CORRESPONDENCE 秋の話 秋は音も無くやってきた。
永遠に続くかと思われた酷暑は、ある日、薫くんがTシャツの上にカーディガンをふわりと羽織って楽屋へ来たことでやっと終わりを迎えたみたいだった。
ざっくりとした編み目の、ミルクティー色をしたカーディガンは、彼の穏やかで柔らかな雰囲気をますます培養させている。ありきたりな言葉で言えば、薫くんによく似合っていた。思わず目を見張るほどに。
「零くん? おはよ?」
怪訝そうな顔つきで俺を見つめながらひらひらと小さく手を振った薫くんが、とさりとソファに荷物を置く。少し前まで台本や仕事の資料でぱんぱんに膨れあがっていた彼の鞄も、忙しさの山を乗り越えて通常モードに戻りつつある今、普段使いのコンパクトな鞄に戻っていた。
3478