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    mado_mitsu

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    mado_mitsu

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    アラビアンパロ大好き
    書きたいとこに辿り着くまえに力つきました

    びゅうびゅうと、冷たい空気が音を立てて通り過ぎていく。
    伸ばした手の先も見えないような暗闇の中、木々の合間を縫うように馬を走らせる。
    急がなくては。日が昇る前に目的の場所へたどり着かなくてはならない。
    馬上の少年、羽風薫の表情には焦りがにじんでいた。一刻も早く、幼い主人を
    安全な場所に連れて行かなければと──

    「アドニス君、もうちょっとでつくはずだから、しっかり捕まっていてね」
    薫の主人──乙狩アドニスはこわばった表情で頷き、薫の腹に回した手に
    力を入れ直した。微かに震える手と、背中から伝わる壊れそうなほどの
    心音に胸を痛める。
    家も、家族も……一夜にして全てを失い、
    命の危機にさらされているのだから無理もない。



    幸せな日々は一夜にして崩れ去ってしまった。
    逃げ惑う人々の声、家屋の倒壊する音、押し入った者たちの武器のこすれる音、
    燃え盛る炎の中、アドニスを自分に託した母の声が薫の脳裏にこだまする。
    『貴方はアドニスを連れて逃げて‼』
    『でもっ』
    『早く!!!』

    日頃は、穏やかな表情を浮かべる母の見たこともないような怒りの表情と
    叫ぶような声に母の覚悟を感じ
    転がるように駆けだした。
    アドニスのもとへ駆けつけると
    ──この場所へ行けば助けてくれる
    指輪を見せて私の名前を伝えなさい──
    きっと力になってくれるはずだから……
    はっはっ

    もう少しで目的の場所に
    辿り着く──っ

    追いつかれる


    「……アドニス君場所は覚えてる?」
    「ああ」
    「俺が合図したら出来る限り早く走って、」
    「俺はここで追手を食い止める」
    「だがそれではカオルが、」
    「君が死んだら全部終わっちゃうの。……ひとりで行けるね?」
    こくり、心配そうな顔でアドニスが頷く。
    聡い子だ。薫がこれから何をしようとしているのか、気づいているのだろう。

    「ほら、そんな顔しないで?俺もすぐに追いかけるから」
    安心させるように、軽く頭を撫で手早く馬に括り付ける。




    いくよ はいっつ
    カオルは耳がいい。足音に耳を澄ます
    追手の数は5人、何とか持つか
    木の上に短剣を一つ投げ、牽制する。

    追手の視線を全て自分へと集めるために、
    「はーーい、怖いお兄さんたち、そこでストップ」
    「俺と一緒に遊ぼっか」
    これ以上先には行かせない。不敵な表情を浮かべた薫は


    暗転

    はっ、はーー

    ダンッ
    最後の一人にとどめを刺す
    血まみれでほとんど気力だけで持っているような状態


    ──行かなきゃ

    スッと目の前に人影が現れた。
    ──っ気配が全く
    起き上がりざまに目の前の人影から距離を取り、体勢を立て直す。
    凶手との戦いに意識が向いていたとはいえ、耳の良い薫にこれ程の距離まで
    気配を悟らせない相手へ本能的な恐怖を抱く。
    恐れの為か、はたまた血を流しすぎ為か、震える指先に意識を集中し
    剣の柄を握りなおす。ここで倒れてなるものかと、首筋を狙って剣を繰り出す。
    男は喉元に突き付けられた切っ先に目を見張るも、
    こちらへと微笑みかけてくる
    「おおう、落ち着いておくれ、我輩はおぬしの敵ではないよ」
    「そんなことっ」
    信じられるかと続けるよりも早く相手の手から放たれた剣が
    薫の頬を掠めていく。

    ドサッ

    振り向くと先程倒したはずの凶手が倒れていた。

    「あ…」
    目の前の相手に加え、背後から襲われかけていたことにも気づかないほど
    限界だったのか、と思っていた以上に消耗していた事実に気がつく。

    「カオル!!!!」

    男の背後に馬から降りる、アドニスの無事な姿を見て
    安堵したのか、かくり、と足の力が抜け男の腕の中へと
    倒れこむ。

    「おっと」
    「カオル!?」
    突然糸が切れたように倒れた薫に驚いたアドニスが
    慌てて駆け寄る。男は

    「気絶しておるだけじゃよ。おぬしを見て安心したんじゃろう」
    「しかし、出血もひどい、屋敷へ戻ってはやく治療をせねば」



    あの日から
    俺とアドニス君はサクマさんのお屋敷で暮らしている。
    アドニス君のお父さんから連絡があったようで
    アドニス君が成人して15歳になるまでここに身を隠すことになった。
    (アドニス君とこうがくんはけんのけいこをしている)
    で、そこで何してるのかな砂漠の吸血鬼さん

    おやばれておったか  いくら気配が無いって言ってもなれたらわかるよね~
    (アドニス君のお父さんは
    自分を失脚させ、屋敷を襲った相手を探っている
    国王を意のままに操るには自分が邪魔だったのだろうと言っていた)
    (サクマさんも自身の情報網から得た情報を流しているらしい)
    (俺もそれを)

    サクマさんは
    ……動きがあった?


    華やかな酒場の奥

    限られたものしか入れない個室

    旦那様方、今宵の楽しみに御伽噺はいかがですか?
    ミステリアスな微笑みを浮かべる美女と女将
    見惚れる客
    ほう

    酌をしながら

    うう、げろげろ~
    重要情報握ってなきゃこんなことしないんだから
    回想
    アドニス君を襲ったやつのしっぽを掴んだ⁈
    まだ証拠が不十分じゃが……今宵、○○の△△という店で、密会するということ
    は分かっておる

    現行犯逮捕……
    カオル君足止めを頼めるかえ?


    のう、今宵は美しい声で楽しませてくれるんだろう?
    おおせのままに旦那様
    憤り、奥底に押し込め、微笑みを浮かべる。

    たんっ

    なっ何者だ!

    クク、なのるほどのものではないのぅ
    とっ(男の首に手とうを入れ、窓に飛びのる)
    全く……遅いよ相棒
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    mado_mitsu

    MAIKINGアラビアンパロ大好き
    書きたいとこに辿り着くまえに力つきました
    びゅうびゅうと、冷たい空気が音を立てて通り過ぎていく。
    伸ばした手の先も見えないような暗闇の中、木々の合間を縫うように馬を走らせる。
    急がなくては。日が昇る前に目的の場所へたどり着かなくてはならない。
    馬上の少年、羽風薫の表情には焦りがにじんでいた。一刻も早く、幼い主人を
    安全な場所に連れて行かなければと──

    「アドニス君、もうちょっとでつくはずだから、しっかり捕まっていてね」
    薫の主人──乙狩アドニスはこわばった表情で頷き、薫の腹に回した手に
    力を入れ直した。微かに震える手と、背中から伝わる壊れそうなほどの
    心音に胸を痛める。
    家も、家族も……一夜にして全てを失い、
    命の危機にさらされているのだから無理もない。



    幸せな日々は一夜にして崩れ去ってしまった。
    逃げ惑う人々の声、家屋の倒壊する音、押し入った者たちの武器のこすれる音、
    燃え盛る炎の中、アドニスを自分に託した母の声が薫の脳裏にこだまする。
    『貴方はアドニスを連れて逃げて‼』
    『でもっ』
    『早く!!!』

    日頃は、穏やかな表情を浮かべる母の見たこともないような怒りの表情と
    叫ぶような声に母の覚悟を感じ
    転がるよ 2297