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    いと(ito_rin_mori)

    @ito_rin_mori

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    いと(ito_rin_mori)

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    9月24日 Good comic CITY 29
    今日も明日も愛しさ千倍 3 発行

    『花結び』 原作軸/全年齢/文庫/94頁/両想い ¥1150

    FF様向けキスシリーズWeb再録本。
    全体的に加筆修正いれてますが話の筋は変わりありません。話の矛盾は直してません(笑)書き下ろし6000字程度。
    センくんの漢字変換ミスしてます<(_ _*)>

    口吸い
     額に、頬に、鼻先に、生まれてから何度も触れていた兄の唇が、初めて自分のそれに落とされた時、あまりの柔らかさと温かさに目の前がちかちかと光るようだった。
     恐る恐る目を開いて兄を見上げれば、その目線がこれまでと違う熱量を持ち、ああ、本当に恋仲になったのだと実感した。

     最初は、ふわりと羽のような触れ方だったが幾度目にかなると、少し長く強く押し付けられるようになった。それからは、一度でなく、二度三度と角度を変えて触れられるようになった。その度にほんの少しずつ、兄の目から見える熱がちりちり高まっていくようだった。呼応するように、己の体温も兄が触れる度にじわじわと高まっていった。
     その頃になると、兄は就寝の前に千寿郎を膝に抱え上げて口づけをするようになった。それまでは布団の中では額に触れる程度だったので、途端に戸惑いと恥ずかしさで千寿朗の頬は熱くなった。口づけだけでなく、頬が赤くなることにも恥ずかしがっていると、兄は笑いながらも慰めるように頬を撫でてくれた。しかし、その触れ方は熱を鎮まるよりも、さらに鼓動を高めるようなものだった。

