第12回 菅受けワンドロワンライ、「宝物」朝の気配に自然と目が覚めた。隣からすうすうと寝息が聞こえて、菅原は寝転んだまま視線を隣に向けた。そこには、気持ちよさそうに眠る及川の姿があった。珍しいこともあるもんだ、と布団から腕を引き抜いて無造作に流れる及川の前髪をそっと撫ぜた。普段は菅原よりも及川のほうが早く起きるのだ。曰く「あんまりかっこ悪いとこ見られたくない〜」とのことで、だから菅原にとって及川の寝顔はまあまあ貴重である。普段はきっちりセットされた髪もぐしゃぐしゃ。睫毛長えなあと顔を眺めていると薄らだが髭も生えていることに気づく。菅原はいつも十分程度で身支度を終えるが、及川はその倍の二十分、ときに三十分に及ぶこともある。隙なんて感じさせない普段の姿を思うと、この気の抜け切った今の様子のなんと可愛らしいことか。自然の口の端が緩み、菅原はもう一度及川の前髪を撫ぜる。
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