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    hiromu_mix

    ちょっと使ってみようと思います。
    短めの文章はこっちに投げます。

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    hiromu_mix

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    ワーパレ。
    ファ切で、18「大きさの違う手」従順に / しっかり / 縋るように
    ファと、成長した切の手のひらサイズは今よりも近付いているだろうけど、それでも全然追いつかない話。

    てのひらとキス今日も一日終わったなって、ヒーロースーツのパーツを丁寧に外しながら、切島は事務所の自分のロッカーにそれを置いていく。アームカバーは持って帰って洗って、明日はスペアのほうをもってこよう。ぶつぶつ確認しながら洗い物はエコバックに仕舞い、ぱたん、とロッカーを閉じた。ふ、と大きく息を吐く。今日はまだ、そこまで遅い時間ではない。定時は過ぎたけど、それでも今日は平和な一日だった。あと少ししたら入れ替わりで天喰が来るはずで、彼は今夜の夜警担当だ。
    「――先輩に挨拶したら帰るかなァ」
    ファットガムはまだ事務所のほうに居るはずだ。今日の夜警は人が足りないからと、日勤だったのにこのまま残るらしい。そういう無茶を、天喰や切島にはさせないくせに。かといって、それに口出しできるほどの関係でもないからもどかしい。

    ファットガムにもし、恋人、とかいるのなら。
    そのひとなら、「早く帰ってきて、無理しないで」とか言えるのかな、なんて。

    チリと胸が焼ける。何考えてんだって首を振り、切島はため息を一つ。ボディバッグを肩に掛け、エコバックを手に下げてロッカールームを出ようとして、ふと。床にぽつんと落ちるものに気付いた。ヒーロースーツのグローブだ。
    ――ファットの
    ベンチの影になって見えなかったのか。近付き、拾い上げる。大きくて、切島の手がまるで幼子の手のように見えた。なんとなく、それを嵌めてみた。思ったより柔らかい素材だけれど、ぶかぶかどころか、まともに指が入らなくて少し笑った。なんだこれ、すげえ、デカい。
    あの大きな手に、抱えられたことはある。でも、ちゃんと触れてみた事はない。あの手に、触れてみたい、と思う。個性のせいか柔らそうなあの手のひらに、触れて、くちづけて。無意識にそろりと、グローブに口付けていた。皮と汗が混じるような匂いに、ファットガムの、どこか甘いような香りが。
    「――切島くん?」
    ビクン、と跳ねるように切島は顔を上げた。ファットガムが、こちらを見ている。見られた、と思った。己の手に嵌めたままのグローブも、寄せた唇も、誤魔化しようもなく。
    「あ……」
    「あー……」
    ファットガムは、気まずげに苦笑すると、そこにあったんやね、と言った。確かにその手にグローブははまっていなくて、珍しく素の、思いのほか白い肌が見える。
    「は、い――す、すみません、これ」
    切島はそろと手からグローブを外し、両手で掴んで差し出した。どくどくと鼓動が早い。悪いことをして、怒られる前の、子どものような気分。いや、怒られるくらいならまだましだ。軽蔑され、避けられたら。背中を嫌な汗が伝った。俯いたままそれを差し出していても、一向に受け取る気配がない。切島の唇が触れたグローブなんて嫌かな。嫌かもな。ああ、どうしたらいいんだろう。弁償して、新しいものを?切島は唇を噛み、がばとかを上げるとやけに近くにファットガムが居たので驚いた。
    「あ、ふぁ、っと」
    一歩、後退った。ファットガムの苦笑がさらに深くなる。
    「怯えんといて……切島くん」
    ファットガムの手が伸び、する、と切島の手からグローブを取り上げた。そのまま、ぽいとベンチの上に放る。それを絶望的な気分で見ていれば、ファットガムがくすりと笑った。
    「なんて顔してんねん」
    「あ、だ、だ、って」
    ごめんなさい、と頭を下げる。怖かった。大好きな人の口から、拒絶や罵りの言葉を聞くのは。ぎゅっと目を閉じた。
    「切島くん」
    ポン、と頭の上に手が置かれる。それは、少し乱暴にぐしゃぐしゃと切島の頭を撫でた。
    「俺も、ちょっとびっくりして、なんていうたらええか分からんのやけど」
    えっと、とファットガムは続け。
    「俺の、グローブ……大分、デカいんやね」
    そう、柔らかな声で言った。切島は戸惑いつつも、うん、と頷く。
    「君の手も、ハタチ過ぎて結構デカくなったのにな」
    「そうですけど、でも全然身長も体重も、何一つ追いつかねえし」
    「ハハ!身長はともかく、切島くんがぽよんぽよんは想像できひんなァ」
    そのまんまでええよ、と言って。頭の上じゃないほうの手が、つ、と切島の手の甲を指でなぞる。ぞく、として、切島は驚いて顔を上げた。怒っては、無かった。なんだか不思議な顔をしているファットガムを見つめる。頬が緩んで、優し気なのに、困ったような、嬉しそうな、いろんなものが混じったような顔。
    「手、ェ、かして」
    膝を折ったファットガムが、切島の目線に合わせるように顔を覗き込む。それから、まるで宣誓するときみたいに片手を上げた。その手のひらに、吸いこまれていくように、切島は自分の手のひらを重ねる。柔らかくて暖かな肌が、触れ合って。きゅっと、握られた。にぎにぎと握られていると、少しばかり照れ臭い。
    「あ、の……?」
    「手ェちっさいなあ、ほんま」
    「ファットがデカいんすよ」
    「そぉか」
    ファットガムは、なあ、とさっきより甘ったるく感じる声で囁いた。
    「君が、俺のグローブにしてたような、こと、俺も君にしてもええ?」
    「え?」
    「したい」
    握られたままの手はそのままに、目線の高さを合わせていたファットガムの顔が近付く。切島はまるでそうするように教えられたみたいに従順に目を閉じた。ふわ、と少し濡れたような柔らかいものが触れて。すぐ離れる。至近距離でにやんとファットガムは笑った。
    「これで、おあいこや」
    そうか?と思うが、あれこれ考えられるほど切島の思考回路は回ってない。今は、必死にこの行為の意味を考えることしかできなかった。これは、なんだ?っていうか、いや、え?今のは、だって。
    「キス、しましたよね」
    思わずそう口に出せば、フハ、とファットガムが吹き出す。
    「そうやね」
    「え?なんで」
    「なんでやと思う?」
    なぞかけのようなやり取り。けれどしっかりと手は繋がれたままだ。
    「ゆっくり考えたらええよ」
    頬に、手が触れた。また近付いてきた唇に、切島は目を伏せて。縋るようにファットガムの肘のあたりを、強く掴んだ。
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