六月の真夏日「いやぁ、暑かったわ」
外から戻ってきた瀬戸がネクタイを緩めながら額の汗を拭いた。
心臓外科の部屋は向こうなのだが、勝手知ったるなんとやらで循環器内科の部屋へ慣れた様子で入る。
空いている椅子を寄せてドカッと腰を下ろした。
「またそんな所に」
「休憩時間だろ、ちょっとぐらい休ませろよ」
汗で曇った眼鏡を拭きつつ、軽く唇を尖らせる。
そんな瀬戸の仕草に小さく溜め息をついて、これ以上話してもどうにもならないと諦めた。
堀田はカルテを診ていた手を止めて、先程自販機で買ってきたばかりの水を渡す。
「六月らしからぬ気温でしたから」
「背抜きのジャケットでもビチャビチャよ」
フタを開けて水をごくごくと半分ほど一気に飲み干して、美味そうに目を細める。
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