     もはや数え切れないほど触れ合った後に、ふっと兄の吐息が唇に当たった。自然と唇が震えて目を開けば、こつりと額を合わせられた。
    「千寿郎、舌を出してごらん」
    「舌、ですか?」
    「うん」
     意味がわからず、無意識に離れそうになる頭を兄の大きな手で止められた。すると、手本を示すように兄の舌がぺろりと唇を撫でてきた。ぴくりと簡単に反応する自分の肩に恥ずかしさを覚えながらも、導かれるようにおずおずと舌を出した。兄が満足気に口角を上げた。なんだろう、と思う間もなく兄の口が己の舌を捉え、じゅっと吸われたのだ。
    「んんっっ……!」
     突然の衝撃に、思わずぎゅっと兄の寝巻きを掴んだ。兄は千寿朗の様子に構うことなく、舌先を吸いながら自身の肉厚な舌で千寿郎の小さな舌の裏を舐め上げてきた。舐め上げられる度、背中にぞくぞくとした感覚がせり上がり、堪らず兄に身体を擦り寄せてまう。兄の大きな掌が肩から背中を滑るように撫で、腰まで到達すると力を込めて抱きしめられ、身体がしっかりと密着した。
    「ふっ、あ…」
     一瞬口が離された隙に兄へ呼びかけようとするが、鼻に抜けたように息しか漏れてこない。聞いたことがない自分の声に羞恥で顔を逸らそうとするが、許されずに顎を捉えられる。ふっという息に交じり、ぴちゃりと水音が漏れ、その全てが自分から発せられていう事実に何故か腹の奥がきゅうと締まっていた。それは、味わったことのない、えも言われぬ感覚だった。もう一度強く吸われたの後に、ようやく解放された。だらしなく舌を出したまま、はっはっと短く息する姿が、まるで犬のようだとぼんやりと考えた。はしたないと思いながらも舌を戻すこともできず、涙が滲んだ目で兄を見上げた。兄は心配そうでいて、でも満足気に目を細めていた。千寿朗の頭を撫でる手が、少し力が込めて千寿朗の引き寄せた。千寿朗は、ほっと息を吐きながら逞しい胸元に頬を擦り寄せた。
    「大丈夫か?」
     優しく響く声に、息が乱れたままで声が発せずにこくりと小さく頷いた。疲れ切った弟に気づいたのだろう。兄は先程の熱が嘘のように、優しくこめかみに唇を落としていく。
    「すまないな。どうしても、お前の口を吸いたくて」
     口を吸う、という言葉にまたかっと全身が熱くなった。ああ、これが本当の口吸いというものだったのか。本の中で、噂話で、見聞きしたものはこんなに劣情を伴うものだったのか。千寿朗は、ただ兄を想っていただけだった。恋仲になれるなど、まさに青天の霹靂。だから、恋仲になり、その先がどういうものなのか想像することも出来ていなかった。
    「俺の気持ちを押し付けたな。俺に何かされても、全て受け入れなくていい。嫌だったらそう言ってくれて構わないんだぞ」
     強く腰を抱き込んでいた腕がいつの間にか緩められ、慈しむように背中を撫でている。千寿郎のよく知る、兄の触り方だ。いつでも安心する、大好きな撫で方だ。
     でも何故だか、今はそれが寂しかった。
     整ってきた呼吸で、息をふっと吐いた。もう一度きゅっと兄の寝巻きを握り、今度は自分から身体を密着させ意を決して顔を上げた。
    「ん?」
     兄が優しく微笑み、頭を撫でる。千寿朗が産まれた時からしる、弟を撫でる兄の手だ。でも、そうじゃない。そうじゃないんだ。今、欲しいのはそれじゃない。
    「兄上」
     ぐっと顎を上げ、口を開け舌を出す。兄の目が見開き、背を撫でる手が止まった。
    「ん……もっと」
     舌を出したままだと上手く話せず、舌足らずになる。兄の手がまた下がり、腰を引き寄せ再び身体を密着させてくる。また目を細めたが、今度は間違いなく、ちりちりと熱情を持つ兄の目だ。眉を下げながらも、何故か怒っているように顔をゆがませた。
    「頼むから、あまり俺を刺激しないでくれ」
     なんでそんなことをいうのだろう。最初から、仕掛けてきたのは、兄上じゃないかと文句も言いたいが、近づいてくる唇に応えるため、瞼を落とした。ふっと舌に、兄の吐息が触れる。そう、今欲しいのはこれだ、これなんだ。でも、口づけが欲しいです、とはまだ千寿朗には言えなかった。少しでもの想いが伝わるように、と握りこんだ手を開き広い背中に腕を回した。

