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    いと(ito_rin_mori)

    @ito_rin_mori

    杏千🔥🧹文字置き場
    原作・キ学・現パロ色々

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    いと(ito_rin_mori)

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    20240211
    杏千バレンタイン2024
    キ学軸 🧹(中2?)⇒🍠(27)へのチョコレート
    せんくん無自覚。兄は…?

     色めき立つ女の子たちを尻目に、さっさと校舎を後にした。同じ学校の高等部の教師である兄上に会わないためだ。正確には、兄上に会わない、というよりは兄上が女子生徒からチョコレートをもらう場面に遭遇したくないからだ。毎年、あれだけ多くのチョコレートを紙袋に詰めて帰ってきていたのだ。生徒から大量にプレゼントされているのは、入学前から認識していた。生徒はイベントに参加したいだけだから教師は丁度いいんだ、と貰った本人は笑い飛ばしていたけれども、絶対にそんなことはなかった。確かに冷やかしや友チョコの延長のようなチョコが入っているのは、否定できなかった。しかし、中には明らかに手の込んだラッピングの手作りの品や高級ブランドの箱が含まれていたのだ。それらが「丁度いいから」なんて、適当な理由で他人に渡しやしないだろう。まぁそうなんだろうな、と思ってはいたが、実際のその現場を目にすると破壊力がある。そう、僕は去年、兄上が本命チョコをもらう場面に遭遇してしまったのだ。危うく声が出そうになったが、寸で止めた。そのまま立ち去ればよかったものを、思わず覗き込んでしまった。フルフルと震える細い手は見えた。表情は窺いきれず、声は聞こえない。聞こえずとも、出刃が目には違いないのだから、とっとと立ち去るべきだった。なのに、まるで地面に足が縫い付けられているかのように動けなくなってしまった。そもそも、兄弟の恋愛に触れるなって嫌なもんだ。ましてや、年が離れているから兄上の恋愛事情なんて知らない。でも、僕の胸のモヤモヤは、そういうものとは違うような気がした。
     僕は、まだ子供だという自覚はある。それでもやっぱり、うんと小さい時は違う。小さい頃は、なんにでも興味津々で、無邪気だった。バレンタインだってそうだった。母上からチョコレートを貰えるのは嬉しかったが、なんで貰えるのかは不思議だった。どうしてですか?と聞けば、好きな人にチョコレートをプレゼントをする日だと教えてくれた。そうなれば、幼児の行動は一目瞭然だ。僕も兄上上のあげたいです!とお願いをしたのだ。その年から、僕は毎年兄上にチョコレートをプレゼントした。兄上は天才だの気遣いが素晴らしいだの、ととにかく誉め倒してくれた。そうやって何年かはプレゼントをしていたが、バレンタインが愛の告白をする日だと教えてもらった。ほぼ同じ時期、兄上が毎年大量にチョコレートを貰っていることに気づいたのだ。つまり兄上は、モテるという事実にだ。幼心に、そうなれば急に自分のチョコレートは必要ないな、となってしまった。そこから数年、僕は兄上にチョコレートをあげていない。兄上は寂しそうにしていて、ちょっと可哀そうだった。でも小さい頃と違って、今は弟から貰ったところで可愛くもなんともないだろう。
     兄上が貰ったチョコレートの食べる係に慣れた頃、兄上が勤める学園に僕も入学した。この頃は、数多くのチョコから本命チョコだけを選り分けて兄上に渡すこともできるようになっていた。すると、兄上はなんだかいつも複雑な顔をしていたものだ。まぁ弟からチョコの選別されるなんて、気持ちがいいものではなかっただろう。でも、僕は対照的に実に冷静なものだった。綺麗なラッピングされた箱は、確かに想いが零れ出てくるだった。ただチョコを見ているだけなら、問題なかった。目の前で渡されるのを見るのは、とても衝撃的だった。頭を打たれたような痛みを感じ、その年はチョコの選別はできなった。紙袋に積まれた大量のチョコレートの中から、ちらりと見えてしまった赤いリボンを見つけるのが嫌だった。家族には不思議がられたが、選別された後のスーパーでよく見かける大袋のチョコレートの数々に、どうしてかホッとした。
     モヤモヤの理由はよくわからないが、気分が良くないのはよくわかった。逃げるように学校から出たが、すぐに帰宅する気分にもなれなかった。あてもなく街を歩き、ふらりと立ち寄った商業施設を歩いていると甘い匂いが漂ってきた。『本日最終日』と大きく書かれた看板の場所は、チョコレートの催事場だった。今日が当日だが、まだ催事場は賑わっていた。嫌だと思っていたが、遠目でも分かる綺麗なチョコレートたちに思わず足が向いてしまった。近頃は自分用へのチョコレートが増えているとテレビで聞いたが、まさにそんな感じだった。チョコレート自体もだが、ラッピングまで凝っていて、まるで芸術品のようだった。確かに、これなから自分用にと欲しくなるのも理解できた。
     ぐるりと一周回って、とあるチョコレートが目に留まった。形はまん丸でシンプルだが、周りのコーティングのさりげない装飾が綺麗だった。派手すぎず、上品だった。箱も渋いがセンスがいい。ちらりと値札を見ると『柑橘のトリュフ』と書かれている。チョコと柑橘と言えば、オレンジピールが思い浮かぶが、トリュフは初めて見かけた。シンプルで上品な佇まいと爽やそうな風味、兄上の顔が浮かんだ。それに驚いて、頭を横に振った。途端になんだか恥ずかしくなってくる。
    「贈り物ですか?」
     ふいに声をかけられ、びっくりする。売り場のお姉さんがにっこりと微笑んでいる。
    「あ、はい、あげてみようかな…って」
     つい、そんな言葉出てきて自分でも驚いてしまう。
    「どんな方に差し上げますか?」
     問われて、ぐっと喉が詰まる。柔和に微笑むお姉さんは、僕のことは何も知らないのだ。
    「え、っと、年上の男性、なんですが…日頃の感謝で…」
     どうしてだが、兄と言えなかった。兄弟であげることが可笑しいとかそういう理性が働いたわけではなかった。明らかに学生の僕が、年の離れた兄にあげると言えばきっと微笑ましく思ってくれただろう。でも、熱くなった頬から何かが零れてしまう気がしたのだ。それなら見て頂いているチョコレートはお勧めですよ、とお姉さんがもう一度微笑んだ。
     幸いチョコレートは、お小遣いの範囲で帰る品物だった。持ったことがないお洒落な紙袋を持つのが恥ずかしくて、せっかく袋に入れてもらったけど、ひとまず畳んでチョコも紙袋も鞄にしまった。
    「どうやって渡そう…」
     先ほどから何度も自問自答している。さて、どうしたものか。小さな頃は無邪気に兄上に渡せていたが、今はもう無理だと分かっている。昔はどうやって渡していたっけ。沢山の素敵なチョコレートの中で、ずば抜けて良くはないかもしれない。でも、兄上に似合っている気がしたんだ。胸がきゅっと痛み、鞄を抱きしめた。
     渡してしまったら、モヤモヤの正体が分かってしまう気がする。渡したいけど、渡したくない。盛大にため息をつく。今日が終わるまで、あと数時間。このドキドキと共に生活をするのかと思うと、ちょっと憂鬱だった。でも、破顔する兄上の顔を想像しては、口元が緩んでくる。
    「喜んでくれたら、いいなぁ」
     重かった足取りが急に軽やかになり、小走りで家に向かった。
     
