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    いと(ito_rin_mori)

    @ito_rin_mori

    杏千🔥🧹文字置き場
    原作・キ学・現パロ色々

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    いと(ito_rin_mori)

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    2024年1月28日
    COMIC CITY 東京150 発行
    『天つ日が昇る』
    杏千/原作軸/全年齢/両片想い未満/文庫/62頁/700円
    ※通領価格です。

    兄上の任務に同行することになった🧹くんのお話。
    恋愛要素はほぼ皆無です。

    天つ日が昇る 思いも寄らない提案に、千寿郎は瞬きが止まらなかった。つまりは、冷静さを欠いているということだ。こんなところでも修行が足りないとはこういうことか、と自覚し、落ち込む気持ちもあるが、今は、それどころではなかった。横目で兄を見やれば、口は真っすぐに引き結ばれ、表情は聊か強張っているようだった。少なからず、兄の杏寿郎も動揺しているようだった。
    「何も、鬼と対峙しろと言っているわけではない」
     びくりと肩が震えてしまった。それは恐怖からではなかったが、そう思われても仕方ない。何か言わなくては、と思い千寿郎は口を開いたが、何を言っていいかわからず、結局、何も言えずに閉じた。その代わりに、杏寿郎が大きく息を吸って口を開いた。
    「しかし、千寿郎は隊士ではない」
    「…千寿郎も最終戦別を生き残っているのだ。本来は、任務に出る資格はある」
     大きくはないが、しっかりとした声色に兄がまたしても口を引き結んだ。見知った仲ではあるが、互いに今は柱の立場。思うところや迷いはあるだろうが、ゆえに互いの主張に引きもしない。沈黙の中で、千寿郎は目の前の人を見た。その昔、兄弟の父親が助け、一時共に過ごした伊黒は、千寿郎にとっても親しい相手であった。
     多忙な中、兄が任務の途中に家へ立ち寄ってくれた。それだけ千寿郎は嬉しかったが、後から旧友も来ると聞いてますます心が華やいだ。兄と揃って三人で会えるなんて、いつぶりだろうかと喜んでいた。しかし、伊黒はただ煉獄家に顔を出しにきたのではなかった。再会を喜んだのもつかの間、相手方の雰囲気がいつもと違っていたことに兄弟はすぐに気づいた。挨拶もそこそこに茶の間に座った瞬間、伊黒は兄弟が予想だにしない話をしたのだ。
    千寿郎を連れて二人で任務に行け、というものだった。千寿郎はもちろんだが、杏寿郎も知らなかったようでひどく狼狽をした。千寿郎も戸惑いはしたが、伊黒が推薦するくらいなのだから、本当に自分が必要なのだろうと理解した。
    千寿郎は、伊黒を慕っていた。現在、兄弟と父親の関係が悪化しているのは、伊黒にもまた知られていることだった。特段隠してもいないが、方々に言いふらすような内容でもない。二人が柱になる前、父が酒を片手に任務に赴いているという噂が出た頃から、伊黒もまた任務の合間にふらりと千寿郎を訪ねてきていた。ただ土産物を置いて去ろうとする伊黒を千寿郎が無理矢理引き留め、少しならと言いながらも千寿郎の話に付き合ってくれていた。茶を一杯飲む程度の長さの滞在だったが、千寿郎は彼の優しさが何よりも嬉しかった。口数も多くなく、人と接するのが得意ではない彼だが、まだ拙いおしゃべりしかできない千寿郎の話を根気よく聞いてくれていた。相槌が上手く、千寿郎のこともよく誉めてくれた。兄のように大袈裟な表現ではないが、的確で心温まる言葉ばかりだった。
     千寿郎が成長した今も、大層忙しいだろうに時々顔を出してくれていた。勉学好きになった千寿郎に、兄よりも難しい書物を贈ってくれるのも、伊黒だった。兄の杏寿郎も千寿郎に沢山の本を与えてくれたが、だ。まだ千寿郎を幼子と思うのか、絵本や図鑑が多かった。内心で苦笑いをしたこともあったが、ただの絵本ではなく、趣向を凝らしたものが多かった。もの珍しい諸外国の美しい装丁の本や、文や兄との会話で興味があると呟いた分野の図鑑など、そこらの本屋では手に入らない品も多かった。