    中略



    「あ……あっ、んふっ」
     ぐっと手のひらで口を抑える。どうしても声が我慢できず、強めに押し付けてしまう。本当は両手を使いたいが、そうすると後ろから抱き抱えられてる不安的な姿勢も、兄の唇が滑る度捩れる身体も、支えることが出来なくなってしまう。だから、仕方なく片手になってしまう。兄からは肩を捕まれ、反対の手は腰から腹を撫でてくる。へその周りをくるくると撫でたあと、揉むようにして下がっていく。足の付け根までくると、先には進まずそこに留まる。付け根から太ももを何度とか行き来してから、尻を支えるように手を沿われる。兄の大きな手で肌を揉みこまれると逃げるように腰が浮きそうになってしまうが、肩を掴む手に押されているから逆に擦り付けような動作になる。緩急はつくいているが、どこかもどかしい兄の動きに何故かもぞもぞと下半身が動く。その動きに合わせるように、今度は手が尻から腰を撫で上げて、胸の周りを円を描くように撫でられる。当然ながらなんの膨らみのない胸だが、兄の大きな手が柔く揉んでいく。近頃、繰り返されるようになったこの触れ方により、擽ったさを通り越して背筋がぞわぞわてしてくるようになった。どうにかやり過ごしたいのだが、上手くいかない。そうやって困っていると、容赦なく兄の唇がまた背中を滑る。項に何度も口づけをしたあと、耳裏に唇が戻ってくる。
    「ひ、ひ、ひゃあ…あ、ん」
     耳朶を噛まれて、刺激で口から手が離れてしまう。兄のいつかの宣言の後、散々に口内で互いの舌を絡め合ってから兄は上半身に目一杯口づけをするようになった。あの時のように膝の上に後ろから抱えあげられ、腰紐を解かれて背中を顕にさせられる。そして耳や項に唇がはわされるのだ。音を立てて口づけられたり、舐めたり、軽く噛まれたり。その間、手のひらはひたすら腹や足を撫でられた。ひとつひとつの動きに戸惑い擽ったい部分もあったが、だんだんと感覚が変わっているように思う。ただ、それがなんなのかは、わからなかった。しかし、何故だか背中の方ばかりだった。後ろから抱き込まれ、背中や項は執拗に弄られるが前は緩く撫でられるだけだった。もどかしさもあるが、それよりもほんの少し不安になる。つ、と唇が離れた間に、くいと兄の寝巻きを引っ張った。千寿郎の手に気づいて、首筋から兄の顔が上がった気配を確認して首を捻ると兄の豊かな髪が頬に刺さる。
    「兄上、口…」
    「うん」
     顎を上げると唇が重なる。意図を正しく理解してくれたこと重なるぬくもりに安堵した。最初から少し口を開けていたので、当たり前のようにぬるりと舌が侵入してくる。触れ合いの最初は口を合わせるだけでも恥かしいのに、いや、今でも恥ずかしいことには変わりない。でも、繰り返していくうちに恥じらいよりも嬉しさ勝っていく。自分から兄の舌を迎えにいくと、やすやすと捉えられて口の中がすぐに唾液でいっぱいになる。唇が離れる時に、寝巻きを強く握った。
    「あの…」
    「ん?」
    「お顔を見ながら、して欲しいです」
     兄がぴたりと動きを止めた。何か不味いことを言っただろうかと迷うと、腰に回された腕でぎゅうと強く抱き締められた。耳裏にちゅと口づられると、腕の力が緩まった。向きを変えていいという合図だと気づいて、兄の大きな手に支えらながら膝から身体を浮かせた。腕にかろうじて絡まるっている寝巻きを引きづるように回転すると、もはや裸も同然の姿になってなっていた。一瞬戸惑うが、今はそんなことに構っているよりも兄の顔が見えたことに安心をした。肩に手をかけて体勢を整えようとしたが、力が入らずるりと滑ってしまった。兄の頭を胸元で抱き抱えるような格好になってしまった。