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    いと(ito_rin_mori)

    DONE20241115 ~20241117
    ホー常WEBオンリー「暁の鷹は月と添う4」展示作品
    開催中、足を運んで下さった皆様、いただきありがとうございました🐥

    無自覚両片想い未満
    大戦後、しばらく会ってなかった2人
    それに名前を付けるなら おやすみと送られてきたメッセージに、おやすみなさいと返す。既読になったのを確認して、画面を消した。今日はちゃんと寝るだろうか、と数秒前にメッセージを交わした相手を思いながら常闇は布団に入った。
     二人の関係は何かと問われると非常に難しかった。
     
     先の大戦の爪痕はまだ大きく残っているが、日常生活は取り戻り始めていた。戦場の1つとなっていた雄英高校も多少の不便はあれど、徐々に授業も再開していた。まだ仮免許とはいえ、復興作業では学生も大事な戦力だ。大戦直後は、授業もなかったのでほぼ毎日復興作業に駆り出させれていたが、学校が再開した後は週末が中心となった。さらに一ヶ月が経つと、休みをしっかり取れとの指示の元、学生の支援は週に1回程度へとなった。それは予測よりも早い速度で復興計画が策定され、そして順調どころか前倒しで復興が進んだおかげであった。その先導指揮を取ったのは新しく就任した若きヒーロー公安委員長だった。大戦前、戦力の底上げとして学生の強化を進言したのも彼だったが、大戦後に学生をいち早く学生生活に戻す算段を整えたのも彼だった。かの人こそ、常闇が関係性の表現に悩む元№2ヒーローのホークスだ。
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    いと(ito_rin_mori)

    DONE20241115 ~20241117
    ホー常WEBオンリー「暁の鷹は月と添う4」展示作品
    開催中、足を運んで下さった皆様、ありがとうございました🐥