    伊黒が与えてくれる本は、兄と対極と言っても良かった。純粋に学問に関係あるものや、歴史書や兵法書が多かった。それらは、千寿郎が望みながらも、自分には相応しくないのでは、と怖気けて手を引っ込めてしまうような蔵書ばかりだった。まるで心を見透かされたのかと驚くばかりだった。何も言いはしないが、漏れ出てしまった千寿郎の葛藤や悩みを汲み取ってくれているのかもしれない。彼は、千寿郎を肯定も否定もしない。ただ、心身の準備を怠ることなく、と言外に伝えられているようだった。
     伊黒という人は、そういう人だった。だから、今も目の前で、千寿郎の思いを代弁してくれているのかもしれない。ならば、千寿郎も黙ってはいけない、と頭を振った。結論を二人に委ねるのではなく、自ら決めないといけないのだ。
    「兄上、小芭内さんの仰る通りです。微力ながら、鬼殺隊や兄上のお力になれるのなら僕にも協力をさせてください」
     身体ごと横に向き、兄を見上げた。弟の言葉に、兄は面食らったようだった。千寿郎をしばし見つめると、目を閉じた。
    「何も千寿郎一人に行かせるわけじゃない。お前と一緒なのだから、お前がしっかり千寿郎を守ってやればいいだろう。それとも、自信がないのか」
     突き放すような伊黒の言葉に、杏寿郎がため息をついた。しばらくそのまま考えこんでいたが、目を開き、杏寿郎も千寿郎に向き直った。兄弟がしっかりと顔を合わせると、兄がゆっくりと口を開いた。
    「わかった、お前を連れていこう。ただし、無茶はするな」
    「…もちろんです」
     ふわ、と千寿郎は自分の頬が緩むのを実感した。兄弟の様子を黙って見ていた伊黒が、決まりだな、というと立ち上がった。
    「では、詳しい話は改めて文を送る。千寿郎は、いつでも出立ができるように準備をして待っていろ」
     それだけを言うと、要件は終わったとばかりに伊黒がさっさと部屋を辞そうとしたので、千寿郎は慌てて後を追いかけた。いつもなら兄も共にあるが、思うところがあるのだろう、難しい顔をしたまま立ち上がる気配はなかった。千寿郎は一瞬だけ兄を見たが、声をかけずに一人で玄関に向かった。
    「あの、小芭内さん、ありがとうございました」
     草履の紐を結ぶ伊黒の背中に、千寿郎は礼を言った。
    「千寿郎、俺とてお前を危険な目に合わせたいわけじゃない」
     振り返った彼の瞳が、千寿郎をしっかりと捉えていた。色彩の違う両目を見て、千寿郎は幼い頃、彼は妖精ではないかと疑った。それほど、彼の瞳を見ていると、人間離れした吸い込まれる魅力があった。伊黒は、生い立ちから人に対して疑り深く育ったため、相手よく観察し、人の心を汲み取る能力に優れていた。だから、伊黒に見つめられると、考えがなんでも読み取られてしまうのではないかと感じることがあった。千寿郎も、どうにか彼の真意が読めないかと、じっと目を見た。しばし見合っていれば、彼の相棒の鏑丸が千寿郎へと首を伸ばしてきた。撫でろと言いたげに身体をくねらせる姿に、可笑しくなって千寿郎は噴き出してしまった。要望に応えて千寿郎が指の腹で頭をやると、ちろりと伸びてきた舌が指に触れ、くすぐったさに微笑んだ。伊黒は二人の様子に目を細めた。
    「今回は、俺との共同任務に近い。時々、顔も出す」
     伊黒が話しだすと、鏑丸がゆっくりと千寿郎の手から離れていった。
    「任務に出られる資格はあるとは言ったが、お前は自分の身の安全を第一に考えろ」
     千寿郎の後押しをした張本人なのに、兄よりもずっと力強い言葉を放った伊黒に、千寿郎の口は弧を描いた。
    「ありがとうございます。身の安全を優先すると、約束します」
     千寿郎の返答を聞くと、では、と伊黒が踵を返した。
    「でも、不謹慎ですが…兄上と、小芭内さんと御一緒できて嬉しいです」
     もう伊黒は振り返らなかった。代わりに、鏑丸が首を左右に振って千寿郎に別れの挨拶をした。戻っていった。煉獄家の門をくぐるその背に向かって、千寿郎は深く腰を折った。