    「わっ、ごめんなさい」
    「大丈夫だ」
     離れようとしたが、優しく背中を撫でられた。先程の熱い手と違い、温かさに人心地がついた。兄から抱え込まれる体勢は、小さな頃から慣れたものではあった。兄の大きな身体にすっぽりと囲ってもらうのは好きだ。だが、どうにもこうやって触れ合ってる時は不安が勝ってしまうのだ。それは逃がせない感覚へのもどかしさのせいなのか、わからなかった。もしく皮膚には兄の感覚があるが、耳に届くのは自分の声しかないからかもしれない。抱えたら兄の、いつもよりも熱い体温が心地よかった。ぎゅっと抱えて兄の頭に頬づりをしながら、思わずはぁと息が漏れた。ひく、と兄の肩が揺れたと同時に胸元に熱い吐息が触れた。どきりと心臓が鳴った瞬間、兄も腰を抱きしめてきた。
    「千寿郎、少しだけ先に進んで良いか?」
    「先…ですか?」
     答えられる前に背中の真ん中を撫でられ、すでに熱くなっている身体が敏感に反応した。首元に唇が当てられ、痛みはないが音を立てながら吸われていく。
    「んっ」
     実の所、兄からは体の前面は初めて触れられて以降、唇で触れられることがなかった。先というのは、このことなのかわからなかったが、初めて触れられて時と感覚が全く違うようだった。鎖骨を丁寧に触れていく熱さに、きゅっと自分の唇を噛んだ。腰を支えていた兄の両手が上がり、胸元で止まった。そのまま後ろから揉みこまれた胸を、両親指がさらに小さく丸く撫で始めた。また襲ってくるもどかしさに、兄の首元に回した指先に力を込めると、呼応するように兄の指先がこれまで触れることのなかった胸の突起を撫でた。
    「えっ、あっ」
     やわやわと優しい感触ではあるが、今まで感じたことがない痺れがぞわぞわと背中が這い上がってくるようだった。ふっふっと息が短くなってくると、突然、ぐっと強く突起を潰された。
    「ひっ!」
     びくっと身体が跳ねたが、そのまま兄がぐにぐにと何度も突起を強く撫でてきた。堪らずにまた頭を抱えていた腕に力を込めると、今度は鎖骨にあった舌がするりと下がってきた。
    「えっ、やぁっ」
     ぬるりと熱い感触が、じくじくとした痛みをもつ突起に触れた。兄の舌が、そこを舐めていると気づくの数秒かかった。もどかしかったはずの感覚が、一気に痺れへと変わり、どんどどん強くなってくる。下がりかけていた尻が上がり、すかさず兄に支えられた。左手の指は突起を撫でたまま、兄の右手が尻を撫でた。そんなところと、止めたかったが半ば身体を支えるようになってしまった腕を解くことができなかった。頭を抱えているので、図らずも自分の胸を兄に押し付けているようになる。転がすように舐められていると思っていたら、突如ぴりっとした痛みを感じた。あろうことか兄が突起を吸っているのだ。
    「んぁ、やぁ、ん、吸わないで……」
     抗議は途切れ途切れに、自覚するほど熱っぽく吐かれてしまった。ぢゅっと強めに吸われて離れたと思ったら濡れた突起をまたぐりぐりと親指で強く撫でられ、声を上げるのを我慢が出来なくなった。そのまま、兄は撫で続けていた反対の突起を吸い付き始めたのだ。今度は舐めずに最初から強く吸われた。
    「あに、うえ、なんか…へん、ぁん……」
    「…吸うより舐める方が良いか?」
    「は、わ、かん…なぁ…ぁぁん」
