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    鉄パイプ

    お絵描きしたり文字書きしたりしてますがどちらも才能ないのでひっそり載せては非公開にしてます。
    僕の自己満に付き合ってくださると何よりです。

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    鉄パイプ

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    壁ドンから始まるエスデュだっだもの。2年くらい前に描き始めて最後まで書きたいと思っていたのですが6章見たらオンボロ寮の内装が解釈不一致になってしまったので供養します。対戦ありがとうございました()

    事の始まりは寮の談話室で同級生たちの会話をしていた事だ。最初は今日の抜き打ちテストがあっただのご飯食べた後の飛行術は死ぬかと思っただのごく普通の会話をしていたのだが、何となく相槌を打っているうちに会話の内容はだんだんと好きなタイプや好きな子ができたなど俗に言う恋バナというものに変わっていった。
    お前は好きな子居たのかと途中からひたすら聞き手に回っていた僕に話題が振られたのでこの際そもそも恋とはなんだと周りに尋ねれば様々な回答が返ってくる。甘くてふわふわしたものだと言うもの、苦しくてにがいものだと言うもの。甘いのににがいとはどういう事だと更に尋ねたらお前に説明すんのは面倒臭いからこれでも読んで勉強しろと同じく会話に参加していたクラスメイトの一人から何冊か少女漫画を手渡された。
    今まで恋愛とは無縁の生活をしていた事もありそういった事には疎いという自覚はあったし、折角漫画まで貸してもらったのだからこれを機に恋愛について学べば僕も少しは賢くなれるかもしれない。思い立ったら行動あるのみ、漫画を貸してくれたクラスメイトには礼を言って早速読んでくると談話室を後にした。




    「うーん…どうして主人公はここで顔を赤くしてるんだ…?」

    あれから机に座ってひたすらに少女漫画を読んでいるのだが物語の展開について行く事が出来なかった。校舎裏で主人公の女の子が壁と相手の男に挟まれているシーン、校舎裏で迫られるという事はそれってカツアゲじゃないのか?もしかして怒って顔を赤くしてるのか…でも怒ってる顔には見えないし訳が分からない。

    「あれ?優等生クンってば勉強しないで何漫画読んでんのー…ってあっははは!お前そんなん読むんだ…ははっウケる…ひー腹痛てぇ」

    いつの間にか部屋に戻って来たらしいエースが僕の後ろから漫画を覗いたと思ったらゲラゲラと笑い出した。一番面倒臭い奴に見つかった気がする。

    「……読んでて悪いか」
    「誰も悪いなんて言ってねぇだろ、まぁちょーっと意外だったけどぉ?」

    ニヤニヤとした顔が非常にムカつく。睨むだけで殴らなかった僕を褒めて欲しいくらいだ。

    「で?どうしてそんなもん読んでるワケ?」
    「なんでお前に言う必要があるんだ」
    「んー面白そうだから?」
    「なら尚更言う必要は無いな」

    デュースくんのけちんぼーとぶーぶー言っているエースを無視して再び漫画と向き合う…が同じページを見返すばかりで一ページも先に進まない。何度読み返してもどうしたらこの男を主人公が好きになるのか分からない。コイツ主人公の事揶揄ってバカにしてるじゃないか。…そういえばエースはミドルスクールの頃彼女が居たとか言ってたか、ならばこういった恋愛事にも詳しいのだろうか…しかし無視した手前、聞きずらい。

    「何さっきから同じページ見返してんの」
    「…まだ居るのか」
    「居るも何もルームメイトなんですけどぉ…へー壁ドンが気になんの?」
    「かべどん…?」

    言葉の意味が分からずただ言葉を繰り返す。

    「その漫画のシーン、壁ドンじゃないの?」
    「カツアゲじゃないのか!?」
    「少女漫画でなんでそうなんの!?」

    どうやらカツアゲじゃなかったらしい。主人公が怒っていなかった理由にスッキリした僕とは対象的にエースはまじかよと言いながら頭を抱え出した。マジで何が悪いんだと言うんだ。しばらくそのまま固まっていたエースが顔を上げたと思ったら悪い事を考えた様な笑みをこちらに向けていた。