    ーーーーー 中略 ーーーーー



     知らないことは知れば良い、と兄に言われた。実際に千寿郎はこの村に来て、知らないことを多く知った。初日に狭いと言ってしまったあの家が、けして狭い家ではなかった。むしろ、二人で住むには広く、設備も整っているのがわかった。そして、千寿郎と同じ年頃であれば、既に働き手であるのも珍しいことではなかった。親のどちらかが健在でなければ、なおのことだ。子供たちが千寿郎の存在に興味をもったのは、そういう部分もあったのかもしれない。杏寿郎もその意味では、千寿郎と同じ年齢の頃には剣士になっていた。がつんと頭を叩かれたような衝撃があった。自分はどうだ。才がないと嘆くだけの日々ではなかったか。途端に恥ずかしさが出てきた。しかし、そんな時に、兄からの言葉を反芻した。知らないことを知る。知らないことを恥じるではなく、新しく学ぶのだと頭を切り替えた。
     程なくして、兄に懇願した本が届いた。初めて見る絵本の数々に、子供たちがはしゃいでいた。千寿郎は、忙しい親たちに代わり、字を教え本の読み聞かせをした。たとえこれが、たった一時のことであると自覚をしていても、止めることはできなかった。
     杏寿郎は、やはり夜更け前の僅かな時間だけ帰宅するだけの毎日だった。千寿郎の横rで寝ていた日が、千寿郎が兄の寝ている姿を見た最後だった。兄が帰宅すれば、千寿郎は家事の手を止めず、その日の出来事を話した。その度に杏寿郎は目を細めて、そうか、と相槌を打った。そして、暗くなる前、戸を閉めて出立をしていく。
    戸を開けてはならないと言い渡されているため、千寿郎の家の中での滞在時間が長かった。時間があるからと蟲柱の許可を得て、今回のために作成してくれた書付を書き写す作業をした。一つは自分に、一つはこの村の者へ贈るつもりで作成をした。この書付の内容も、千寿郎には知らぬことばかりだった。
     時折、こっそりと要が窓から千寿郎を覗きにきた。ご飯を与え、頭を撫でてやると音もなく月に向かって飛び立っていく。窓は小さく、夜も小さくしか見えない。まるで自分の世界のようだと、千寿郎は思った。


    サンプルここまで

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    いと(ito_rin_mori)

    DONE20241115 ~20241117
    ホー常WEBオンリー「暁の鷹は月と添う4」展示作品
    開催中、足を運んで下さった皆様、いただきありがとうございました🐥

    無自覚両片想い未満
    大戦後、しばらく会ってなかった2人
    それに名前を付けるなら おやすみと送られてきたメッセージに、おやすみなさいと返す。既読になったのを確認して、画面を消した。今日はちゃんと寝るだろうか、と数秒前にメッセージを交わした相手を思いながら常闇は布団に入った。
     二人の関係は何かと問われると非常に難しかった。
     
     先の大戦の爪痕はまだ大きく残っているが、日常生活は取り戻り始めていた。戦場の1つとなっていた雄英高校も多少の不便はあれど、徐々に授業も再開していた。まだ仮免許とはいえ、復興作業では学生も大事な戦力だ。大戦直後は、授業もなかったのでほぼ毎日復興作業に駆り出させれていたが、学校が再開した後は週末が中心となった。さらに一ヶ月が経つと、休みをしっかり取れとの指示の元、学生の支援は週に1回程度へとなった。それは予測よりも早い速度で復興計画が策定され、そして順調どころか前倒しで復興が進んだおかげであった。その先導指揮を取ったのは新しく就任した若きヒーロー公安委員長だった。大戦前、戦力の底上げとして学生の強化を進言したのも彼だったが、大戦後に学生をいち早く学生生活に戻す算段を整えたのも彼だった。かの人こそ、常闇が関係性の表現に悩む元№2ヒーローのホークスだ。
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    いと(ito_rin_mori)

    DONE20241115 ~20241117
    ホー常WEBオンリー「暁の鷹は月と添う4」展示作品
    開催中、足を運んで下さった皆様、ありがとうございました🐥

