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    bintatyan

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    いい夫婦の日に書いたプロポーズ?する滝安

    予約「指輪?」
    うん、と滝川は居心地悪そうに視線を彷徨わせた。
    「お前が職場にしてけるくらいの結構しっかりめのやつ。買いたいんだけど、嫌か」
    「もしそれがプロポーズなら、もうちょっと場所とか雰囲気とか言い方ってものがあると思うんだけどな」
    木のテーブルの上には、タコの和風カルパッチョと水晶鶏、ちくわとキュウリの和え物に酒が並べられている。
    個人経営の小さな居酒屋だ。店主の趣味で珍しい地酒が揃っており、またその妻の手がける料理がありふれたメニューのようでいて味付けの妙により絶品なので、酒飲みの滝川とほとんど下戸の安原はよくここに来る。うるさくもないが静かというほどでもない、酒とつまみの味を目当てに通う常連客が個々の会話の内容自体は聞き取れない程度の声量でおしゃべりを楽しむ空間は居心地のいいものではあるが、求婚に適しているとは言い難いだろう。
    「いや、プロポーズではなく。てか今んとこできないだろ結婚は」
    「一応、パートナーシップとか養子縁組という手はありますけどね。一度親子になっちゃったらもう結婚できないってのが現行法ですけど、同性婚の代替の手段として選んだ場合は例外として認めようって動きもあるし」
    「戸籍上だけでもお前が息子とかヤだよ俺。いよいよ麻衣にも父親扱いされてんのに。パートナーシップ条例は……まあ悪いとは言わんけど」
    苦笑する滝川に、安原も一応、形だけ笑ってみせる。
    「あれ、法的効力はないですもんね。与えられる権利も限定的だし。じゃあ、指輪って?虫除け?」
    「ウン、虫除け。お前最近更にモテるようになったろ」
    「まあモテますけど……今更ですか?」
    確かに学生時代よりも異性からのアプローチが増えた。同性もたまにはあるが、これは滝川と付き合い始めて以降稀に、という程度だった。人の好みは千差万別だが、基本的に細身の真面目そうな眼鏡くんというのはゲイ界隈では人気のあるタイプではないのだ。
    しかし、女性からは『よい夫、よい父親になりそうな人物』として見られることが明らかに増えている。
    「なにか不安にさせてます?」
    「んや、お前が自身がどうこうってんじゃないんだけど。これから先何年も、モテる一方になるだろーなーって」
    「それは、多分」
    就職して早数年。仕事にも慣れてきた。それは周囲の人々ももちろん同じだ。余裕なくただひたすら仕事を覚えることに邁進していた日々から少しずつ脱し、ようやく周囲に目を向けられるようになる頃なのかもしれない。特に、女性は子供を持つことを望むならあまり悠長にはしていられないのだ。
    「もしかしたらいけるかも、ってお前が思われんの自体がちょっと……いい気分しないんだよ」
    「へえ。僕はあなたがモテるのちょっといい気分だけど」
    「俺のはガチのやつじゃないからだろ?」
    「うーん、僕と比べたら、まあ」
    しかし最近調査に行った先でずいぶん積極的に言い寄られていた、と林から聞いている。なにか危ないところをとてもかっこよく救ったらしい。すげなくお断りしたことまで伝えられているので、わざわざほじくったりはしないけれど。
    「指輪していたら、ちょっといいなーと思って左手確認しただけでもうナシになるわけじゃん。その一瞬くらいならしょうがないと思えるし」
    「あなたって意外とヤキモチ妬きですよねえ。しかも年々酷くなってる」
    「やだ?」
    「んーん、面白いし良いですよ。指輪も」
    「いいの」
    ぱち、とまばたきをする。諾と返ってくるとは思っていなかったのだろうか?安原としては特に断る理由はないのだが。
    「あったほうが楽になるでしょうし。……ところであなたもつけてくれるわけですか?」
    「ん?俺としてはお前だけでもいいけど、どうしたい?」
    「一緒にいるのに僕だけ指輪してるなんて嫌ですよ。……2人でホテル入る時とか、知らない人からしたら不倫にしか見えないでしょ」
    隣のテーブルは空いているので他の客に聞かれることはないだろうが、さすがに声を潜めて言う。たしかに、と滝川は眉を寄せた。
    「そこまで見てるやつはいないと思うけど、ま、そーいう問題でもないわな」
    「そのとおり。僕らの気分の問題です」
    「んじゃ、前向きに検討ってことで」
    ふう、と安堵したように息をつく滝川を眺めながら、安原はちくわを口に入れる。滝川もお気に入りのつまみなので再現したいのだが、何度食べて何度挑戦しても同じ味にならない。マヨネーズとおかかと、おそらくほんの少しのわさび。そこにプラスして他になにか隠し味があるのだろうが、まだ突き止められてはいない。
    「なんか追加頼む?」
    「まだ食べたことないやつは?多分まだなにかあったでしょ」
    手書きのメニューを眺める滝川の節の目立つ長い指に、安原とお揃いの指輪があるのを想像する。――なかなかに愉快かもしれない。これまでペアリング等というものを欲したことはなかったのだが、悪くない提案だ。
    しかし。
    「ねえ。本当に結婚する時、今回買うやつをそのまま続投させるのかそれとも新しく買うのかは考えときましょうね、指輪」
    安原がニッコリ笑うと、滝川はしばらく絶句した後、
    「プロポーズには場所とか雰囲気とか言い方があるんじゃなかったのかよ」
    とそっぽを向いた。
    伸ばした髪の隙間から覗く耳の赤さが、たまらなく愛しかった。
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    Haruto9000

    DONE「クー・フーリンが女性だったら」妄想。
    ※FGO第1部のみの情報で書いていたので、設定ズレなどはご容赦ください。

    【あらすじ】
    影の国での修行を終え、アルスター国に戻ってきたクー・フーリン。
    ところが、国の内情は穏やかではなかった。上王が殺され、アイルランド中が混乱しているという。
    さらに、エメル姫が、タラ王と結婚する話が持ち上がったというのだ。
    ミラーリング #11(英雄の結婚編)再会
    「上王が死んだ……?」
     クー・フーリンは、呆然と幼なじみの言葉を繰り返した。ロイグはうなずく。
    「外遊中、ブリテンの賊に襲われたんだ。噂じゃ、身内の仕業って話もあるが……いずれにせよ、上王も側近たちも殺された」
    「そんな……」
    「次期上王は息子が継ぐことで落ち着くみたいだけど、いかんせんまだ子どもだからな」
     ロイグは大きなため息をついた。
    「おかげで、今アイルランドは大混乱さ。このアルスター国も、コノート国も、マンスター国もレンスター国も。どの王も、次期上王に忠信を捧げるって言ってるけど、みんな腹の底では何を思っているやら」
    「まさか、内乱……」
    「いや、そこまではまだ」
     ロイグは首を振ったが、その表情は曇っていた。クー・フーリンはおずおずと尋ねる。
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