「穴、開いてないんだね」
「…あ」
「ピアス、似合いそうなのに」
「ピアスかぁ…昔開けたことあんだけどさぁ」
すぐ塞がっちまうんだよなぁ、その言葉にあぁ、と納得した。
イモータル、普通の人間に比べて再生能力が優れている人種である彼は傷を負ってもすぐに再生してしまう。それなら確かにピアスなど着けていられないだろう。
「着けてほしぃの」
「……店で見かけて、貴方に似合いそうだと思ったらつい」
確認してから買えばいいのにと言われればなにも返す言葉が無い。丁寧に包んで貰った包装を解いて手渡す。掲げたり光に当ててみたりと暫く眺めた後に綺麗じゃん、と好評の声を貰えた。
「これ、あんたの眼の色」
よかったなんて思っていた束の間、自分でもわかっていなかった選んだ理由を突きつけられる。
え、と目を見開けば
「ほら、そっくり」
なんて横に並べられてしまう。自身の眼と同じ色の石が使われたピアスを彼に贈りたいと思っていたそれも無意識に。そもそも何でもない日に贈り物なんて今までした事もない。どうやら思った以上に彼に執着しているらしい。今ようやく理解したこの感情に困惑が止まらない。赤くなったり青くなったり、きっと面白い表情をしていたのだろう、レナトスが目の前で機嫌を良くして口角を上げている。それすらもまっすぐ見ることができずにいた。
「すぐ塞がっちまうからずっとはつけていられねぇけど、それでも良ければつけてやるよ」
ご機嫌にそう言ったと思えばおもむろにピアスを耳朶にあてる。冷やしたり消毒したりなんてこともせずにただ力任せに穴を開ける。以前、再生できるとはいえ痛みは感じると聞いたことがあった。いくら再生するとはいえもっと身体を大事にしてほしい、なんて思う間もなく針は耳朶を貫いていく。痛みに耐えるように一瞬眉をひそめながら、紅は赤で濡れていった。
「……っ、…あー、できたぞ」
ほら、と見せてくれたそこに紅が存在を主張している。あぁ、ちゃんと似合う、理由こそ今知ったものの、己の選択は間違っていなかった。もっとよく見たいと手をのばし赤を拭ったそこは既に再生し始めているようで今度は違和感に眉をひそめている。もういいか、と聞かれたのでしっかりと目に焼き付けた後、ありがとうございましたと手を離す。おー、なんて気だるげに返事をしながら針を抜いていく。再び赤が滲むがそれもすぐに塞がってしまった。