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    hiromu_mix

    ちょっと使ってみようと思います。
    短めの文章はこっちに投げます。

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    hiromu_mix

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    ワーパレ。
    ファ切で、10「目論見通り召し上がれ」 期待の滲む/空気に触れて/暴かれたい

    致すまでは書いてないけど雰囲気はエチに書けたかな。

    全部ぶちまけてきっかけは、多分何でもよかったんだと思うけど。

    少し酔っぱらって、しっかりと理性と言う名の栓をしていたはずが、それが緩んでいたせいかもしれない。見上げたファットガムが、同じく酔っぱらって、機嫌良さそうにふわふわ歩いていたからかもしれない。
    そうやって、なんとなく互いに黙り込んだまま、飲み会の帰り道、ふたりでとぼとぼと繁華街を歩いていたその先に、そういうことをするためのホテルが見えて。多分それが満室だったら、心の中で、何考えてんだ馬鹿だなって、笑い飛ばして終わったことだったのかもしれない。けど、こんな休前日の夜11時に、まさか空室の緑色の光が見えるなんて思いもせず。
    「わ、めずらし」
    そう、ファットガムが呟くのが、聞こえた。その瞬間、この人も、俺と同じものを見てる、って思って。
    「入ってみます?」
    切島はつい、そう口走っていた。
    切島とファットガムは付き合ってはいない。どこか互いの好意を感じつつも、年齢差や立場の差で踏み出せないまま仕事に終われ、気付けば切島が就職してから5年経っていた。天喰が独立し、いまやファットガム事務所は、ファットガムが所長なのはそのままだが、切島は副所長になり、ツートップのように扱われている。あんなに、二人の間に立ちはだかっているように感じた壁が、少しずつ、曖昧になって。
    「切島くん、入ったことないんやっけ?」
    「前に入ったことありますよ、張り込みで、ですけど」
    「ああ、そうやったな」
    フハ、とファットガムは笑う。その時の捜査ではファットガムは一緒ではなかったので、切島は別のヒーローとラブホテルに入ったのだ。その時は、物珍しさと、周囲から聞こえるあられもない声に、なんだか居たたまれない気分になったのを思い出して、切島は自分でもくすりと笑う。ああ、何言ってんだろ。
    「冗談で」「んじゃ、入ろか」
    切島の言葉を遮るように、ファットガムがそう言ったので切島はぎょっとして顔を上げた。ファットガムはにやんと笑って、まあええんやない?と肩を竦める。
    「今日のファットさん、低脂肪やし、入れるんちゃう?」
    「は、はあ……そうですね」
    「これも経験やろ、よっし、潜入や!」
    あ、これはそういう感じじゃないよな、って。ちょっと残念なようなホッとしたような不思議な気分でホテルのドアをくぐった。空室、と出てはいたけれど、やはり休前日。ぽつんと光が灯っていたのは、多分一番広そうな部屋、一つだけ。
    「おっきそうな部屋やん、ちょうどええわ」
    躊躇もなくファットガムはボタンを押した。少しガタゴトと音がして、カードキーがにょきりと出てくる。そういえば、以前はお膳立てされた部屋に潜入したので、こういう手続きはなかった。こんな感じなのかと切島は思わず見入る。
    「お金は払わないんスね」
    「あー、ホテルによるけど。ここはセルフで部屋で会計っぽいな」
    ファットガムは慣れた様子ですたすたと歩き、エレベーターのボタンを押す。すぐに開いた小さな箱は、ファットガムの大きな身体を突っ込むと切島の入るスペースはほとんどなく。ファットガムが冗談めかした顔で手を広げるので、仕方なくその中に収まった。ぎゅ、と抱きしめられる。背中で、ドアが閉まる音が聞こえた。ゆっくりと、振動もなくエレベーターが上がっていく。高脂肪状態のファットガムには、触れたり抱きしめられたりすることは結構あった、のに。頬に当たるファットガムの胸は、弾力があって、ただ柔らかいだけじゃなくて。その奥から、とく、とく、と少し早い心臓の音がしてどきりとする。離れようとしても、狭くて身動きが取れないので、少し首を動かし、頬を浮かすくらいが限界。けど、腕や触れるところから伝わる熱が。
