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    2023年7月29日、拝君1周年おめでとうございます㊗️
    拝君浴びて狂ってそのまま書き出した去年のふわおり本から後半部分を公開します!!!
    ちっちゃいあきちゃんが大ちゃんに可愛いって言われたくてワンピースを着て出かけるお話です。

    前半部分「紅と白とで縁起がいいと」も既にポイピク公開済みです。
    どちらも今後非公開にする予定はございませんので、どうぞご留意ください🙇‍♂️

    言うはオレからでなくキミ その日、七歳のオレは朝から泣いて泣いて、家を出る直前までごねて、ようやっとあのワンピースを着せてもらった。女の子ならピンク、男の子なら青色が主流だった時代に、薄い菫色のワンピースは、例えみっつ離れた親戚の子から、おさがりという名の処分先として段ボールいっぱいに詰めて送られてきた中に、乱雑に丸めて放り込まれていたものだったとしても、オレの持っている他のどんなものより魅力的に見えた。
    この辺りじゃ、どの店に行ってもこんな服は売っていない。着やすさを重視したファスナーやゴム素材なんて無骨なものは、この洋服のどこにも組み込まれていない。背中のボタンを留めると、襟も胴回りも吸い付くようにぴったりと身に添って、腰の辺りからは綿らしい柔らかな曲線の襞とシルエット。着丈は丁度膝上にスカート部分の裾が乗る。靴は合皮の黒、ソックスは足首丈の白。完璧だ。今日のオレのために仕立てられたに違いないと思った。
    これを着た姿を、見せたい。今日会う彼に。かわいいって、言われたい。せっかく外出のために新調された上下を嫌がって、どうしてもコレじゃないと嫌、嫌、嫌、と言い、己の支度で忙しい親をすっかり辟易させた。

    いつものようにこんにちはと挨拶は済ませたが、俺はそれどころじゃなかった。確かにこいつは、誰もが漫然と持つ子供らしい可愛さとは別の、性別に関係なくアプローチできるような容姿と甘え方を持ち合わせている。魔性、というとなんだか手垢がついて大げさすぎる表現になるが、ほとんどそれに間違いないものを俺に、あとは時々必要な相手へ必要な分だけ見せることが常だった。だから正直、ワンピースを着て現れたときは、バカな織部の親がその可愛さに目がくらんで着せたのかもしれないと思った。しかし、親と不仲なのはこいつから聞かされていたし、当人はいつも前髪までしっかりと作りこんで来る人なのに、今日はさっとまとめただけのヘアスタイル。時間の迫る中こいつが泣きでもして、無理やり着せてもらったことを悟る。春生まれの俺よりまだ一歳年下の同級生の体は小さく、上品な薄紫の生地は白い肌によく似合っているのが、こと人物の美醜に疎い俺にもよくよく分かった。
    だからって、素直に、可愛いと言うのが相応しい回答なのか、その時の俺には分からなかった。伝えたいことを言葉に変換できない自分に腹が立ち、咄嗟に、そもそも、こんな格好をしてくるあいつが悪いと責任転嫁することで未熟な気持ちを隠してしまった。織部の家から今いる駅まで車で送迎されてきたとは言え、もしかしたら誰かの目に留まったかもしれない。普段なら気にもしないような他人の目線の存在が、その時急に重くのし掛かってきた。一度だってマトモに取り合ってこなかったそんなものを俺に突き付けたのはこいつなのだと思うと、余計に腹が立つ心地がした。

    今日は、市街地の方まで出ると聞いている。道中の予定に全く興味はなかったが、夕食は前に出掛けた際に食べ損なったオムライスの有名な洋食店にしよう、と聞いていたので、その為だけに出てきたようなものだったのに。親たちに連れられ電車に乗り込んだ俺た ちは、隣の席へお互いを促される。昨日までならこのまま自然と会話が始まるところを、今は話題が分からない。手に持っていたのは、後で見せてやろうと思って拾っていたセミの死骸。これに縋るしかない。
    「──みろ、これはクマゼミだ。このあたりだとめずらしい。」
    どうだいいや、駄目だった。こいつはセミの死骸ではなく、少し俯いたままスカートの縁に目をやって、縫い付けられた花柄のレース部分を指でなぞりながら、俺に、その話題を振る準備を進めていた。
    「へ、へぇ そうなんだ あの ねえ、今日のふく、どうかなふふ、いつもとちがうでしょ」
    絵本のお姫さまがやるように、裾をつまんで広げてみせる。スカートから目線を上げると、丸くて柔らかくて愛らしい顔いっぱいに沢山ほめて、と書いてあった。
    瞬間、この格好のこいつに、一点の汚れも許されないという思いが強くなり過ぎたせいで、コントロールを完全に失う。
    「ひらひらしてよごれそうだな」

