ぺちり。その感触に目を覚ます。ほおに小さな紅葉がへばりついてなかなか離れない。
「せーんせ。おきてう?」
「おはよう。わたしのかわいいお姫さま」
鼻先にキスをひとつ落とすと、きゃーっと嬉しそうな悲鳴をあげる。さらさらとした銀糸の髪、まんまるい金の瞳。紛れもない、かわいい天使さまだ。
「おはようございますっ」
「ああ。ポプルもおはよう」
「あ、ぽぷうー」
「もう。まねっこされるんだから、いい加減呼び方変えてくださいよ」
ぷくうっとふくれるポプルをまねっこして、かわいいお姫さまもぷくうっとほおをふくらませる。かわいい。
「母さんとでも言えばいいのか?」
「ママがいい!」
「んまあー」
元気よく挙手をするポプルと、万歳をするお姫さま。かわいい。
「そういう先生はなんて呼ばれたいんですか?」
「かあー?」
小首をかしげるポプルを見ながら、お姫さまもまた大げさに小首をかしげる。かわいい。
「ふむ。そうだな」
「だなあー!」
顎に手を当てて考える。するとお姫さまはなにが楽しいのか、嬉しそうにきゃっきゃと騒ぎ、わたしのほおをぺちぺちと叩く。かわいいが、そろそろやめてくれ。
「そろそろ、パパで頼むよ」
ふくふくとやわらかく、まあるい手を軽く握ると、愛娘は母親によく似た笑みを浮かべた。
「ぱあっ!」
グラヴィーさんとのやり取り
グラヴィー「おいで、わが孫娘。……じーじだよ」
「んじいー!」
ラルガス「リトルプリンセスは父上がお好みのようだ」
ポプル「ふふっ。パパとおんなじお顔だもんね」
ラルガス「一応、見分けはついてるようだぞ。わたしを見て、じーじと言ったことはないからな。誰に似たのか、賢い子だ」
ポプル「賢くなくて悪かったですね~!」
ラルガス「父上に臆すること無い豪胆さ。誰に似たのか、度胸があり、大物になれるぞ?」
「ぞうー!」
ポプル「もう。かわいいパパと、かわいいお姫さまなんだから!」
子どもができたら、ポプルは毎日のようにキスの雨降らせそう。ついでに旦那にもちゅっちゅして巻き込みそう。