    「ねぇ、デュース」
    「……なんだ」
    「試してみない?」
    「何をだ」
    「壁ドン」
    「は…?」

    腕を引かれて椅子から立ち上げされられる。そしてそのまま壁の方へ連れていかれる。

    「そこ、立って」

    試すとは一言も言っていないし何故僕がされる側なんだとは思ったが実際に体験してみれば何か分かるかもしれない。そう思い大人しく壁を背にして言われた場所に立った。

    「ちょっとじっとしてて」
    「お、おう…ドンと来い」

    いつされてもいいように少し身構える。思わず一緒にぎゅっと目も瞑った。静かな部屋の中で服の擦れる音と近くで動く気配がするがしばらくしてエースはそこから動かなくなった。やるならひと思いにやってほしいというのにいつまで続けるのだろう、そう思ってゆっくりと目を開けた。その瞬間ドンッという音と鼻と鼻がくっつきそうなくらい近くにあるエースの顔。僕が目を開けると思っていなかったのか少し目を見開いている。
    まるで石にでもなったかのようにお互いそこから動けなくなった。普段からこいつは距離が近いがこんなに近いのは初めてでびっくりしたからか、とにかく心臓がバクバクとうるさい。

    「……いい加減離れろっ!」
    「ぐぇっ!」

    この状況に耐えられなくなって思わずエースの鳩尾を殴る。変な声を出して蹲るエースを横目に僕は部屋を飛び出した。




    「……で、ここに来たと」
    「うっ…」

    場所は変わってオンボロ寮の談話室。部屋から飛び出したはいいが行く宛ての無かった僕は監督生とグリムが住まうオンボロ寮へと駆け込み無理を言って泊めてもらう事になった。監督生には泊めてもいいが何があったか説明できる範囲で教えて欲しいと言われ今に至る。グリムも一緒に途中まで話を聞いてくれていたが、聞き飽きたのか既に夢の中だ。

    「聞いたのは自分だけど思ったより理由がくだらなかったなぁ…」
    「くだらなっ…!?」
    「だって恥ずかしくて逃げちゃったんでしょ?」
    「うぐっ…」

    図星だった。男女ならまだしも男同士ならなんとも思わないだろうと軽い気持ちで臨んだものの、こんなに恥ずかしいものだと思わなかった。

    「いやまぁ、調子乗ったエースもエースだけどね」

    お互い様なんじゃない?と言いながら監督生はデュースを饗す為にテーブルの上に置かれていたクッキーをひとつ食べた。

    「明日には仲直りしてよ?気まずいの自分なんだから」
    「…でもエースの顔見たらさっきの事思い出しちまいそうで…」
    「まんまとエースの策にハマってるじゃん…」
    「監督生、なんか言ったか?」
    「イイエ、ナニモ」

    とにかく今日は早めに寝よう。寝る前の歯磨きをする為にオンボロ寮に置いてある自分用の歯磨きセットを持って洗面所へ向かった所で1つ肝心な事を思い出した。

    「明日制服取りに戻らなきゃいけないのか…」

    ローズハート寮長に外泊すると伝えたが慌てて飛び出して来た為今の格好は寝巻きだ。外泊申請だって普段は事前に書類で提出する所を当日に口頭で伝えてしまった…明日首をはねられないといいな…

    「あっ、いたいたデュース」
    「ん?どうした監督生」
    「今トレイ先輩が来て制服と明日の持ち物一式届けてくれたから部屋に置いておいたよ」
    「えっ!?」
    「リドル先輩に頼まれて持ってきてくれたみたい。ちなみに首ははねられないが代わりに反省文が待ってるぞ、だってさ。二人とも心配してるみたいだよ」

    言外に先輩たちの為にも早く仲直りしなよと言われている気がする。
    監督生だけではなくローズハート寮長やクローバー先輩にまで迷惑かけちまった…明日は監督生や先輩たちに謝罪と礼を言わないといけないな。
    歯磨きを終えた後監督生と別れ、僕かエースがこうして転がり込んだ時用にと使われている部屋に入る。勝手を知ったるオンボロ寮、掃除されている部屋はもちろん床板が傷んでいる場所だって分かる。傷んでいる場所は避けながらベッドへと向かうがギシギシと床板もベッドも鳴ってうるさい。しかし静かすぎると先の件を思い出してしまう為今の僕には少しうるさいくらいが丁度いい。寝返りを打つ度鳴り響くベッドの軋み音を子守歌に僕は眠りへとついた。
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