匂い3***
茨の体を洗って、あたらしい服を着せてやって、リビングに座らせた。互いに黙っていた。屋敷の向こうで鳥の羽ばたきが聞こえる。森が揺れるように震えた。
「記憶操作、していたんですね」
茨はうつむいたまま、ちいさく、はっきりいう。すべて思い出したのだろうか。茨の心の傷が心配だった。
「……うん、茨を守るために」
茨に触れたかった。けれどそれは躊躇われる。許されるかわからない、茨の記憶操作をしたのは私の勝手の押し付けだった。
「俺のために……閣下に迷惑をかけた」
「……迷惑だなんて」
「俺はあなたの傍にいるべきではない」
茨は顔を上げて私を見た。
「別れましょう、閣下。互いのために」
「……茨」
「一人で生きます。俺は最初から、孤独に生きる運命にあったんです」
絶望と幸福が綯交ぜになったような海色だった。この屋敷での日々が思い出される。茨を救うために騙して、嘘の安寧でコーティングした日々。
「さようなら。息災に。俺の世話をしなければ、閣下は早く恢復するでしょう?」
「……そんなの」
「こんな壊れた俺に付き合う必要はないですよ。あなたへの罪が、消えるわけでもない」
「……私は茨が心配だから、そばにいた……」
私の伸ばしかけた手を茨は拾って、そっと両手で包んだ。
「心配しないでください。生きることが、贖罪ですから」
森が揺れる。赤い薔薇が舞いあがる。
そんな苦しそうな表情を、させるためではなかったはずなのに。
Request
1000日目おめでとうございます!!いつも日々の疲れを癒してくれる素敵な小説をありがとうございます😭💕ホントに大好きです🙏💖
閣下大好き♡(無自覚)な茨が、無意識に凪砂の匂いのする私物を持ち込んで匂い嗅ぎながら1人でシてるところを凪砂に見つかっちゃう…的なシチュエーションをリクエストさせて頂いてもよろしいでしょうか…!!?で、できれば凪砂も、茨と同じく無自覚ながら茨大好きだと嬉しいです…☺️💦(1人でシてる所みて大好き可愛いってのを自覚してほしい…)
(240825)