    「ラブホテルのエレベーターが狭いんは、雰囲気作りやってよく言うけどな」
    これ確かにアカンかも、とファットガムの呟きが聞こえて。そろりと首を上に向ければ、蜂蜜色の瞳が熱っぽくて。期待の滲む色。ぞく、とした。チン、とレトロな音と共にエレベーターが開いたので、なだれ込むように廊下に出て。チカチカ点滅する部屋の、ドアに飛び込んだらもう駄目だった。
    ファットガムの腕が、切島を抱き上げ。逃がさないみたいに抱きしめられた。背後で、バタンとドアの閉まる音。それと同時に切島も首を痛いほど上に向けて、降りてきた唇を受けとめた。触れて、離れて、また触れて。切島が拒んでいないことを確かめるように、探るように何度かそれは触れると、それからぬるりと舌先が唇の腕を撫でたので、切島は口を開けた。ごちそうを食べるときに溢れるのと同じくらいの唾液が舌と一緒にとろ、と口の中に零れてきて。溺れそう、って思った。必死に嚥下し、舌を絡める。柔らかくて暖かな、ちょっと日本酒の味がする舌が切島の口の中を探り、上顎を撫でる。んう、と鼻から甘ったるい声が漏れた。びく、とファットガムの大きな身体が震える。
    ファットガムは切島を抱きかかえたまま、唇を離すこともなく部屋に入り、ベッドに座った。ファットガムの膝の上で、足からひとつずつ、ファットガムが靴を脱がして。膝立ちでくちづけを続けていれば、大きな手がするりとコートを落とし、ニットの裾に滑り込んできて。エアコンの効きが悪いのか、晒された肌が少し冷えた空気に触れて粟立つ。いや、多分、寒いだけじゃないんだけど。
    互いに、なにひとつ喋らずに。肌と粘膜を触れ合わせることに夢中になった。気付けば上半身を覆う布はすべて剥がされ、ベッドに押し倒された。全然、部屋の内装なんて見てなくって、やっと視界に入ったのはゴシックっぽい深緑の天井の壁紙と、少しカバーが汚れたシーリングライトだけ。あとは、ファットガムでいっぱいだ。
    片時も離れたくないっていうみたいに、覆いかぶさって、肌を触れ合わせ、唇を合わせた。なにもかもが柔らかくて暖かくて、気持ち良くて蕩けそう。ぼうっとなすがままにされていれば、ファットガムが顔を上げ、困ったように顔を顰めた。
    「アカン」
    「なに、が」
    「一生、手ェ出すつもり、無かったのに」
    何をいまさら、と思った。もう、俺たちはいま、互いの身体を触れ合わせてしまったのに。
    「なら――やめます?」
    否定の言葉を待つように、わかっててそう言った。けど、絶対やめへん、と即答されたので思わず切島は吹き出す。ファットガムはけれど、もごもごと自分の口の中で舌を泳がせ。ゆる、と首を横に振る。
    「けど、こんなおっさんに捉まったらアカンのにって、まだ思ったり、は、する」
    「多分、俺、最初っからファットに捉まってます」
    「ええ、ほんまごめん」
    「なんで謝るんですか」
    「どこがええねん、こんなおっさんの」
    全部、と呟いたら、ファットガムの唇がまた、そろりと触れた。手を伸ばし、頬に触れたら、あっつくて。
    「照れました?」
    口付けの合間にそう聞いたら、そら照れるわ、と拗ねたような声。
    「君……思ったより、はっきり言うんやね」
    「もう言っていいなら、今まで言えなかった分たくさん言いたいっス」
    好きです、全部。ファットが好き。
    そう囁けば、ファットガムはもうええからと言うみたいに、溺れるような口付けをくれた。


    全部、暴かれたい。
    今まで栓をしてた、俺の、心の中を全部、ぶちまけて。
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