魔法使いのジョーク　魔法使いに科学的な飛行の原理を教えると飛べなくなってしまうというのは有名な噂話ですが、どうしてそれが噂話なのか教えてあげます。
　ある所に科学者と魔法使いという恋人たちがいました。
　科学者は帰宅中に飛行装置の仕組みを閃いて、大急ぎで恋人の待つ家に帰って興奮のままに恋人にその飛行装置の原理を熱心に語りました。
　ひと通り話し終えた所で、ようやく科学者は例の噂話を思い出しました。もし自分のせいで恋人が空を飛べなくなってしまったらどうしよう？　不安に襲われ恋人の魔法使いに尋ねました。
「君は空を飛べなくなっていないかい？」
「どうして？」
「だって、空を飛ぶ原理の話をしちゃった」
　魔法使いは笑って言いました。
「そんな話だったんだ。あんまり熱心に喋る姿がかわいいものだから、全然聞いてなかった」
　魔法使いは気まぐれな性質で、興味の無い話に付き合ってあげるのは好いた相手くらいなものですし、人間は空を飛ぶ話をする時はいつも目を輝かせるので、魔法使いはいつもそれに見惚れて、結局話を聞いていないのでした。

おわり