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    拙作マリハラ事件内、初夜失敗事件をたけほのちゃん視点で

    ##それゆけ僕らの因習村

    猛き炎の嫁取り物語 失敗編 弁明させてほしい。私は決してその……教官と、あのひとと、ま、まぐわうのが嫌なわけではないのだ。初夜で泣いて嫌がった女が今更何をいうかと思われるかもしれない。私だってそう思う。

     そもそも婚姻だって私から言い出したことだ。里長にナルハタタヒメ討伐報酬の件を持ち出されたとき、これしかないと思った。差し出された「何でも良いぞ」の言葉に一も二もなく縋ったのだ。

    「里長、今なんでもっておっしゃいましたね?本当になんでも良いんですね?いや別に里長の地位とかいらないですから。報賞金……出来れば欲しいけど。それより私、ずっとずっと、欲しい人がいるんです」

     お酒の勢いって怖い。私は里長の襟首を掴んで一息に言い切った。今しかないと思ったのだ。

    「ウツシ教官を、私にください」
    「よくぞ言った、流石は猛き炎よ!!!」

     ………それからはあの騒動である。里長の鶴の一声で里守(しかも百竜夜行で前衛を張っていた精鋭だ)が集まり、何故かハモンさんやゴコク様まで付いてきて、トドメとばかりにコガラシさんや何故か教官のオトモたちまで。「これであの阿呆も年貢の納め時よ!!」気炎を上げる里長、ノリノリ過ぎて怖いんですけど?
     その勢いに押されたのか、もっと抵抗されるかと予想して現状精一杯の対人装備を組んで決戦に臨んだというのに、あの人はあっさりと私の手を取ってくれた。諦めたように、凛々しい眉をへにゃっと下げて、それでも笑ってくれたのだった。

     目論見通り。
     本当にどこまでも私に甘い、そして目上の人間に逆らえない、可哀想なひとなのだ。

     ちなみに私の方から申し込んだので私が夫、教官は妻である。その主張は里長の呵々大笑二つ返事で「貴様がちんたらしておるからだ」と受諾された。
     ここにミノトさんが居てくれたら前代未聞と突っ込んでくれただろうに、彼女が気付く頃には保証人欄にはゴコク様とハモンさんの名前が入り、里長の承認印までガッツリ押された立派な認可済み婚姻届の出来上がりである。里長のテンションは終始ぶっちぎりであった。気炎万丈。

     そんなこんなで初夜である。速攻である。格上モンスター相手には奇襲が基本なんである。宴は後回しで良い、とにかく既成事実を畳み掛けてこい決して逃がすなと二人して教官のおうちに放り込まれたのである。なんという至れり尽くせり。教官は珍しく声を荒らげて「クソジジイ共が何考えて!!!」「お節介にも程がある!!!」と一通り吠えたあと、頭をガリガリと掻きむしって、大きく息をつき、頭を上げたときにはいつもの教官に戻っていた。





     私はいつかくるこの日のために、事前に滅茶苦茶勉強した。スズカリさんにそれとなく話を聞いてみたり、ゼンチ先生に教えを請うたり、色巻物を漁って実用的な知識を集めたりもしたのだ。だって教官、多分経験ない…かどうかはわからないけど、経験値は低そうだし。今まで師弟としてともに過ごして、恋人が居たという話は聞いたこともない。男の人は女性と一晩過ごさないとどうにもならない事があるらしいが、ワーカホリックの教官にそんな暇ある訳がない。例えいい年して童の貞であったとしても、私は気にしないし、そんなことで教官の魅力はは損なわれない。なに、私が上手く導けば大丈夫。その為にうんと勉強したのだし、どうか教官は安心して身を任せて、天井の木目の数でも数えていて欲しい。

     ……そんなふうに思っていたのだ。あの時までは。

     だってビックリするじゃないか。供給過多だ。許容量を超えている。用法用量は正しく守って欲しい。
     教官の大きな手で、触れて、抱きしめて、口付け……あれ口付けだよね?なんか食べられたみたいになってたような……られて、初めて好きだと言ってもらえた。

     嬉しい。嬉しい。すきだよって。あいしてるって。あの人は私に嘘は言わない。例え無理矢理成された婚姻でも、あの人が今まで私に傾けてくれた愛情は疑うべくもない。
     それが、私の想いとはズレたものだとしても、言葉を貰えるだけでこんなに嬉しい。

     それだけで満たされて、必要十分だったのに。

     ……手の指の先から足の指の先まで、身体中にある無数の傷のひとつひとつを、あんなにいっぱい舐められるなんて聞いてない。揉めるほどの膨らみもない私の胸を、あんなふうに触るなんて聞いてない。腰を高く上げられて、あんな恥ずかしい格好するなんて聞いてない。いやそりゃ股を開かないと入らないよねそれは分かってる。勉強した。でもあんな体勢するなんて聞いてない。極めつけは声だ、あの声。密やかに耳元に吹き込まれる閨の声。常に元気いっぱいを体現するあのクソデカボイスがはどこ行った。壊れた蓄音機みたいに可愛い可愛いって、そんなの成人してからは片手で数えるほどしか言われてないのに。つられて私もいろいろ言ったような気がする。まともな言葉になっていたかどうかは自信がない。
     そういえばアレヨアレヨと言う間に布団に押し倒されたので灯りも落としていなかった。行灯の揺れるなか、私の、普段は脚の間に隠れている、自分でもなかなか見る機会のないそこを、教官はまじまじと見たのだ。あの、獲物を狙う雷光の瞳で。
     ……本気で食べられるかと思ったのだ。


     己の体の中でおそらく一番柔らかいであろう急所を、自ら捕食者に晒す恐怖。あれを乗り越えなければ男女の和合とは成せぬものなのか。……ある意味雷神龍より怖かったからね。マガイマガドもナルハタタヒメもそんなとこ狙わなかったからね。ハンターノートに人間の弱点部位の項目があれば間違いなく二重丸がつくであろう場所だ。男の人だってそうでしょう?

     おかしいの。あなたに食べられたいって、私が望んだ筈なのにね。

     泣き出した私を、教官はまたしても広い心で許してくれた。いやあなたそろそろ怒るべきでは?我儘もいい加減にしろと怒り狂うべきなのでは?ごめんね怖かったねって、なんであなたが謝るの?謝るべきは私でしょう。
     正攻法では自信がないからと周囲を巻き込んで、あなたに選択肢を与えなかった、私こそ。
     自己嫌悪と情けなさにぐずる私を、教官はそのまま抱きしめて眠ってくれた。
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