本当に行き着く未来もう何人の命を奪っただろうか。
どれだけ硝煙の香りを、血の香りを、爆発の音を聞いただろうか。
「...ッハハ、だから、オレは、「死なない」って言ってんじゃん!!」
そう言いながらナイフを投擲し仕留める。
獲物から受けた傷もなくなっていく。
もうオレは「死なない」殺し屋として有名人だった。
それこそ「不死身」の殺し屋の噂を塗り替えるほどに。
そういうことがしたかったわけじゃない。
彼らを忘れたくなかっただけだった。
ただ、オレが彼らを殺した事実をこの身体に鮮明に刻み込みたかっただけなんだ。
...「死なない」殺し屋として囃し立てて擦り寄ってくる者もいるし、本当に死なないのか殺しにくる者もいる。
はっきり言って、反吐が出る。
彼らが、「不死身」の殺し屋の名が、穢されている気がして。
もう自分が何をしたいのかわからなくなってきた。
せっかくGFに力を貰っているのに、これでは申し訳がたたない。
きっと、もうオレは限界なんだ。
小高い丘で眠る彼らに最期の挨拶をする。
そしてそのまま、その足で家に帰る。
時刻は夕方。
GFは夕ご飯の準備をしていた。
「あっ、お帰りなさい、ダーリ...」
聡い彼女だ。全てを察したのだろう。
「...ごめん」
オレはGFの顔を見ることができず、俯く。
そんなオレに、ふわりと柔らかい香りと感触を感じる。
「謝らないで、ダーリン、あなたはよく頑張ったと思うの」
涙が溢れて止まらない。
こんな自分勝手なオレに、どうしてこんなに優しくできるんだろうか。
「泣かないで、大丈夫よ」
そうしてGFはオレに与えていた力を全て取り戻した。
「...後悔はないわね?」
「GFこそ、いいの?これからオレ、死ぬんだよ?」
GFはポカンとした顔をしたあとにケラケラと笑い、妖しく微笑む。
「うふふ、私を舐めないで頂戴。その気になればダーリンを現世に召喚することだって可能なのよ?」
その言葉が本当だと言わんばかりに片目が紅く光る。
「...ありがとう」
お礼なんていらないわと言わんばかりににこりと笑うGF。
恐怖はない。
片手に持つUGI。
こめかみに持っていく。
そして────────────
その男は花畑で立っていた。
そよそよと流れる風を感じながら、何を考えることもなく立っていた。
「...天気がいいな」
オレンジ髪の青年、Pico。
「こんなに穏やかなこと、現世でなかったものね」
横で寝っ転がって空を見上げる黒髪の女性、Nene。
「人の命のやりとりをしていたからな、当たり前だろ」
足を立ててリラックスして座る黒人の男性、Darnell。
3人ともBFに殺さて、今ここにいる。
ただただ、穏やかな日常を過ごしている。
そんな時。
「────────────!!!!!!!!」
遠くから叫び声が聞こえてきた。
「?」
3人とも声の方向に振り返る。
見慣れた赤い帽子、水色の髪色、あれは────
「「「BF!?!?」」」
流石に3人も驚きを隠せなかった。
「アァッ、みんなだ!みんなだ!Pico!Nene Darnell!会いたかった!会いたかった!会゛た゛か゛た゛!!!!!!会゛た゛か゛た゛!!!!!!」
BFは鼻水や涙そのままに3人に抱きつく。
「ちょっと!服が汚れるじゃない!」
「おま、近い!!近い近い!!」
「俺まで抱き付かれるのか??」
「う゛!!!!!!!」
BFは大声で泣き続ける。
3人は文句を言いつつも、BFを振り払おうとはしなかった。
────────────
「で、だ」
「お前、ここにいるってことは死んだんだよな?」
Picoの鋭い質問が飛ぶ。
「うん、銃で頭を撃ったよ」
それを聞いてPicoは頭を抱える。
「GFからは何も言われなかったのか?」
BFは反省どころかむしろ笑顔で答えた。
「その気になれば一般人のダーリンなら召喚できるし、この際3人をしばいてきちゃいなさい!って言われた」
それを聞いてNeneが身震いする。
「アタシ達、絶対GFだけは敵に回しちゃダメね...」
Darnellもそれに続く。
「それをいうなら芋づる方式にBFもだろ」
BFはまだ鼻水も涙も止まってない笑顔でいう。
「皆んな、また会えてよかった!」
それを聞いた3人も、どこかまんざらでもない様子だった。