猫吸いならぬ
ポプル吸いがブームなラルガスが疲れきった顔のとき、仕事に行く前にポプルを吸うようになる。背後から羽交い締めにして逃げられないよう腹に手を回して囲い、すぅうううっとポプルの後頭部から息を吸い込み、ふぅうううっと息を吐き出す。それを二、三回繰り返すと「よし」と言い、スッキリした面持ちで仕事に向かう。最初にやられたときは、あまりの出来事にポプルは固まり、吸われては赤くなってじたばたともがき、息を吐き出されては目を丸くして「うひゃあ」だの「きゃうん」だという可愛らしい悲鳴を上げぶるぶると震えていた。吸われる感覚はまだいいが、吐き出されるのはぞわぞわしてシッポもピンと逆立つらしい。
今では慣れたもので本を読みながら好きにさせている。ただしそれは抱きつかれるまでの話で、吸われると嫌そうに眉を寄せ唇を尖らせ顔をしかめる。吐き出されると目を丸くしてぞわぞわぞわっと全身鳥肌が立っている。それでも好きにさせているのは諦めか、ラルガスが好きだから、どちらもか。ラルガスもラルガスで、ポプルのことを自分の所有物かアニマルセラピーのようだと思っている。猫か犬かネズミかときかれると、ポプルは猫種の方ではないチンチラが近いらしい
猫吸いならぬポプル吸いの良さを知るためアルを吸うポプル。ふかふかのベッドを予想していたら硬い床の上に敷かれたカーペットだったと不満顔。アルの体は鋼のように硬く、毛は上等なのにもったいないと漏らす。柔らかい部分はないかときけばないと言われ、しつこくきけば「セクハラで訴えるぞ、主人に辱しめられたとな」とアルが言う。なんでよーと非難
ポプルはどこもかしこもプニプニで柔らかでうまそうだとアル。ぐうっと腹が鳴る。わ、わたしを食べても美味しくないよ~!と泣くポプル。獣の口が近づくと、ぎゅっと目をつむる。人型に戻ったアルにポンと頭を撫でられ、これ以上のセクハラはよせよと言って終わり。
腹が鳴る。満たされぬ、腹が減ったときゅうきゅう喚く。食うつもりはないが、別の意味で狙っていないとは一言も言っていない。
『わ、わたしを食べても美味しくないよ~!』
「さて、どうだろうな」
美味しいか美味しくないかは、食べてみないとわからないことだ。
妖しく濡れた瞳で、口元を片手で隠すようにして、アルは笑った。にやりと意地悪く、三日月のようにつり上がる口の端を、隠すように笑ったのだった。
先生がぽぷをキメる理由
「最初は猫吸いというものを知りポプルで試してみたら、思いの外ハマったというわけだ」
人権は?
「はっはっは。ポプルはわたしの弟子だぞ? わたしに逆らえると思うのか?」
暴君ですねー。腕の中の弟子が、かなりブーブー言っていますが……。
「嬉しくて言葉を忘れ、鳴いているのだろう。かわいいやつめ。コイツはそういうやつだ」
違う、と言うように腕バシバシ叩いてますが……。
「ポプルをキメると仕事がはかどるから仕方ないだろう? 諦めてくれ」
猫をキメてるひとのような発言で締めます