     吸われたまま話され、漏れた吐息だけで腰がぞわりと動いた。突起が固く、知らぬ形へと変わっている。その固くなったところを下から押すように舐められ、膝立ちになってしまった足を擦り合わせた。
    「んん、ん…ん、ぅん……ん」
     頭に唇を押し付け、なんとか声を出ないようにするがどうにも止められない。何故こんなにぞわぞわとしてしまうのか、怖くてそして心細くなった。なのに身体は強張るよりも、反対に徐々に力は抜け始めていた。腰が抜けそうな感覚に、兄の両肩に手をついてなんとか頭を起こした。すると、ちゅちゅと吸い付く音と、胸に吸い付く兄の姿が眼前に広がった。かりと齧られ、また逆の突起へ、肉厚の舌が近づいていく。ふるりと期待しているように突起が震えたように見えた。
    「…撫でてみようか」
     突起に触れた熱い吐息で、頭が揺れた。答える前に舌先がぬるぬると突起を撫で始めた。
    「あ…」
     堪らずに兄の額に唇を押し付けて、何度も口づけた。喘ぎ声の代わりに音を立てて、何度も何度も触れると兄も空いてる方の突起をぐいぐいと指で押した。変わる感覚への恐怖がどうしても拭えず、目元に涙が溜まっていくのを感じた。
    「あにぃうえ、お口…」
     細切れに呟くと、突起から兄が顔を上げた。こつりと額を合わせて、至近距離で目が合った。見たことも無いような燃える瞳に、焼かれてしまいそうだった。ついと口を尖らせば、兄が首を伸ばせて触れてくれた。
    「嫌か?」
     なんのことか、と思ったがおそらくは胸への愛撫のことだろう。兄の視線にあてられそうになりながら、ほぉと息を吐いた。意識が飛びそうだったが、意思を示すために必死にふるふると小さく首を振った。嫌なわけがない。
    「兄上に触れられると…どんどん変な感覚になります。それが…」
     震える唇に、温かい感触があった。触れるだけの口づけに安心して、少し微笑むと目元の涙を拭ってくれた。
    「怖くて…でも…」
     こちらからも左右に角度を変えて触れる口づけをした。頬を撫でてくれたので、手のひらに頬を擦り寄せた。
    「こんな僕を、この先を、兄上がどう思われてるのか…知りたくなります」
     閉じきらぬ口にゆっくりと舌を差し入れられた。厚い舌が慰めるように口内を撫でてくる。しかし、ついさっきまで自分の胸にこの口が吸い付いてたのかと思うと、また腰がぞくりとした。
    「お前の身体を見たら、俺は我慢できずにお前の至るところに触れてしまうと思ってたんだ」
     指先で耳朶を摘みながら、額をつけたまま、兄が眉を少し下げた。
    「まぁ…その予想通りだったわけだが」
     ちりちりとした熱はまだあるが、きっと今も理性と戦ってくれているのか。きっと、聡い兄は僕の不安な気持ちなどとうの昔に気づいていたのだろう。僕の気持ちが慣れるまで整うまで、譲歩して、後ろから抱き込むに留めていてくれたのだろうか。途端にきゅうと胸が詰まった。
    「怖いのは、ほんとです」
    「うん」
    「でも、もっと兄上を、感じたいです」
     ぶわっと視界が滲んだ。目元に唇が近づき、吸ってもらうまでそれが涙だと気づかなかった。
    「あまり…煽らないでくれ」
    「んっ」
     息すら勿体無いとでも言うように兄の口で口を飲み込まれた。本当は、震えは怖さだけではなく期待だと、塞がれてしまって口に出来なかったので、代わりにまた首元へ腕を回して伝えることにした。

