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    秘みつ。

    @himi210

    @himi210 小説 / 毎日更新12:00〜21:00 / 凪茨右茨ジひジ▼感想質問お気軽に📩 http://bit.ly/3zs7fJw##ポイピクonly はpixiv未掲載ポイピク掲載のみの作品▼R18=18歳以下閲覧禁止▼##全年齢 for all ages▼連載一覧http://hi.mi210.com/ser▼連載後はpixivにまとめ掲載http://pixiv.me/mi2maru▼注意http://hi.mi210.com/guide▼フォロ限についてhttps://poipiku.com/19457/8988325.html

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    凪茨▼レイプされていた茨

    ##凪茨
    ##全年齢

    チョコレートを一粒

     これは訓練だ、といって犯された。
     それが性的悪戯だと認識したのは弓弦がきた頃で、弓弦にバレないように全てを押し殺して耐えていた。そんなこと知られたらどうなっちゃうんだろう? 汚くて、惨めで、気持ち悪い存在。そんな風になりたくない、ただ普通の同輩になりたかった。
     犯された後、きまって一粒のチョコを与えられた。
     高級だかなんだか知らない金の包み紙。褒美のように与えられ、そうして咀嚼し嚥下するまで見つめられていた。
    「おいしいです」
     俺はきまってそう答える。部屋に帰る途中のトイレで、全てを吐き出していた。

     ***

     閣下は最近副所長室で読書をするのが気に入っているらしい。俺が打鍵しているのを横目に、毎日違う書籍を読んでいらっしゃる。
    「茨、目をつぶって?」
    「? なんですか?」
     閣下がニコニコしながらこちらに寄ってきた。思わず従ってしまう。
     くちに、なにかが触れて、思わず開いてしまった。
    「むぐっ!?」
     甘味と、苦味と、やわらかい食感――覚えさせられた、味。
    「どう? 期間限定のビターチョコなんだけれど、おいしい?」
    「う、……っ!」
     胃液が競り上がってくる。止められない、吐く、だめだ――。脇にあったゴミ箱に顔を埋めて、吐き出す。吐瀉物がだらだらと溜まっていった。
    「茨」
     生理的な涙が溜まる。閣下はとなりでおろおろしていて、申し訳なくなってしまった。
    「ごめん、茨、チョコ、苦手?」
    「いえ……はい、すこし……」
    「大丈夫?」
     だめだった。未だに食べられない。フレーバーはなんとか飲み込めるものの、固形の、あの感触は――だめだ。
    「……閣下のお好きなものを否定するのは心苦しいのですが、自分、チョコは食べられません。すみません」
    「私も、茨を喜ばせようと思って……ごめんね」
    「いえ、自分が悪いんです、閣下は気に止むことはありません、お心遣い大変恐縮であります!」
     うまく笑えているだろうか。俺がこの人を曇らせてはいけない。自分は、今、この人のために生きている。
     ――過去は捨てたはずなのに。

     ***

     今日も閣下はいらっしゃって、読書をしている。積んだ仕事をこなしながら、資料を取りに棚の上に手を伸ばす。あと数センチ背が高かったらよかった。
    「あれが必要なの? 取ってあげようか」
    「いえ! こんな雑務を閣下にさせるわけにはいきません! 取れますので!」
    「私が取るよ」
     閣下がやってきて、書類に手を伸ばす。
    「わ、」
     ぐらり、とバランスを崩した。頭から倒れる――!
    「茨」
     ぐい、と引っ張られた。しかしその拍子に閣下も倒れ込んでくる。引いて貰えたおかげで頭を強打しないですんだ。目を開けると――目の前に、男。
     犯される前の、くらい影。
    「ひっ」
     どん、と閣下を突き飛ばしてしまった。恐怖が立ち上る。
    「ごめん、重かった? ごめんね、茨……」
    「ち、がうんです、違います、あの、……っは、は……っ」
     くるしい。いきができない。パニックになって、くびをおさえる。
    「茨、ゆっくり呼吸して。大丈夫、大丈夫だよ」
     背を撫でながら、閣下は優しい声で囁く。
     これは、あの時と違う。
     これは、過去じゃない。
     そうわかっていても――体は覚えている。
    「は……っ、はっ……、は、は……」
    「大丈夫?」
    「……い、いえ……大丈夫……です……」
     閣下は何も言わず、俺をぎゅっと抱きしめた。俺はまた心臓が縮み上がったが、逃げたいとは思わなかった。
    「茨の支えになりたい。茨が大丈夫なように」
    「閣下……?」
    「私、茨が好き。抱きしめたくなるくらい、好きだよ」

     ***

     あの後なんて云ったのか覚えていない。うまく答えられなかったのかもしれない。
     今日は寮の部屋は一人きりだと云っていた。寝る前に、一言伝えておかないと、今後に支障をきたす気がした。
    「閣下、失礼――」
     します、と云いかけた。
     ドアーの向こうで、閣下の息遣いが聞こえる。覗いてはいけない。慰めている。――あの美しい人も、性欲がある。その事実が体を震わせる。俺は、固まってしまった。後ずさる。
    「茨、いばら……っ」
     離れようとした時、そう、閣下が呻いた。
    「……っ」
     閣下の、「好きだよ」に含まれるものを、示される。美しい体が、自分を求めている。――求められている。
     泣きそうになった。
     汚くて、惨めで、気持ち悪い存在。
     それを知られたら、どうなっちゃうんだろう?
     かれのためなら体なんていくらでも差し出す。でも――それで、この体の使われ方を知られてしまったら――。
     息がつまる。
     未だにチョコレートの一粒さえ飲み込めない。
     過去は、消えていかない。

     ***

     あれから、何事もなかったように日々が過ぎた。意識しているのは俺だけなのかもしれない。閣下のことを、考える。好きだよ、の言葉を思い出す。胸が苦しくなった。
    「閣下」
     終業の時間、立ち上がる閣下の服の袖を、引っ張った。
     目と目が合う。
    「閣下に、だけ、俺が……自分が、チョコレート、食べられない、理由、を、云います」
    「うん」
     幼少期、上官、性的悪戯、レイプ、チョコレート。冷や汗が出た。体が熱い。
    「……以上、です」
     閣下は表情を崩さず、聞いていた。そうしてまた、俺を抱きしめて云う。
    「つらかったね。もう、大丈夫だよ」
    「……っ」
     涙が出た。
     俺はずっと、そう云われたかったのかもしれない。
    「おれ、おれっ……、だから、汚いからっ……! すきだなんて、いわないで……」
    「汚れてなんかないよ、茨は、綺麗だ。私はここのみんなより、少しだけ茨と一緒にいる時間が長いから、知ってる。伏見くんには負けるかもしれないけれど――。茨の過去を知れて、嬉しい。好きだって、いわせて。どんな茨でも、私は、好きなんだよ」
     甘くて、苦くて、やわらかい。閣下は優しく背を撫でて、好きだよ、と囁く。
     チョコレートを一粒、抱きしめる。とろけて、嚥下して、幸福になることを約束された、味がした。

    (210202)
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