    この件に関しては、第二成長期に差し掛かり、声変わりも済んだ今でも不都合なことが起こるたび話題にされるが、言いたいように言わせることにしている。
    あんなに泣いたあいつを見たのは後にも先にもこれきりで、もう二度と相手にするのはごめんだ。
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    ngmch_

    PAST😕拝君2周年おめでとうございます🧃
    ふわおりウェブオンリーの際に展示しておりましたSSを2本公開いたします👏
    不破さんの部屋で寝落ちてしまった織部相手に不破さんが年齢相応にやきもきするお話です。

    こちらのお話は既刊「複素数a+b i ただしb≠0」にも収録されております。
    非公開にする予定は今のところ未定です。ご留意ください🙇‍♀️2024年9月ファべプチに残部持っていきます
    今日、いちばんにあなたの声が / 昨日、夢のさいごから   今日、いちばんにあなたの声が


     今日は朝まで遊ぼうね、と言っていたのは俺でなくあいつの方だったのに、当の本人は先程、俺が攻略途中だったゲームの中ボス戦に手を拱いているうちに勝手に俺のベッドに潜り込んで寝てしまった。

    父は二日前から出張、母は夕飯の準備を済ませそのまま夜勤に出かけており、不規則なシフトでの勤務が多いふたりでも、両親揃って一晩留守にするのはかなりレアなケースで、その事を聞いた織部は、俺が言わんとしている事を勝手に悟った顔をして、へえ、と笑った後に、
    「じゃあファーさん、その日は朝まで遊ぼうね。」
    そう言って、もう一度笑った。


     夕方、駅前のスーパーであれこれ夜食になりそうなものを買い込んで、その足で俺の家までやって来た。両親に織部が訪れることは伝えていなかったが、とにかく頻繁に来るもので、その日も一人分よりかなり多めに米が炊かれていた。そして、コンロに置かれたままの鍋にはとにかく具沢山の味噌汁だか煮物だか分からないような汁物。放っておいたら野菜を食べない俺のために、肉も野菜もありったけ放り込んで作られる味噌汁は立派におかずとして扱える。今日のはさつまいもと蓮根と人参の根菜中心の具材に、豚肉と薄揚げまで入って少々油っぽい仕上がりだが、さっき炊き上がったばかりのご飯にかけると良さそうだ。さつまいもが入っている時は、仕上げに七味をかけて食うのが一番うまい。冷蔵庫を開けると、「夕飯に食べること」とメモの貼り付けられた銀色のボウル。きっと中は葉物野菜とトマトと市販のポテトサラダか何かを放り込んだサラダが入っている。何度も見ないフリをして別のものに手をつけ、その度に量が減っていないと気づいた母にボウルいっぱい食わされるのを繰り返している。コレは正直気に入らないので織部にも処理を手伝わせるとして、その奥に昨晩の揚げ物の残りがあったはずだから、もし俺だけならこれでとりあえず十分だが、今日はもう一人食い盛りがいる。追加で即席麺でも食えば、と思っていたが、織部は冷蔵庫を開けながら別の提案をする。
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    ngmch_

    MOURNING2023年7月29日、拝君1周年おめでとうございます㊗️
    拝君浴びて狂ってそのまま書き出した去年のふわおり本から後半部分を公開します!!!
    ちっちゃいあきちゃんが大ちゃんに可愛いって言われたくてワンピースを着て出かけるお話です。

    前半部分「紅と白とで縁起がいいと」も既にポイピク公開済みです。
    どちらも今後非公開にする予定はございませんので、どうぞご留意ください🙇‍♂️
    言うはオレからでなくキミ その日、七歳のオレは朝から泣いて泣いて、家を出る直前までごねて、ようやっとあのワンピースを着せてもらった。女の子ならピンク、男の子なら青色が主流だった時代に、薄い菫色のワンピースは、例えみっつ離れた親戚の子から、おさがりという名の処分先として段ボールいっぱいに詰めて送られてきた中に、乱雑に丸めて放り込まれていたものだったとしても、オレの持っている他のどんなものより魅力的に見えた。
    この辺りじゃ、どの店に行ってもこんな服は売っていない。着やすさを重視したファスナーやゴム素材なんて無骨なものは、この洋服のどこにも組み込まれていない。背中のボタンを留めると、襟も胴回りも吸い付くようにぴったりと身に添って、腰の辺りからは綿らしい柔らかな曲線の襞とシルエット。着丈は丁度膝上にスカート部分の裾が乗る。靴は合皮の黒、ソックスは足首丈の白。完璧だ。今日のオレのために仕立てられたに違いないと思った。
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