    両想い 年齢設定不明なのでお好きにどうぞ
    ふと過去の経験を🐥くんに聞くホ師
    不意に近づく息 床に座り、対面した状態でさわさわと両手で頭部を触られている。仮にも恋仲であるならば、その触れ合いに幾何かの熱や甘さがあっても良さそうだが、そういうものは伝わってこない。恋仲になるその前からも、頭を撫でられることはあった。元より幾分、手の主は他人に対して距離の近い性質があった。そこに多少なりとも周囲よりも後輩として気にかけられていたとは感じている。身長差が丁度良かったこともあるだろうが、その触れ合いは単に幼子への称賛対応に似ていた。少々悔しさはあったが、かと言って不快ではなかった。さて、要するに眼前の彼は常闇の感触が人の頭皮とは違うから気に入ったようだった。
     しかしながら、二人の関係が少しばかり変化した頃から、こうやってただひたすら感触を楽しむような触れ方をしてくるようになった。無機質とまではいかないが、これまでの褒美をくれるような特別な触れ方と違っており、少なからず戸惑った。恋仲の方がむしろ情熱的になりそうなものなのに、違っていたのだ。いつも唐突に始まり、わしわしと心地よい程度の乱暴さで触れられ、本人が満足したらなのか知らないが唐突に終わる。不思議ではあるが、嫌なわけではないので常闇は好きにさせている。しかし、熱がないとはいえ、恋仲の大きな手で触れられれば心臓は高鳴り、身体は緊張をする。そんな常闇の心境を知ってか知らずか、今日もまたホークスは両手で常闇の頭を撫でていた。頭部から後頭部へ移る手を、常闇は少し頭を下げて目を閉じて受け入れていた。両頬が包まれ、小指の先が首元に触れ、くすぐったさに首を竦めた。親指が嘴の根本をかすり、ぴたりと手が止まった。どうしたのたのかと目を開けば、ホークスがじっと嘴を見つめていた。
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    いと(ito_rin_mori)

    DONE20241115 ~20241117
    ホー常WEBオンリー「暁の鷹は月と添う4」展示作品
    開催中、足を運んでくださった皆さま、きありがとうございました🐥

    無自覚両片想い未満
    インターン中の二人の一コマ
    意味なんかないはずだけど ノックして部屋を開けて、ぴたりと固まった。部屋の主がスマホ片手に通話をしていた。どうぞという声はかけられていたので、電話中だとは気づかなかった。特段急ぎの用でもないので、会釈をしてドアを閉めようとしたが部屋の主であるホークスに手招きをされた。相槌を打ちながらも器用においでと口と手の仕草で伝えてくる。若干遠慮はあるが、引き留めたということは直ぐに終わる算段なのだろう。一瞬だけ迷ったが断わるのも失礼な気がして、なるべく音を立てないようにドアを閉め、窓際に立つ彼へ近づいた。
    「事前に調査とか必要なことがあれば、こっちでもしておきますよ」
     朗らかな応対だが、内容はきっとチームアップ要請だろう。ただでさえ忙しいのに、呼ばれた任務の事前準備まで買って出るとは感心を通り越して呆れも出てくる。元よりワーカホリックな上に、自分でこなした方が早いのは事実なのだろうが、単に自分で情報を収集をしないと満足しない性格でもあるのだろう。長いとは言い切れないが、それなりの時間を共に過ごした中で、常闇はホークスに対してそういう評価をしていた。
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    いと(ito_rin_mori)

    DOODLE20240211
    杏千バレンタイン2024
    キ学軸 🧹(中2?)⇒🍠(27)へのチョコレート
    せんくん無自覚。兄は…?
     色めき立つ女の子たちを尻目に、さっさと校舎を後にした。同じ学校の高等部の教師である兄上に会わないためだ。正確には、兄上に会わない、というよりは兄上が女子生徒からチョコレートをもらう場面に遭遇したくないからだ。毎年、あれだけ多くのチョコレートを紙袋に詰めて帰ってきていたのだ。生徒から大量にプレゼントされているのは、入学前から認識していた。生徒はイベントに参加したいだけだから教師は丁度いいんだ、と貰った本人は笑い飛ばしていたけれども、絶対にそんなことはなかった。確かに冷やかしや友チョコの延長のようなチョコが入っているのは、否定できなかった。しかし、中には明らかに手の込んだラッピングの手作りの品や高級ブランドの箱が含まれていたのだ。それらが「丁度いいから」なんて、適当な理由で他人に渡しやしないだろう。まぁそうなんだろうな、と思ってはいたが、実際のその現場を目にすると破壊力がある。そう、僕は去年、兄上が本命チョコをもらう場面に遭遇してしまったのだ。危うく声が出そうになったが、寸で止めた。そのまま立ち去ればよかったものを、思わず覗き込んでしまった。フルフルと震える細い手は見えた。表情は窺いきれず、声は聞こえない。聞こえずとも、出刃が目には違いないのだから、とっとと立ち去るべきだった。なのに、まるで地面に足が縫い付けられているかのように動けなくなってしまった。そもそも、兄弟の恋愛に触れるなって嫌なもんだ。ましてや、年が離れているから兄上の恋愛事情なんて知らない。でも、僕の胸のモヤモヤは、そういうものとは違うような気がした。
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