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    『ムル・ハート博士逸事・逸話集』みたいなのが読みたいなあって……。
    元ネタは『木戸松菊公逸話』『実験論語処世談』

    ##mhyk

    20220120(前略)これは、私が未だ観測所*を退かぬ前の世界暦X年の春頃であったように記憶するが、ムル・ハート博士はある日突然青天の丘の麓の拙宅にお訪ねくだされた。取次の者が、「ハート博士がお見えになった」と申すので、「ハート博士ならば西の国のみならずこの中央の国、さらに先の東の国までも名の知られた学者で、王族の方々とも交流のある偉い方である。あのハート博士が私の家なぞへお訪ねになろうはずがない。きっと人が違うだろうからよく調べてみなさい」と取次の者に申付けたのであるが、「いややはり……あのハート博士である」とのことゆえ、何の御用でわざわざお越しくだされたものかと恐縮しながら座敷にご案内申して御用を伺いあげると、今日訪問したのは、互いに談話したいからで、別事ではない、と言われる。実のところ私は博士のごときが訪問されたのに、多少疑問を抱いていたくらいである。ところが、まず私の経歴を問われて、中央に遊学した状況を丁寧に尋ねられ、天文学や数学に関する考えも聞かれたのである。どんな程度に答えたか、記憶に存じていないが、博士はその数日後に、〔西の国の〕政府へ提出する建白書の案を立てて、再び拙宅を訪い、私にこれを起草せしめた。この建白書は、国家として天文学を奨励し天文台を建造する意義を謳い、その適当な用地として未開の入江を挙げたもので、私の与り知らぬところで新聞*に掲載され、「パティア・A氏は王立学院で学問をした天文学と数学の造詣頗る深く達文でもある学者である」なぞと博士に手による私の紹介文が付記されていたと聞く。

    *かつて中央国の青天の丘に存在した観測所。当時としては珍しく女性を雇用しており、パティア・Aは王立学院の卒業後、西の国を離れ、この観測所で研究職を得た。
    *西の社交サロンで発行されていた会報誌のことと思われる。当該の建白書は、ムル・ハート自身の手でサロンに持ち込まれ、世間に公にされた。
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    mavi

    DOODLEモクチェズ版ワンドロワンライ【キャラブックネタ】【野花】
    先週書き上げられなかった分(【ティータイム】)を合体させたのでワンドロではなくほぼツードロです
    20220508 晩酌がモクマの領分なら、ティータイムはチェズレイの領分。
     申し合わせたわけではないのだけれど、気がつけばそうなっていた。

     いちばん初めのきっかけはなんだっただろうか。
     たしか、チームBONDとしての、ミカグラ島での最後のミッションを終えて、同道の約束を交わして。その約束に差し込んだいくつかの条件、そのひとつ、「時々は晩酌を共に」が初めて実現した翌日のことだった。
     チェズレイは酒を嗜まないので、自然、酒やつまみはモクマが見繕うことになる。そもそも酒を飲んだ経験がほとんどないと言われれば、いっとう美味いものから紹介したいと思うのが人情というものだ。あれやこれやと集めるうちに、テーブルはちょっとしたホテルのミニバーもかくやという賑やかさになってしまった。部屋に通されたチェズレイはそれを見て、ちょっと驚いたように目を見張り、続けて、おやおや、とでも言いたげな揶揄いの目配せをモクマに寄越した。しかし結局何も言わず、自分はこのようなもてなしを受けて当然の人間だという風な、悠々とした動きでモクマの隣に座った。その晩、モクマの、アーロンには及ばずとも常人に比べればうんとよく見える目は、チェズレイの、度々卓上に向けられる目線も、その度に喜びが溢れるようにきゅっと持ち上がる口角も捉えていたけれど、先ほどの沈黙への礼として、それを指摘することはなかった。
    4008

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