アンタレス ナイトウォーク 序 夜の繁華街を歩くことに慣れた足取りだった。
それが切島鋭児郎に対し、ファットガムが最初に感心した点だった。
死穢八斎會の一件を経て中断し、冬に再開されたインターン。夜間パトロールに彼を伴う機会が増えると、その印象は確信に変わる。見知らぬ路地裏に踏み込む度胸があり、くだを巻く酔っぱらいのいなし方も上手かった。客引きの声に動揺することも無ければ、チンピラのいざこざにも物怖じせず割って入れる。煌びやかな水商売の女性たちから声をかけられても、緊張せず、やに下がりもせず自然体で接していた。
――珍しいんちゃうか。雄英っちゅうと、マジメなええとこの子が多いし。
先に採用した天喰がとにかくあがり症の小心者だったので、余計にその印象が強かったのかもしれない。彼の場合は繁華街に慣れるだけで半年を要した。とはいえ切島は見た目にそぐわぬ真面目な体育会系で、やんちゃをしていた様子もない。
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