幼児の養育に必要なもの。その一、良質な食事。これに関しては何の不安もない。人里離れた住処ではあるが、少し降ったところに国道が通っており、新鮮なそれが確保できる。
肉片ひときれ。あーんと口を開けて待つは、隊服姿の男、獪岳。鬼化の影響で精神のみ幼児退行し、今に至る。その両手はせっせと集めたドングリを離さないので仕方なく給餌する。
「あむあむ……むー……」
「頑張って噛み切れ……その牙は飾りか……」
「……」
幼児に頑張るという概念はないらしい。頑張ったらできると知らないのだからそれはそう。虚無を見つめて噛むのをやめた。代わりに口の中からチュゥチュゥと音がする。吸うな。パサパサの肉が残ることになるぞ。
案の定しばらくして顔をくしゃくしゃに。今にも泣き出しそうである。
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