夏を背にまっさらな君を見て
黒く澱んだ僕の心は
君を僕色に上書きしたいと
強く叫んでいる
だから今日も僕は君に愛を囁くんだ
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「お兄さん、誰ですか?」
「…は」
花垣武道、皆んなから「たけみっち」と慕われている青年はキョトンとした顔で真一郎を病室のベッドから見上げた。熱中症で倒れたと言う報せを若狭から聞いたのは一時間ほど前のことだ。
急いで店を臨時休業にして病院に駆けつけた真一郎を倒れた当の本人は、いつものように美しいアクアマリンの瞳で見詰めた。しかしいつもと違う、と真一郎は何となく勘づいていた。「たけ…みち…?」と真一郎が武道に声をかけると
「お兄さん、誰ですか?」
そう返ってきたのである。どうやら倒れた時の打ちどころが悪かったらしく、眼を覚ましたら記憶喪失になったのだ。と武道の両親は言っていた。
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