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    あら(@ara0505)

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    ギリギリのジキルから吸魂したらキャパオーバーくらいの生気流れ込んできてなんかヤバいみたいなジキミハの話

    三連休明けの月曜日。また今日も1週間が始まる。
    朝の支度を終えてそろそろ家を出ようかとスマホを確認すると一件のメッセージが届いていた。差出人はジキルから。
    「申し訳ないが朝一で、いつもの場所で頼む」
    何を、とは大体いつも言わないがボクたちのやりとりは大抵吸魂の必要性のメッセージだ。今日は朝から生気を吸ってほしいらしい。了解、と適当なスタンプを送って学校へ向かう。
    校内に入りいつもの体育館裏へ行くと、段差に腰掛けるジキルの姿があった。項垂れていて顔はよく見えない。
    「お待たせ」
    「ああ……すまない」
    隣に座って顔を覗き込むがなんだか顔色が悪い。悪いというか、息が上がって今にも暴れ出しそうなのを抑えている感じだ。三連休で発散できずに溜まった破壊衝動が爆発しそうなのだろうか。
    「うわー、ヤバそ〜」
    完全に他人事といった感じの感想が漏れてしまった。
    「うるさい……早く吸ってくれ」
    ジキルは腕をまくりこちらへ向けて待っている。さっさと済ませてくれと言うことだろう。
    「えー、どうしようかな〜。そんな偉そうな態度じゃなあ〜……」
    ボクはわざとらしく迷ったフリをする。焦らして反応を楽しみたいというイタズラ心が湧いてしまったのだ。
    「……っ」
    瞬間、ジキルの腕が伸びてきてボクの手を掴む。そのまま指を絡めてきた。
    強く握られた手から否応なしにジキルの生気が流れてくる。急に手を握られたのとジキルの顔が至近距離にあるのとで、心臓が大きく跳ねた気がした。
    「ちょ、ちょっと!いきなり何……」
    「いい加減にしろよ……」
    ジキルの目は完全に血走っている。その目は獲物を狙う肉食獣のそれだった。
    ジキルから目が逸らせない。まるで金縛りにあったように身体の自由がきかない。
    ドクンドクンと心臓の鼓動が速くなっていく。血液の流れが速くなり全身が熱い。頭がクラクラする。
    そして何より、下腹部の奥の方が疼くような変な感覚に襲われていた。
    (まずいなぁ)
    このままだと本当に襲われかねないと思いつつも、この場から逃げ出そうという思考回路には至らない。
    むしろもっと強い刺激を求めている自分がいた。
    「あっ……!?」
    もっと欲しい、と思ったせいだろうか、一瞬コントロールを失いジキルの生気がドッと一気に流れ込んできた。身体中が熱くなって、意識が飛びそうになる。視界がチカチカする。
    「……っ」
    声にならない声を上げて、ガクっと力が抜ける。倒れそうになったところをジキルに支えられた。
    「大丈夫か?」
    心配そうに声をかけられるが返事ができない。代わりにコクリとうなずく。
    しばらくするとようやく落ち着いてきた。
    「ふぅ……ごめんね」
    「いや、こっちこそすまん」
    「うん、でもちょっと危なかったかも」
    「何がだ」
    「なんか気持ちよくて変になりそうだった」
    冗談めかしてはいるが半分本音である。
    「…………」
    「あ、照れてる?可愛いところあるじゃん」
    「うるさい黙れ」
    少し茶化してみたけど効果は無かったようで怒られてしまった。しかし目を逸らすジキルは耳まで真っ赤にしていて思わずふふっと笑う。
    「ほら、ホームルーム始まるから教室行くぞ」
    ジキルは立ち上がりボクに手を差し伸べてくれる。
    ボクはその手を掴んで立ち上がる。今まで人から生気を吸うのを恐れて誰かに触れるのを避けていたが、ジキルになら触れても大丈夫だと思うと嬉しくなる。
    「ねえ、今度はもっと激しくしても平気だからさ」
    「バカ言うな」
    ジキルの顔はまだ赤いままだがいつもの調子に戻ってくれたようだ。良かった。
    「じゃあね」
    「ああ」
    いつものように別れの挨拶をして自分のクラスへと向かう。
    さっきまでの高揚感がまだ残っているのかまだドキドキしている。平静を装っていたがバレていないだろうか。
    ボクは吸魂から人の感情が少し伝わってくる。先ほどジキルから吸魂したとき、はじめは『この破壊衝動をどうにかして発散したい』という気持ちが流れてきていた。まあいつものことである。
    だが一気に大量のエネルギーが流れてきたときに、かすかに欲情のようなものを感じた気がした。
    すぐに意識が飛んでしまったから、もしかしたら気のせいかもしれない。だけどもしあれが気のせいでなければ……。
    「保健室で寝てようかな……」
    そんなことを考えながら教室へ戻るのだった。
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