KoCたつひか「ねぇ荷造りは?」
「んー……」
「引っ越し来週だよ?」
「んー……」
「ほら、手伝うから」
ジトリと見上げてくる目は射るような鋭さなのに、人の太ももに顔を埋めたままなのがまぬけすぎてさっぱり怖くない。
進路が決まり卒業式も終え、来週にはこの寮から出ねばならないのにさっきから唸ってばかりで荷物をまとめる気はないようだ。
春からはアパートで一人暮らし、門限なんてないから夜中まで遊んだっていいし、お風呂もご飯もテレビだって好きな時間に好きなだけ。なんとも羨ましく明るい日々が待ち受けているのになぜこんなにも不貞腐れているのか。
渋々告げられた原因に「は?」と思わず大きい声が漏れてしまったため余計機嫌を損ねて今に至る。