     ほんの半刻前、絶え間なく熱い息が漏れていた口から、穏やかな寝息が聞こえる。丸い頬の寝顔は幼子の頃と変わらず、口角がやんわりと上がってしまう。見下ろして髪の生え際を撫でてやると寝ていても嬉しいのか、目元が和らいだように見える。まだ子供だと言い切ってしまって良い年頃だろう。自身は、この頃には剣を取り、知らぬ土地や野山を駆け巡っていた。弟はおそらく剣士にはなれない。本人はそれを嘆くが、そんなことはないのだ。母がおらず父もろくに起きてこず兄がほぼ不在の状況で、家の切り盛りをしているのは弟だ。誰にも頼らずに家を守ってくれているのは、いっそ剣士になるよりも大変なことだ。自分もそうだったせいからか、互いに意識はしないが、本来はまだ幼く親や年長者の腕の中にいても良い頃合いなのだ。それを環境が許さなかった。しかし、鬼殺隊に入ってみれば、特別なこととも思わなかった。様々な事情を抱える人の中で、自分は恵まれているとさえ思った。だから、余計に強く在らねば、と思っていた。弟に対してもそうだ。寂しさはあれどそれがどうした、と慈しむように弟を育ててきた。おかげで、剣の才覚よりもずっと人としてて大切な優しさや芯の強さをもった子に育ったと思う。明るい溌溂な笑顔に溢れるが、愛らしく、それでいて柔らかで温かな雰囲気を纏い、弟の存在には心底癒された。
     それだけで十分なはずだった。芽だけで摘むはずの想いが顔を出し、花開き、ついに手を伸ばしてしまった。拒否をされずに手を取ってもらえたのは、奇跡と言っていいだろう。兄弟の時より、ほんの少し強く抱き締め、熱を込めて触れられれば、それで良かったのだ。だが、抱き締めれば隙間のないよう埋まりたくなり、触れればもっと奥へと求めてしまった。そうして、弟は目を見張るほどの艶や危ういほどの色香を放つようになった。引き出したのは間違いなく自分で、そのように仕向けたのも自分だ。
     耐えていた。せめて少しずつ、と歩みを進めた。果実のようなそこに触れしまったら、食べ尽くしてしまうのではないかと恐れていたのだ。あっさりと、強靭だと信じていた理性は弟本人によって崩壊させられた。弾力のある肌も、鍛えて引き締まった細い肢体も、想像よりも何十倍も魅惑的だった。きっちりと着込んで普段は隠れている肌色の健康的な白さに、目眩がした。誰も触れたことがない薄く色付いたそこは、目にしてしまえば可愛がる以外に選択肢が無くなってしまった。直接触れずとも、時間をかけて何度も撫でていた千寿郎の身体は柔く触れるだけでも敏感に反応した。男が良くなるのかは、正直分からなかった。良くしてやりたい気持ちはあれど、確信はない。だから所詮は自分の欲だけだった。触れずにいた突起を両指で引っ掛けただけで、千寿郎の身体が跳ねた。千寿郎の肌は汗ばんではいたが、乾いた指では足りず剣で固くなった指先では柔い突起を傷つけてしまう気がした。ああ、そうだ、とそこで全身に口づけをすると伝えていたと思い出したのだ。久方ぶりに、前から千寿郎の首に触れた。ゆっくりと肌を味わい、ぷくりと指に育てられた突起の揺れが、誘われたと感じたのだ。口に含んだそれは、あまりに甘かった。良くしてやりたいと思っていたが、結局は甘さをさらに味わいたくなったのは己だった。
     吸うほどに千寿郎から熱い吐息が漏れ、齧りつけば肩が跳ね、舐めれば腰が揺れた。触っているのはこちらなのに、その姿を見るだけで自分の体温が上がり、腰が重くなるのを感じた。舌足らずに苦しげに呼ばれ見上げた顔は、涙に濡れながらも目にしたこともないほど熱を帯びた瞳だった。ああ、ついにここまでと、内心、歓喜した。不安や恐怖は手に取るように伝わるが、奥深く眠る正体不明の欲に、心も身体も傾きかけていた。きっと目の前の兄のために、己だけのためにさらけ出そうとしてくれていた。千寿郎は健気さと愛しさが溢れているのに、やはりもっとと求めてしまう自分の欲深さにため息が出る。
    「んぅん…」
     起きたかと目をやれば、ころりと姿勢が変わっただけだった。むずがる様子も赤子のようだと思えば、高まる熱も穏やかになれた。寝惚けてるのか、布団を剥ぐようにまた動いた。
    「風邪を引くぞ」
     腕を入れて布団をかけ直そうとして、ひたりと止まった。寝乱れて露わになった胸元に思わずぎくりとした。薄闇の中でも、千寿郎の突起がふっくらとしているのが見て取れた。吸い付く前、淡く薄かったはずが今はどうだ。散々、口と指で慰めた結果、瑞々しさを通り越してすっかり熟し色づいてしまっているのが暗がりでもわかった。途端に、耳元に響いた千寿郎の吐息が蘇る。がりがりと頭を強めにかいて、急いで襟を整えた。頭を軽く抱え、千寿郎を抱き込むようにして共に布団に入った。
    「ん…兄上…?」
     身じろぎをして、千寿郎がぼんやりと目を開いた。
    「まだ朝じゃない。寝ていて大丈夫だ」
     寝惚けたまま、ふにゃりと笑うと俺の胸元に擦り寄り両手で寝巻きを掴んだ。赤子の頃、こうやって千寿郎は抱きついて眠っていた。
    「兄上、あったかぁい」
     子供のような口調に、緩く額に口づけをした。
    「おやすみ」
     返事はなく、すぐに寝息がまた聞こえてきた。温もりに安心して、ぎゅうと柔くだが離さぬように抱き締めた。この温もりの穏やかなの心地良さを、俺は千寿郎が産まれた時から知っている。それでも、知ってしまった熱さを、手放すこともできない。弟も、千寿郎も、そうであったならばいいのに、などと情けないことを考えた。
     形のより丸い頭に頬を寄せ、ゆっくりと瞼を閉じた。