    両想い 年齢設定不明なのでお好きにどうぞ
    ふと過去の経験を🐥くんに聞くホ師
    不意に近づく息 床に座り、対面した状態でさわさわと両手で頭部を触られている。仮にも恋仲であるならば、その触れ合いに幾何かの熱や甘さがあっても良さそうだが、そういうものは伝わってこない。恋仲になるその前からも、頭を撫でられることはあった。元より幾分、手の主は他人に対して距離の近い性質があった。そこに多少なりとも周囲よりも後輩として気にかけられていたとは感じている。身長差が丁度良かったこともあるだろうが、その触れ合いは単に幼子への称賛対応に似ていた。少々悔しさはあったが、かと言って不快ではなかった。さて、要するに眼前の彼は常闇の感触が人の頭皮とは違うから気に入ったようだった。
     しかしながら、二人の関係が少しばかり変化した頃から、こうやってただひたすら感触を楽しむような触れ方をしてくるようになった。無機質とまではいかないが、これまでの褒美をくれるような特別な触れ方と違っており、少なからず戸惑った。恋仲の方がむしろ情熱的になりそうなものなのに、違っていたのだ。いつも唐突に始まり、わしわしと心地よい程度の乱暴さで触れられ、本人が満足したらなのか知らないが唐突に終わる。不思議ではあるが、嫌なわけではないので常闇は好きにさせている。しかし、熱がないとはいえ、恋仲の大きな手で触れられれば心臓は高鳴り、身体は緊張をする。そんな常闇の心境を知ってか知らずか、今日もまたホークスは両手で常闇の頭を撫でていた。頭部から後頭部へ移る手を、常闇は少し頭を下げて目を閉じて受け入れていた。両頬が包まれ、小指の先が首元に触れ、くすぐったさに首を竦めた。親指が嘴の根本をかすり、ぴたりと手が止まった。どうしたのたのかと目を開けば、ホークスがじっと嘴を見つめていた。
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    いと(ito_rin_mori)

    DONE20241115 ~20241117
    ホー常WEBオンリー「暁の鷹は月と添う4」展示作品
    開催中、足を運んでくださった皆さま、きありがとうございました🐥

    無自覚両片想い未満
    インターン中の二人の一コマ
    意味なんかないはずだけど ノックして部屋を開けて、ぴたりと固まった。部屋の主がスマホ片手に通話をしていた。どうぞという声はかけられていたので、電話中だとは気づかなかった。特段急ぎの用でもないので、会釈をしてドアを閉めようとしたが部屋の主であるホークスに手招きをされた。相槌を打ちながらも器用においでと口と手の仕草で伝えてくる。若干遠慮はあるが、引き留めたということは直ぐに終わる算段なのだろう。一瞬だけ迷ったが断わるのも失礼な気がして、なるべく音を立てないようにドアを閉め、窓際に立つ彼へ近づいた。
    「事前に調査とか必要なことがあれば、こっちでもしておきますよ」
     朗らかな応対だが、内容はきっとチームアップ要請だろう。ただでさえ忙しいのに、呼ばれた任務の事前準備まで買って出るとは感心を通り越して呆れも出てくる。元よりワーカホリックな上に、自分でこなした方が早いのは事実なのだろうが、単に自分で情報を収集をしないと満足しない性格でもあるのだろう。長いとは言い切れないが、それなりの時間を共に過ごした中で、常闇はホークスに対してそういう評価をしていた。
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    いと(ito_rin_mori)

    DOODLE20240211
    杏千バレンタイン2024
    キ学軸 🧹(中2?)⇒🍠(27)へのチョコレート
    せんくん無自覚。兄は…?
     色めき立つ女の子たちを尻目に、さっさと校舎を後にした。同じ学校の高等部の教師である兄上に会わないためだ。正確には、兄上に会わない、というよりは兄上が女子生徒からチョコレートをもらう場面に遭遇したくないからだ。毎年、あれだけ多くのチョコレートを紙袋に詰めて帰ってきていたのだ。生徒から大量にプレゼントされているのは、入学前から認識していた。生徒はイベントに参加したいだけだから教師は丁度いいんだ、と貰った本人は笑い飛ばしていたけれども、絶対にそんなことはなかった。確かに冷やかしや友チョコの延長のようなチョコが入っているのは、否定できなかった。しかし、中には明らかに手の込んだラッピングの手作りの品や高級ブランドの箱が含まれていたのだ。それらが「丁度いいから」なんて、適当な理由で他人に渡しやしないだろう。まぁそうなんだろうな、と思ってはいたが、実際のその現場を目にすると破壊力がある。そう、僕は去年、兄上が本命チョコをもらう場面に遭遇してしまったのだ。危うく声が出そうになったが、寸で止めた。そのまま立ち去ればよかったものを、思わず覗き込んでしまった。フルフルと震える細い手は見えた。表情は窺いきれず、声は聞こえない。聞こえずとも、出刃が目には違いないのだから、とっとと立ち去るべきだった。なのに、まるで地面に足が縫い付けられているかのように動けなくなってしまった。そもそも、兄弟の恋愛に触れるなって嫌なもんだ。ましてや、年が離れているから兄上の恋愛事情なんて知らない。でも、僕の胸のモヤモヤは、そういうものとは違うような気がした。
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