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    syadoyama

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    ありきたりな殺人鬼がポニーテールの美青年を襲う(夢オチな)話。ファンチェズかもしれない。

    否定形 喫茶店にとんでもない美人がいるのを見つけた。ヴィンウェイでは珍しい猛暑日、窓際の席はさほど冷房が効いていないだろうに、その青年はシャツを美しく、着崩すことなく身につけていた。けれど暑いのか、一つ疲れたような息を吐いて、ヘアゴムを取り出す。しなやかな、絹糸のようになめらかな、クセひとつない金髪を、ポニーテールにまとめる。首筋が光り、高い位置で括られた髪がしゃらりと揺れる。
     今日の獲物が決まった。背の高い男だが、細身だ。こっちはナイフもあるし、何より人を殴り慣れている。問題ないだろう。
     ぐらぐらと性欲が脳を沸かしていく。早くこいつをバックからぶち犯して、ポニーテールを引っ張ってやりたい。馬の手綱のように引っ張って、汗に濡れたその感触を楽しみたい。気絶してもお構い無しで、オレに絶対に逆らえないと絶望するまで犯して、オレよりスペックの高い人間を殺したい。
     オレは喫茶店で何を頼んだかも思い出せない。その男の斜め後ろの席で、ただじっとポニーテールを見つめ続けた。

     ポニーテールは最高だ。溌溂とした、優秀な、美しい人間にこそ似合う。学生時代はクラスのリーダーで、チアグループに所属していたような、そんな金髪の美女を殴り殺したい。この人生をオレが支配してやりたい。終わらせることなんて1回しかできないのを、オレが奪ってやりたい。
     興奮が止まらない。美青年は物憂げに、ろくに飲んでいない紅茶のカップを置く。チップの額も高い。優秀で美しい男。完璧だ。立ち上がった男を追いかけ、少し早足で先回りする。食料品店の裏、倉庫へ続く人気のない道で通りがかるのを待った。

     男の死角から両手で顔を抑える。悲鳴を挙げさせないように口を強く覆い、路地に引きずり込む。そのまま首を絞めながら倉庫へ運び、コーヒー豆の袋の上に転がした。
    「けほっ、えほっ……!」
     男はにらみあげてくる。ポニーテールを揺らして、強気な瞳で。それがいい。美しいもんは負けん気が強くないといけない。
    「何を……」
     オレはへらへらと笑い、ナイフをベルトから抜き取る。鞘から外すと、男が唇を噛んだ。
    「……なるほど。新聞に乗っていた、殺人鬼……」
    「知ってるとは嬉しいね。金髪殺しはオレだよ」
    「ターゲットは女性だけだと思ってましたよ」
    「まさか。金髪殺し、だぜ? 行方不明の少年だってオレのイケニエさ」
    「なるほど……」
     男は苦しそうにもう一度咳き込む。ポニーテールがオレを誘うように揺れている。
    「お前らが悪いんだよ、ポニーテールなんかしやがって」
    「……は?」
    「勝ち組のくせに、家畜みてえな髪型しやがって!」
     オレの手が汗をかく。ナイフの柄が滑る。オレはナイフを麻袋に突き立てると、男に覆いかぶさる。シャツのボタンに手をかけ、勢いよく引きちぎる。美しく白い肌と、チェリーみたいな赤い乳首。勝ち組だ。欠点一つ無い、美貌の男だ。オレが終わらせてやる。オレが終わらせてやる。

     嫌がる男を組み敷いて、首を絞めてやるとまた大人しくなった。その隙に全裸に剥いて、後ろから犯してやる。ポニーテールを引っ張ると喉がそって、苦しげな声が漏れる。苦痛と嫌悪といろいろで泣きじゃくる男を犯してやる。オレなんかに人生を終わらせられることを思い知らせてやる。やる。やる。何度出してもおさまらねえ。オレは男を殴って意識を戻させ、また犯す。なかなか死なない。長く楽しめて嬉しい。最高だな。
     男は、いつのまにか男じゃなくなっていた。ハイスクールで一緒だった女になっていた。ポニーテールの、クラスのリーダーの、チアグループの女になっていた。殺しそこねたあの女だった。殺してやりたいあの女だった。今度こそ殺してやる。最後まで殺してやる。何度だって殺してやる。人生を終わらせてやる。オレが。オレのものにしてやる。

    「と、いった感じだな」
    「中々の手腕だ」
     私は男に連れてこられた倉庫で待っていたファントムに頷いた。どうでもいい雑魚でその催眠術の手腕を試したいと言ったのが私である以上、多少身体を張るのは仕方ない。
     しかし悍ましかった。この殺人鬼のねっとりと張り付く視線。首筋とポニーテールをずっと眺めている男を誘って、ここまで連れてくるのは我慢が必要だった。銃殺しない我慢が。
    「連続殺人鬼がこの様か……」
    「どうだい?」
     男は、コーヒーがこぼれる麻袋を抱きしめて、殴りながら腰を揺らしている。何度も射精しているせいで酷い匂いだ。視線はまともでなく、私達の存在にも気づいていない。
    「……もう少し上品にはできませんか?」
    「ボスには刺激が強かったか」
     クス、と肩をすくめて笑うファントム。私は首を振り、慣れないポニーテールを解く。
    「下品だと言っているんです……それも、この男の本質なら仕方ないか」
    「ボス。この男を適当に警察に逮捕させて、その後口直しはどうだい? この近くにうまい珈琲の店があるんだが」
    「いいえ」
     私は顔を背け、路地を後にする。振り返ってファントムに笑った。
    「あなたの淹れた珈琲がいい」

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