    サンプルここまで。
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    Replies from the creator

    いと(ito_rin_mori)

    DOODLE20240211
    杏千バレンタイン2024
    キ学軸 🧹(中2?)⇒🍠(27)へのチョコレート
    せんくん無自覚。兄は…?
     色めき立つ女の子たちを尻目に、さっさと校舎を後にした。同じ学校の高等部の教師である兄上に会わないためだ。正確には、兄上に会わない、というよりは兄上が女子生徒からチョコレートをもらう場面に遭遇したくないからだ。毎年、あれだけ多くのチョコレートを紙袋に詰めて帰ってきていたのだ。生徒から大量にプレゼントされているのは、入学前から認識していた。生徒はイベントに参加したいだけだから教師は丁度いいんだ、と貰った本人は笑い飛ばしていたけれども、絶対にそんなことはなかった。確かに冷やかしや友チョコの延長のようなチョコが入っているのは、否定できなかった。しかし、中には明らかに手の込んだラッピングの手作りの品や高級ブランドの箱が含まれていたのだ。それらが「丁度いいから」なんて、適当な理由で他人に渡しやしないだろう。まぁそうなんだろうな、と思ってはいたが、実際のその現場を目にすると破壊力がある。そう、僕は去年、兄上が本命チョコをもらう場面に遭遇してしまったのだ。危うく声が出そうになったが、寸で止めた。そのまま立ち去ればよかったものを、思わず覗き込んでしまった。フルフルと震える細い手は見えた。表情は窺いきれず、声は聞こえない。聞こえずとも、出刃が目には違いないのだから、とっとと立ち去るべきだった。なのに、まるで地面に足が縫い付けられているかのように動けなくなってしまった。そもそも、兄弟の恋愛に触れるなって嫌なもんだ。ましてや、年が離れているから兄上の恋愛事情なんて知らない。でも、僕の胸のモヤモヤは、そういうものとは違うような気がした。
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    いと(ito_rin_mori)

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    『花結び』 原作軸/全年齢/文庫/94頁/両想い ¥1150

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    センくんの漢字変換ミスしてます<(_ _*)>
    口吸い
     額に、頬に、鼻先に、生まれてから何度も触れていた兄の唇が、初めて自分のそれに落とされた時、あまりの柔らかさと温かさに目の前がちかちかと光るようだった。
     恐る恐る目を開いて兄を見上げれば、その目線がこれまでと違う熱量を持ち、ああ、本当に恋仲になったのだと実感した。

     最初は、ふわりと羽のような触れ方だったが幾度目にかなると、少し長く強く押し付けられるようになった。それからは、一度でなく、二度三度と角度を変えて触れられるようになった。その度にほんの少しずつ、兄の目から見える熱がちりちり高まっていくようだった。呼応するように、己の体温も兄が触れる度にじわじわと高まっていった。
     その頃になると、兄は就寝の前に千寿郎を膝に抱え上げて口づけをするようになった。それまでは布団の中では額に触れる程度だったので、途端に戸惑いと恥ずかしさで千寿朗の頬は熱くなった。口づけだけでなく、頬が赤くなることにも恥ずかしがっていると、兄は笑いながらも慰めるように頬を撫でてくれた。しかし、その触れ方は熱を鎮まるよりも、さらに鼓動を高めるようなものだった。
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