「もしかして、コッチも経験済みとか言わん、よね」
    ぐり、とファットの太い指が俺の、尻の割れ目の付け根あたりを撫でるから。俺の身体が勝手にビクンと跳ねた。経験なんて、無い。けど、ファットを思って、想像して、後ろで遊ぶのはすっかり癖になってた。
    「うわ、ええ反応」
    面白がってるような、からかいのような。どこか蔑んだ声に胸が痛む。違う、違う、ゆるゆると横に首を振ると、ファットは少しだけ腕の力を緩めた。それでも緩く拘束されたまま、コツ、と俺の頭の上に、ファットの顎が乗る。
    「――ごめん、俺、嫌な言い方したな、今」
    どう返事をしていいか分からず、もう一度首を振れば、頭のてっぺんあたりに暖かなものが触れ、ちゅっとリップ音がしたのでかっと頬が熱くなる。え?いま、ファットが、俺の頭に。
    「切島くん」
    真面目な声に、俺はその腕の中で固まった。期待半分、でも怖いのも半分。逃げ出したい気持ちをぐっと堪える。
    「君が……別に経験済みでも、なんでもええねん。けど、もっと、キスしてもええかな」
    反射的に、目を伏せた。顎を上げ、少し突き出した俺の唇に、ファットのそれが重なる。ぬるりとおれのよりずっと大きな舌が唇の上を撫で、空いた隙間から差し込まれて、震える舌先に触れられたらなんかもう。気持ちいいとか、嬉しいとか、そういう次元じゃない感覚が全身を駆け巡って、背中にぞくぞくと震えが走る。そうやって未知の感覚に戸惑う間にも、だんだん遠慮が無くなって来たファットの舌が俺の口の中を探り、誰にも触れられたことの内容な場所を撫でるから。俺は、溺れたみたいに苦しくて、どうやって息したらいいかも分かんなくて。ファットの太い首に腕を回して縋った。フハ、と唇が離れる。急に入ってきた酸素に俺は思わず咽た。
    「切島くん、だいじょぶ?」
    「は、は、ぁい」
    「もしかして……ほんまは、慣れてへん?」
    「そう、っスよ、っていうか、さっき初めて、キスしましたし」
    「えええええ」
    天井を仰ぐみたいに、ぼすんとファットがソファの背もたれに頭を乗せた。
    「えええええええ……嘘やん」
    「嘘じゃないっス!信じてください」
    「あ、そうやなくて」
    ゆっくり体を起こしたファットは、ぶるぶると頭を振る。
    「嘘やろ、え?今のキス、初めてなん」
    「初めて、です」
    「え、えっちは?」
    「したことないっス!」
    えええええええ、と、ひたすら「え」を叫ぶだけの機械みたいになったファットに、俺は思わず笑った。笑われた、と拗ねた声を出すファットの頬を、そろりと手を伸ばして撫でた。

    「ファット、良かったら全部……俺の、初めて、貰ってください」
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