灯篭 急ぐ 夢 稀に夢を夢と認識できる時がある。
あまりにも現実離れして、奇々怪々で、あり得ない出来事をぶつけられると、冷静になって意識がはっきりするのかもしれない。
例えば、眠ったはずの場所とは全く違う見知らぬ景色の中に居たり、身に覚えのない恰好をしていたり、この世で最も大好きな兄に冷たい目で見下されたりだ。
意識の始まりは、耳に響いた鈴の音からだった。シャンと鳴り渡った高い音に、目を開ける。延々と続くかと思われる石畳の道と、沿うように立ち並ぶ石燈篭。空は真っ暗であるにも関わらず、無数にも思われる石燈篭の明かりのせいか昼間のように明るい。
ふと手元を見れば、白い着物の袖が目に入る。時折寝間着に使用している簡易な物とは全然違う。どこか神職を思わせる格式の高そうな格好だ。普段の自分ならあまり着ない、むしろ兄が常日頃身に纏っている物に近い印象を受ける。
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