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    mado_mitsu

    @mado_mitsu

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    mado_mitsu

    MAIKINGアラビアンパロ大好き
    書きたいとこに辿り着くまえに力つきました
    びゅうびゅうと、冷たい空気が音を立てて通り過ぎていく。
    伸ばした手の先も見えないような暗闇の中、木々の合間を縫うように馬を走らせる。
    急がなくては。日が昇る前に目的の場所へたどり着かなくてはならない。
    馬上の少年、羽風薫の表情には焦りがにじんでいた。一刻も早く、幼い主人を
    安全な場所に連れて行かなければと──

    「アドニス君、もうちょっとでつくはずだから、しっかり捕まっていてね」
    薫の主人──乙狩アドニスはこわばった表情で頷き、薫の腹に回した手に
    力を入れ直した。微かに震える手と、背中から伝わる壊れそうなほどの
    心音に胸を痛める。
    家も、家族も……一夜にして全てを失い、
    命の危機にさらされているのだから無理もない。



    幸せな日々は一夜にして崩れ去ってしまった。
    逃げ惑う人々の声、家屋の倒壊する音、押し入った者たちの武器のこすれる音、
    燃え盛る炎の中、アドニスを自分に託した母の声が薫の脳裏にこだまする。
    『貴方はアドニスを連れて逃げて‼』
    『でもっ』
    『早く!!!』

    日頃は、穏やかな表情を浮かべる母の見たこともないような怒りの表情と
    叫ぶような声に母の覚悟を感じ
    転がるよ 2297